たぱぞうの米国株投資

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【INFL】インフレの恩恵を受ける銘柄で構成したアクティブETF

【INFL】インフレの恩恵を受ける銘柄で構成したアクティブETF

 2021年秋以降インフレが金融マーケットの将来を左右しそうな言葉になっています。

 確かに米国10年債の金利は2021年秋以降、じわじわ上昇してきました。

米国10年債金利

米国10年債金利

出典:Trading View

 このような状況を想定していたのでしょうか。2021年初頭に設定された、インフレで恩恵を受ける銘柄群で構成されたETFがあります。“Inflation Beneficiaries ETF”、ティッカー【INFL】です。


 米国Horizon Kinetics社が運用しています。Horizon Kinetics社はニューヨークに本社を置く、1994年に設立された運用会社です。

 

 【INFL】は2021年1月11日に設定されました。ベースとなるインデックスが無い、いわゆるアクティブETFです。マーケットはNYSE arcaです。

 

インフレの恩恵を受ける産業を不動産、農業、エネルギー、貴金属などと、あらかじめ定義し、直接、間接的な恩恵を受ける企業をセレクトしています。

ポートフォリオの設計思想

ポートフォリオの設計思想

INFLの経費率、構成銘柄数など

 20~60銘柄を選択するためのプロセスが発生しているため、経費率は0.85%とやや高めです。

 直近の純資産は日本円で約1,000億円といったところですので、現時点ではそれほど規模が大きいETFではありません。

INFLのスペック

INFLのスペック

INFLとS&P500の比較チャート

 設定されてから約1年ですので、過去1年のチャートをS&P500と比較してみました。
赤が【INFL】です。

 

 おおむね好調に推移しているようで、現時点では銘柄選択の結果はそれなりにあったように思えます。

INFLとS&P500の比較チャート

INFLとS&P500の比較チャート

出典:US版 Yahoo Finance

INFLの構成銘柄

 【INFL】は世界各国の株式を投資対象としています。上位10銘柄は以下のとおりです。

INFLの構成上位銘柄

INFLの構成上位銘柄

見慣れない名前が多いと感じますので、少し触れておきます。

【CRL】 チャールズ・リバー・ラボラトリーズ・インターナショナル

 米国マサチューセッツ州に本社を置く新薬創出支援企業です。NYSEに上場しています

【PSK CN】プレーリースカイ・ロイヤルティ

カナダのエネルギー関連会社です。トロント証券取引所に上場しています。

【ASX AU】 オーストラリア証券取引所

 その名の通りです。日本でいえばJPXのようなものです。オーストラリア証券取引所に上場しています。

【VNOM】バイパー・エナジー・パートナーズ

 米国テキサス州に本社を置く石油・天然ガス会社です。NASDAQに上場しています。

【DB1 GR】ドイツ証券取引所

 その名のとおりです。【ASX AU】と同様です。DAXの算出を行っていることでも知られています。ドイツ証券取引所のXetra(クセトラ)に上場しています。

【ICE】インターコンチネンタル・エクスチェンジ

 米国の証券取引所です。当ブログでも【ICE】をご紹介しています。NYSEに上場しているS&P500採用企業です。

【ADM】アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド

 米国イリノイ州に本社を置く農業関連企業です。NYSEに上場しているS&P500採用企業です。

【FNV】フランコ・ネバダ

 カナダ トロントに本社を置く資源採掘権取得および投資会社です。米国、カナダ、メキシコ、南アフリカで主に事業を展開しています。NYSEに上場しています。

【TPL】テキサス・パシフィック・ランド・トラスト

 米国テキサス州に本社を置くエネルギー企業です。利益は、主に土地の販売、石油とガス使用料、地役権、放牧や数々のリース、受取手形の利息、および投資の利子から派生しています。NYSEに上場しています。

【WFG】ウエスト・フレイザー・ティンバー

 カナダ バンクーバーに本社をおく製材会社です。カナダ西部および米国南部に製材所を保有し、トウヒ、マツ、モミやイエローパインの林業、木材製品の生産・製造を行っています。NYSEに上場しています。

 

 エネルギー関連と証券取引所が目立つ構成です。下位には、シンガポール証券取引所、ユーロネクスト、JPXといった証券取引所銘柄もありました。

【INFL】をどのように活用し、投資に生かすか

 非常に個性的で面白いETFだと思いますが、残念ながら【INFL】は日本のオンライン証券大手3社で取引できません。

 

 構成銘柄はすべて公開されています。【INFL】は「インフレで恩恵を受ける」とプロの投資家が考えている銘柄群ですので、個別株投資のヒントにはなるかもしれませんね。

 

 たまにはポピュラーなインデックスだけでなく、このような個性があるETFの属性を知ることも面白いですね。

 

関連記事です。

世界の鉄鋼生産ランキングです。

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こちらはESGをテーマとしています。

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メタバースをテーマとしたETFです。

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【MOAT】ワイドモートな企業を投資対象としたETFのシンプル分析

ワイドモートな企業を投資対象としたETF 【MOAT】

 “wide moat“は米国株投資でよく耳にする言葉です。

Wide=幅が広い
Moat=堀

 ですから、株式投資の世界では“wide moat“を「経済的優位性」や「経済的な堀」という日本語で表現することが多いですね。

 

 具体的な「経済的優位性」株は次のような特徴を持つ企業の株式だと考えられているようです。

  1. 無形資産
  2. 顧客のスイッチングコスト
  3. ネットワーク効果
  4. コストの優位性

 この4つにより、素晴らしい製品やサービスで大きなマーケットシェアを獲得している、あるいは無駄のない業務プロセスがある、あるいは優れた経営者がいる企業を指すようです。


 客観的に言えば、投資家にとってはポジティブにとらえられる企業と言えるでしょう。このような米国企業を投資対象としているETFがあります。


 ティッカー【MOAT】です。

 

 米国のVanEck社が運用しており、正式名称を” VanEck Morningstar Wide Moat ETF”といいます。マーケットはNYSEです。

 

 【MOAT】の原指数はMorningstar® Wide Moat Focus Indexです。指数は2007年2月14日から算出を開始されており、2002年9月30日まで遡及されています。2021年12月31日現在、46銘柄で構成されています。

Morningstar Wide Moat Focus Index

Morningstar Wide Moat Focus Index

【MOAT】は2012年4月24日に設定されていますので、まもなく運用開始から10年を迎えます。時系列を考慮すると、原指数は【MOAT】のために作られたわけではなさそうですね。


経費率は0.47%です。

【MOAT】とS&P500の比較チャートと分配金

 S&P500と比較した5年チャートです。

【MOAT】の方がおおむねS&P500を上回って推移しています。

MOATとS&P500の比較チャート

MOATとS&P500の比較チャート

 直近の分配利回りは1%強程度です。分配金利回りを期待して買うETFではないですね。

MOATの分配金推移

MOATの分配金推移

出典:VanEck社

MOATの構成銘柄と割合

 【MOAT】のウエイト上位10銘柄です。

MOATの主な構成銘柄

MOATの主な構成銘柄

出典:VanEck社

 S&P500であれば、アップル【AAPL】、アルファベット【GOOG】、アマゾン【AMZN】、マイクロソフト【MSFT】、メタ【FB】あたりが名を連ねますが、【MOAT】はだいぶ様相が違います。


 いわゆる情報技術系企業が目立ちません。経済的優位性を獲得している企業は同一セクター内にはたくさん存在しないでしょうから、必然的に銘柄のバラエティには富むのでしょう。

 

 また、特別ウエイトが高い銘柄もないのが特徴です。

 構成銘柄にいくつか触れてみましょう。

 シェニエール・エナジー【LNG】は液化天然ガス(LNG)関連事業に注力するエネルギー関連企業です。LNG受入基地およびパイプラインを保有・運営しています。

 

 コンステレーション・ブランズ【STZ】はアルコール飲料メーカーです。事業は2部門で構成され、コンステレーション・ワイン北米部門は「ロバート・モンダヴィ」、「アーバー・ミスト」などのブランド名で食卓用ワインやスパークリングワインを販売しています。

 

 クラウン・インポーツ事業は「コロナ」や「モデロ」などのメキシコビールの米国での輸入、販売権を持っています。 ブランドを見ると、知っている方も多いのではないでしょうか。

 

 コルテバ【CTVA】は農業関連企業です。主に雑草や、害虫・病気を防ぎ将来的に農地を守るための農薬や、従来の技術と新しい形質技術によって開発されたトウモロコシ、大豆、小麦などの種子を提供しています。

 

 アスペン・テクノロジー【AZPN】はソフトウェア会社です。設計、運用パフォーマンス、サプライチェーン計画などのプロセス最適化ソフトウェアを手掛けています。
代表的な製品は新規・既存工場の設計・再設計用ソフトウェアaspenONE Engineering、製造プロセス向けソフトウェアaspenONE Manufacturing and Supply Chainです。

【MOAT】ETFの活用方法

 「経済的な堀」を有する企業は、それぞれの企業が存在している製品やサービス市場で高いシェアを有しているケースが多く、マーケットの低迷期であっても業績が底堅い企業だと考えられます。

 

 よって、個別株投資の際に「マーケットが弱い時に相対的に強い銘柄は何だろう?」というニーズに【MOAT】の構成銘柄は答えの候補になりそうです。

 

 いわゆるハイテクグロースがなくても、S&P500をアウトパフォームしていることは注目に値するでしょう。よく、S&P495は大したことが無い、と言われます。一方でMOATの構成銘柄もS&P500との重複は多いです。

 

 抽出すべき銘柄がしっかりしていれば、GAFAM以外もなかなか健闘していることが分かりますね。要は、時価総額加重平均というのはそういうことであり、当然というわけです。


 セクターを問わず、マーケットが弱い時にいい仕事をしてくれる銘柄群を持っておきたいという場合に都合がいいように思います。

 

このETFは楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。

 

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こちらも対S&P500で負けていない、ESG銘柄ETFです。

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事業承継をふくめたFIRE術です。

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流行りのメタバースに注目したETFです。

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【KRMA】ウェル・マネージド・カンパニー、ESG関連ETFとは

ウェル・マネージド・カンパニー”へ投資するETF【KRMA】

 ティッカー【KRMA】は米国Global X社が運用するETFです。正式名称を”Global X Conscious Company ETF”、日本語では「グローバルX ESG経営企業 ETF」といいます。

グローバルX ESG経営企業 ETF

グローバルX ESG経営企業 ETF

 5つの利害関係者(顧客、サプライヤー、株式・債券保有者、地域社会、従業員)に対し良好な成果を上げていることが1つの条件です。

 

 その上で、持続可能で責任のあるやり方で財務パフォーマンス及び良好なESG特性を示すような企業を”ウェル・マネージド・カンパニー”と呼びます。

 

 KRMAは、その企業で構成される” Concinnity Conscious Companies Index”に連動した運用をしています。つまりいわゆるESG関連ETFです。

 

 ” Concinnity Conscious Companies Index”はConcinnity Advisors, LPが構築した戦略で採用銘柄候補を選びます。

 

 さらに、定量的には時価総額が20億ドル、30営業日の平均売買代金が4億ドルという数量的基準をクリアした銘柄で構成されます。


 また10月に銘柄入れ替えを行い、1,4,7月にリバランスされます。リバランス時に時価総額15億ドル未満、30営業日の平均売買代金が3億ドル未満の銘柄は除外されます。

 

 2016年7月11日に設定されました。マーケットはNASDAQで、経費率は0.43%です。

KRMAのチャート

 S&P500、既に当ブログで紹介済のESG関連ETFである【SUSA】と比較してみました。
コロナショック前は【KRMA】の方が高パフォーマンスでしたが、コロナショック後は【SUSA】がよりアウトパフォームしています。【SUSA】はエヌビディアとテスラのウエイトが高いですから、この2銘柄の恩恵を受けていそうです。

KRMAの取引値チャート

KRMAの取引値チャート

KRMAの分配金

 年に2回分配しています。直近の分配利回りは約1%です。分配にフォーカスしたETFではないですから、特に違和感はありません。

 

KRMAの分配カレンダー

KRMAの分配カレンダー

KRMAのセクター構成

 情報技術、ヘルスケア、一般消費財で約56%を占めています。S&P500と比較するとヘルスケアのウエイトがやや高いです。

KRMAのセクター構成

KRMAのセクター構成

KRMAの組み入れ銘柄

 181銘柄で構成されています。上位10位は以下の通りです。上位5銘柄は見慣れたものが占めていますが、6位以下は耳慣れないものもあるように思いますので少しふれておきます。

 

KRMAの組み入れ上位10銘柄

【ON】 オン・セミコンダクター

 その名の通り米国アリゾナ州に本社がある半導体メーカーです。
自動車、通信、コンピューティング、民生、産業、LED照明、医療、軍事、航空宇宙、電動アプリケーションなど広範な分野に製品を提供しています。
北米、欧州、アジア太平洋地域の主要市場で事業を展開しています。

【ANET】アリスタ・ネットワークス

 米国カリフォルニア州に本社があるネットワーク機器メーカーです。

 

 全世界の約50カ国にて、クラウドサービスプロバイダーや大規模インターネット企業向けにイーサネットスイッチや、クラウドネットワークプラットフォーム、エクステンシブル・オペレーティング・システム(EOS)およびネットワークアプリケーションを提供しています。

【VRTX】バーテックス・ファーマシューティカルズ

 米国コネチカット州に本社があるバイオ医薬品企業です。主要医薬品にはC型肝炎ウイルス治療薬「INCIVEK」と、嚢胞性線維症治療薬「KALYDECO」の2種類があります。
自己免疫疾患やインフルエンザ治療用の医薬品の開発にも従事しています。S&P500採用企業です。

 

 【ON】と【ANET】はS&P500に採用されていませんが、このETFにおけるウエイトは高いです。広いユニバースを用い、かなり独自のリサーチにもとづいてインデックスを作っている印象を受けます。

ESG関連ETFとしてより魅力的なのはKRMAか、SUSAか

 ESG関連ETFとして【SUSA】iShares MSCI USA ESG Select ETF をすでにご紹介しています。こちらの方が経費率も低いですし、純資産も多いです。より無難なものを望むなら【SUSA】でしょう。

 

 一方【KRMA】は【SUSA】と比較すると原指数の構成銘柄がややとがっている印象を受けます。IT系ハイテクのウエイトが小さい方がいいならば【KRMA】の方がむいているように思います。

 

 KRMAはSBI証券楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。

 

関連記事です。

【SUSA】は米国株のESG銘柄ETFです。

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資産運用の効率化に海外投資は避けられません。

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永続的な発展か、一過性のトレンドか、その見極めも大事ですね。

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【SUSA】は米国株のESG銘柄ETF。シンプル銘柄分析。

米国株のESG銘柄 ETF 【SUSA】のシンプル分析と基本情報

 環境、社会、コーポレート・ガバナンスを意味するESGが投資の世界で存在感を大きくしつつあることを当ブログでもすでにご紹介しています。

 

 流行りものにも見えますが、当ブログでもご紹介した通りESGはすでに少なくとも15年程度の歴史があります。近年はESGを謳う金融商品が増えてきました。

 

 その一つであるティッカー【SUSA】は正式名称をiShares MSCI USA ESG Select ETFといい、ブラックロックが運用しています。

 

 原指数はMSCI USA Extended ESG Select Indexです。


 このインデックスのユニバースは米国の大型、中型株で構成されるMSCI USA Indexで、ESGの観点でたばこと銃関連企業は除外されて組成されます。

 

 インデックス構成銘柄は四半期に一度見直されます。インデックスの累積リターンは、2019年以降MSCI USAを少しアウトパフォームしています。近年ESGに着目する投資家が増えてきている結果が反映されているでしょうか。

MSCI USA Extended ESG Select Indexのチャート

MSCI USA Extended ESG Select Indexのチャート

 【SUSA】は2005年1月24日に設定されました。ESGの原則ともいわれるPRI(Principles for Responsible Investment)が国連で唱えられたのが2005年ですから、時期を同じくしており、歴史あるESG ETFだといえます。


 経費率は0.25%で、マーケットはNYSEです。

SUSAとS&P500の比較チャート

 5年チャートをS&P500と比較してみました。赤が【SUSA】、水色がS&P500です。
コロナショック以降のパフォーマンスはS&P500より良好です。

SUSAとS&P500の比較チャート

SUSAとS&P500の比較チャート

SUSAの構成銘柄を見てみる

 S&P500より良好なパフォーマンスを出しているのは、組み入れ銘柄に理由がありそうです。182銘柄で運用されているETFですが、エヌビディアやテスラといったコロナショック以降に非常に高パフォーマンス銘柄のウエイトが高いですね。

SUSAの構成銘柄

SUSAの構成銘柄

出典: ブラックロック website


 見慣れない銘柄としては8位の【JCI】と9位の【MMC】でしょうか。

 【JCI】は“ジョンソン・コントロールズ”で、主に商業ビル・工業施設を対象に冷暖房空調設備、ビル管理システム、セキュリティーシステムの設計、製造、販売、設置を行っている企業です。


 【MMC】は”マーシュ・アンド・マクレナン”で、米国の保険関連を扱う持株会社です。どちらもS&P500採用企業です。


 ブラックロックが運用するETFにブラックロックのウエイトが高くなっていますが、インデックスはMSCIが組成していますので、利益相反というわけでもないでしょう。

 

【SUSA】の分配金履歴

 【SUSA】の分配金履歴です。直近の分配利回りは年換算で約1%です。高分配を追及しているETFではありませんので、こんなものでしょうか。

SUSAの分配金履歴

SUSAの分配金履歴

出典: ブラックロック website

【SUSA】の活用方法は・・・?

 このETFとの付き合い方を2つ想定してみました。

 

 一つは、ESG投資を米国株でやりたいけれど、銘柄選択はお任せしたいと考えている場合です。もう一つはESG投資を個別銘柄でやりたいと考えている場合です。

 

 ESGは非財務情報ですから、文字情報が判断材料となります。仮にS&P500をユニバースにしたとしてもその文字情報は膨大ですので、ESGという観点で銘柄選別をするためには手間と英語力を必要とします。


 その点、インデックスプロバイダーが一定の基準でESGを選別してくれているETFは個人投資家には手間を省くという意味で都合がいいと考えます。

 

 また、ETF構成銘柄はブラックロックのウェブサイトですべて公開されていますから、個別株でESG投資をしたい場合は、その構成銘柄はそれなりのふるいにかけられた状態ですので、選別のスタートがやりやすくなると考えます。

 

【SUSA】はSBI証券楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。国内ネット証券での取り扱いがあるのはうれしいですね。また、パフォーマンスは決して悪くないので、サテライトとして検討するのも悪くないでしょうね。

 

関連記事です。

私はインカム部分はハードアセットに委ねるところが大きいですね。株式のキャピタルは爆発的で、このバランスは今のところ心地よいものです。

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金融商品の多様性も米国市場の魅力の一つと言ってよいですね。

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法人化とFIREは相性が良く、より安定的に生活を整えることができます。

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【META】メタバース関連銘柄に投資するETFのシンプル分析

【META】メタバース関連銘柄に投資するETF

 日本時間2021年10月29日未明にフェイスブックが社名を「メタ(Meta)・プラットフォームズ」に変更しました。


 社名変更の理由について、ザッカーバーグCEOは「現在の社名はわれわれが行っている事業の全体像を網羅していない。メタバースが次のフロンティアだ」と説明しています。

 

 「メタバース」はコンピュータやコンピュータネットワークの中に構築された現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービスのことです。


 英語の「何にでもなれるが、何もない(meta)」と「巨大な空間(universe)」を組み合わせた造語です。


 SF作家のニール・スティーヴンスン氏が1992年に書かれた「スノウ・クラッシュ」の作中で登場するインターネット上の仮想空間が、この言葉の由来だそうです。

 

 世界のVRデバイスの市場規模は2020年に78億1000万米ドルと評価され、2021年から2028年にかけて28.2%のCAGRで成長すると予想されています。

世界のVRデバイスの市場規模推移

世界のVRデバイスの市場規模推移

この市場規模の拡大を目論んだようにも見える米国ETFが上場しています。


 米Roundhill Investments社が運用しているRoundhill Ball Metaverse ETF、ティッカー【META】です。


 原指数は同社が算出しているBall Metaverse Index ("META Index")です。2021年6月30日に設定され、マーケットはNYSEです。経費率は0.75%と高めです。


 独自のインデックスを組成しているが故、事実上アクティブETFのような側面を持っているといえますので、高めの経費率は致し方ないところでしょうか。

【META】ETFの組み入れ銘柄

銘柄選定の基準としているキーワードは、以下の図で示される7つです。

META銘柄選定の基準キーワード

META銘柄選定の基準キーワード
  1. コンピューティング:メタバースをサポートするコンピューティングパワー
  2. ネットワーキング:コンシューマー向けのリアルタイム接続・高帯域幅・データサービス
  3. バーチャルプラットフォーム:没入型デジタル・3Dを開発・運用し、ユーザー同士が交流できるサービス
  4. 業界スタンダード:メタバースの開発・運用において必要不可欠なツール・プロトコル・エンジン・フォーマットなど
  5. 決済:法定通貨を含むデジタル上での支払いプロセス・運用サービス
  6. コンテンツ・アセット・IDサービス:デジタル資産や通貨などの販売・再販・管理・セキュリティに関わるサービス
  7. ハードウェア:メタバースの開発・運用において必要な端末や技術を販売・サポート

 7つのキーワードに合致した銘柄選定の結果、組み入れは全部で40銘柄です。

 上位10銘柄は以下のとおりです。現時点で運用組織が考える、「メタバースと言えばこれ」という銘柄群といえます。賛否はもちろんあるでしょうが、1つの目線として知っておくのは良いことですね。

 

【META】ETFを構成する銘柄トップ10

【META】ETFを構成する銘柄トップ10

出典: Roundhill Investments社website

 1位のエヌビディア【NVDA】は米国株投資家にはすでに名が知れているでしょう。
コンピュータグラフィックスの処理を行う、GPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)を開発・設計・販売している米国の半導体メーカーです。

 

 2位のロブロックス【RBLX】はNASDAQに上場するオンライン・ビデオゲームのプラットフォームを運用・開発している企業です。ユーザー(開発者)やクリエイターが独自のゲームを作成できる「Roblox Studio」を提供しています。

 

 2位までの銘柄で約2割のウエイトを占めます。

 

 3位のマイクロソフトと4位のメタ(旧:フェイスブック)については言及不要でしょう。

 

 5位のユニティ・ソフトウェア【U】は「Unity」と呼ばれるゲームエンジンを提供している企業です。双方向のリアルタイム3Dコンテンツの制作・運用のためのプラットフォームを開発しており、携帯電話、タブレット、PC、コンソール、拡張現実・仮想現実デバイス向けの包括的なソフトウェアソリューションを提供しています。

 

 なお、日本のソニーグループ【6758】と任天堂【7974】も40銘柄に含められています。

<チャート>
運用開始から半年程度ですので、チャートも短いです。
運用開始後4か月ぐらいは水色のS&P500から大きく劣後していました。

 

【META】ETFのチャートとS&P500との比較

【META】ETFのチャートとS&P500との比較

出典: US版 Yahoo Finance

 特筆すべきは、出来高が10月下旬から急増していることです。


 まさに、ザッカーバーグ氏が社名変更したころと一致しており、それから約半月は出来高を伴ってプライスが上昇しています。「ザッカーバーグさまさま」といったところです。

 

 足元は、米国のテーパリング観測に伴うグロース株からの資金逃避の影響を被ってか軟調に推移しています。

 

 現時点では15ドル程度で非常に買いやすいプライスですが、残念ながら日本のオンライン証券大手3社では取り扱いがありません。


 ある種のテーマ株をまるっと買うイメージです。個人的にはテーマ株はほとんど取り組みませんが。しかし、このような商品の多様性も米国マーケットの面白さの1つと言ってよいですね。

 

関連記事です。

 売りから入ることができ、レバレッジを効かせられるCFDについてです。中上級者向けの投資、あるいは投機ですね。

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 王道の米国株以外の投資についてです。

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 チャート分析と資産運用についてのコラムです。

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QYLD,XYLD,RYLD,それぞれのカバード・コール戦略ETFの比較

カバード・コール戦略ETFのしくみと種類

 これまで本ブログでは2つのカバード・コール戦略ETFをご紹介してきました。

  • 【QYLD】 NASDAQ100を原資産としたカバード・コール戦略ETF
  • 【XYLD】 S&P500を原資産と下カバード・コール戦略ETF

 まずはカバード・コール戦略を振り返ります。

 

 「カバード・コール戦略」で運用したい人は、現物を買い、同じ単位の「コール」を売って、オプションプレミアムを受け取ります。オプションは毎月1度決済する日があり、決済日の価格がオプション取引の決められた価格に対して高いのか低いのかによって、利益と損失が決まります。

 

 現物は上がれば上がるほど利益が出ます。一方「コールの売り」は、決められた価格+プレミアムより決済日の価格が低ければ、プレミアムの分だけ利益が出て、価格が高ければ高いほど損失が出ます。

 

 仮に現物が10ドル、プレミアムが1ドルの場合、現物とコールの売りの損益はそれぞれ以下の図の通りになります。つまり、コールの売りは現物の下落をカバーすることができます。「カバード・コール戦略」という言葉が腑に落ちるところです。


 一方、コールの売りは現物の上昇に対しては逆の効果を持ちます。よって現物の上昇には追随できません。

カバードコールのしくみ

カバードコールのしくみ

出所:筆者作

 つまり「カバード・コール戦略」は、現物の上昇で得られるリターンを捨てて、プレミアムで得られるキャッシュフローと現物から得られる配当金でリターンを追及しているしくみです。

カバード・コール戦略ETFを比較する

 「カバード・コール戦略ETF」は主にオプションプレミアムを原資とした毎月分配とその分配利回りが魅力で最近日本の投資家においても注目を集めています。

 

 既にご紹介した2つのETFにもう一つのカバード・コール戦略ETFを含めて、比較してみましょう。

 

 もう一つはRussell 2000 Covered Call ETF、ティッカー【RYLD】です。Russel 2000は米国に上場する企業の時価総額上位1001〜3000位で構成されるRussell 2000インデックスのことです。大型株に次ぐ銘柄で構成されたインデックスです。


 【RYLD】の原資産はRussell 2000です。2019/4/17に設定された比較的新顔です。運用しているのは既にご紹介している2つと同様、GlobalX社です。

 マーケットはCBOE、経費率は0.6%です。他の2つと同様に過去7年は毎月分配されています。

 

 主な投資先は他の2つと違い、Russell 2000のETFです。2000銘柄買いながら、ウエイトをインデックスと同じにするのは楽な運用ではありません。そのためETFを買っているのは合理的です。

RYLDの構成銘柄

RYLDの構成銘柄

 では3つを比較してみます。純資産は【QYLD】が1桁違うレベルで多いです。
それだけ人気があるということでしょう。

3つのカバード・コール戦略ETFを比較

3つのカバード・コール戦略ETFを比較

カバードコール戦略ETFのチャートを見てみる

S&P500と比較したチャートです。

  • 水色:S&P500
  • 紫:RYLD
  • 赤:XYLD
  • 緑:QYLD

 カバード・コール戦略は現物の上昇を捨てるものですので、どれもS&P500と比較するとパフォーマンスには明らかな差があります。ただし、【RYLD】は特にコロナショック後のプライスの動きが他の2つのカバード・コール戦略ETFより良好です。

RYLD :XYLD:QYLDの比較チャート

RYLD :XYLD:QYLDの比較チャート

出所:US版 Yahoo! Finance

 3つのカバード・コール戦略ETFの原資産はNASDAQ100>S&P500>Russell 2000の順です。


 Russell 2000は中小型株インデックスので、他の2つと比較して相対的にボラティリティ(値動きの変動率)が大きくなりがちです。オプションの価格はボラティリティが高ければ上がりますので、結果としてボラティリティの高低がカバード・コール戦略ETFのプライスも左右しているということでしょう。

 

 いずれにせよ、どの原資産であっても3つのカバード・コール戦略ETFのパフォーマンスを上回っていますので、カバード・コール戦略ETF自体はキャピタルゲインを追求するべきものではないと考えます。


<カバード・コール戦略ETFとの付き合い方>

 カバード・コール戦略ETFをコアの資産形成に使うことをお勧め出来ないのは従来どおりです。資産形成にはキャピタルの成長が大事だと考えます。

 

 3つのETFを比較して、チャートと分配利回りだけを見て【RYLD】を買うのもよく検討されてからの方がいいでしょう。【RYLD】はコロナショック時の下落も大きいです。、マーケットに不透明感が出ると、中小型株から資金が逃げやすくなります。すると、【RYLD】はまともに影響を受けます。チャートからも読み取れますね。

 

 なお3つのカバード・コール戦略ETFのうち【QYLD】と【XYLD】はSBI証券楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。

 しかし、【RYLD】は取扱がありません。

 

関連記事です。

 QYLDの解説です。

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 仮想通貨とFIREについてですね。

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 1億円を作るのにどの程度の時間がかかるか、というお話です。

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【1545】NEXT FUNDS NASDAQ-100連動型上場投信はNasdaq100投資の最善になるか

【1545】NEXT FUNDS NASDAQ-100®連動型上場投信の信託報酬が業界最安水準に

 日本においてもNASDAQ100がかなりポピュラーになってきたと感じます。
NASDAQ100に関しては、もはや詳しく申し上げる必要がないでしょう。

 米国ナスダックに上場する金融銘柄を除く、時価総額上位100社の時価総額加重平均によって算出される株価指数です。レバレッジがかかったNASDAQ100連動投資信託は「レバナス」という日本独特の呼び名もついています。

 

 NASDAQ100連動商品には東証に上場しているETFがいくつかあります。そのうちの一つ、野村アセットマネジメントが運用している【1545】NEXT FUNDS NASDAQ-100®連動型上場投信が2021/10/27に信託報酬率の上限を従来の1/2以下に引き下げました。

1545の信託報酬率が引き下げられた

1545の信託報酬率が引き下げられた

【1545】の信託報酬率引き下げを踏まえて、他のETFと比較してみます。

東証上場NASDAQ100連動ETF一覧

 東証のETF一覧によれば、NASDAQ100連動ETFは全部で5本あります。うち、【2568】と【2569】、【2631】と【2632】は運用会社が同じで為替ヘッジの有無で銘柄コードが異なります。

東証上場Nasdaq100連動ETF一覧

東証上場Nasdaq100連動ETF一覧

注:純資産、信託報酬は2021年10月末現在、1日平均出来高は2021/9/9~2021/11/22の50営業日で算出した1日平均
出典:日本取引所グループ website

 

 【1545】は上場から10年以上を経過した、日本におけるNASDAQ100連動商品の古株です。

 

 2010年8月はリーマンショックから約2年を経過し、FRBによるQE1が終わった直後です。米国経済もまだ回復途上でした。そのころにNASDAQ100連動ETFを設定した野村アセットは勇気があったなと思わされます。


 結果として「先行者利益」を獲得したのでしょう。5本の中で純資産は頭抜けて多いです。他の2社は、かなり最近設定されています。コロナショック以降のNASDAQ100の急激な上昇に伴い、顧客ニーズに寄り添うとする意図が見え隠れします。

 

 信託報酬率は、【1545】が引き下げる前まではMAXISシリーズに分がありました。一番後発ですので、コストの低さで投資家を引き付けようとしたのでしょう。

 

 結果として、2021年2月下旬以降、【1545】は日興アセット、三菱UFJ国際投信の2社が運用するNASDAQ100連動ETFにコストで大きく見劣りしていたことになります。


 ETFは運用会社等のプロモーションによっても売れ行きが左右されることがあるでしょうが、直近は【2569】の1日平均出来高が多くなっており、純資産も増えているようです。

1545のチャートと取引値の推移

 チャートを確認します。為替ヘッジありの2本はコストでヘッジなしに劣後しますから除外して、【1545】【2568】【2631】の3本で比較することにし、期間は上場から一番短い【2631】と同じ土俵にするため短いですが6カ月で表示させてみました。

 

1545のチャートと取引値推移

1545のチャートと取引値推移

 3つがほぼ重なり合って見づらくなりましたが、【1545】はこの期間に+25.18%であったところ、ピンクの【2631】は+25.56%でした。つまり、若干ですが【2631】が上回ったことになります。微妙なコストの差が反映されたと見えます。

【1545】が信託報酬率を引き下げたわけ

 野村アセットが2021年10月に【1545】の信託報酬率を引き下げたのは、他の4本にコストで見劣りすることを解消したかったのと、先行者利益で積みあがった純資産により信託報酬率を引き下げても収益がそれほど悪化しなくなったというアドバンテージもあったのかもしれません。

 

 一方、日興アセットが運用する【2568】【2569】の純資産を合計すると【1545】より多くなります。さらなる資産の獲得のためには、日興アセットの信託報酬率より魅力的である必要があるとしたのかもしれません。

 

 いずれにせよ、米国株3指数へのアプローチ手段が多いことは、競争を生み、私たち購入者にはメリットが多いですね。

 

 本日ご紹介した5本は、東証上場ETFです。そのため、SBI証券楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。

 

関連記事です。

 2631一択だったのが、1545も選択肢に入りました。競争は大変良いことですね。

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 こちらはレバナスです。投資信託は1545ほど信託報酬は低くありません。

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 Nasdaq100はイノベーションの担い手となる可能性を感じる企業がひしめいていますね。

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XYLD、カバードコールETFのS&P500版、分配金利回り10%近く!?

カバードコールETFのS&P500版 XYLDとは?

 【XYLD】とは、Global X社が運用するGlobal X S&P 500 Covered Call ETFという米国ETFです。2013年6月21日に設定されました。マーケットはNYSEです。


 近年、高配当ETFとして人気があるNASDAQ100を対象とした同様のETFである【QYLD】よりは半年ぐらい早く設定されています。

 

 【XYLD】はCBOE S&P 500 BuyWrite Indexに連動することを目指したETFです。
 このインデックスはS&P500を対象とした「カバード・コール戦略」で設計されています。S&P500についてはすでに申し上げる必要はないでしょう。

 

 「カバード・コール戦略」については【QYLD】GlobalX Nasdaq 100 Covered Call ETFを紹介した際に触れています。


 【XYLD】の場合はS&P500の現物を1単位買い、S&P500のコール・オプションを1単位売るという戦略です。

 

 「カバード・コール戦略」で運用したい人は、現物を買い、同じ単位の「コール」を売って、オプションプレミアムを受け取ります。オプションは毎月1度決済する日があります。決済日の価格がオプション取引の決められた価格に対して高いのか低いのかによって、利益と損失が決まります。

 

 現物は上がれば上がるほど利益が出ます。一方「コールの売り」は、決められた価格+プレミアムより決済日の価格が低ければ、プレミアムの分だけ利益が出て、価格が高ければ高いほど損失が出ます。

 

 【QYLD】でも用いましたが、仮に現物が10ドル、プレミアムが1ドルの場合、現物とコールの売りの損益はそれぞれ以下の図の通りになります。

カバードコール戦略のイメージ図

カバードコール戦略のイメージ図

 つまり、コールの売りは現物の下落をカバーすることができます。「カバード・コール戦略」という言葉のとおりです。一方、コールの売りは現物の上昇に対しては逆の効果を持ちます。よって現物の上昇には追随できません。

 

 つまり「カバード・コール戦略」は、現物の上昇で得られるリターンを捨てて、プレミアムで得られるキャッシュフローと現物から得られる配当金でリターンを追及しているしくみです。

【XYLD】の分配金、経費率、取引値推移を見てみる

「カバード・コール戦略」をざっくり理解したところでその戦略を使っている【XYLD】を見ていきます。まずは経費率を確認します。


【QYLD】と同じで0.6%です。低くはないですね。

XYLDの分配金利回りは8%強にもなっている

 【XYLD】最大の特徴は毎月分配です。先ほど述べたようにオプションは毎月精算されます。S&P500が上昇していれば、毎月オプションプレミアムというキャッシュを得られます。さらに月によっては現物の配当金が入金します。これらが毎月分配の原資になると考えられます。

 

 この分配利回りが年換算で概ね8%強と非常に高いということで、人気を集めているようです。

XYLDの分配金

XYLDの分配金

出典: GlobalX website

 とはいえ、高分配利回りになったのは近年のことです。

XYLDの分配金グラフ

XYLDの分配金グラフ

今年の分配実績は以下のとおりです。

XYLDの分配実績

XYLDの分配実績

XYLDとS&P500,QYLDの比較チャート

 XYLDとS&P500と比較したチャートです。試しに【QYLD】も入れてみました

  • 赤:S&P500
  • 青:XYLD
  • 緑:QYLD

 【XYLD】は現物の上昇を捨てている戦略ですので、S&P500と比較するとパフォーマンスには明らかな差があります。一方、【QYLD】よりは概ね高い水準で推移しています。いずれにせよ、キャピタルゲインを追求する性格ではありません。

XYLD,S&P500,QYLDの比較チャート

XYLD,S&P500,QYLDの比較チャート

 昨年12月からの月次出来高の推移です。徐々に人気を集めている様子がうかがえます。着々と増えています。

XYLDの出来高推移

XYLDの出来高推移

出所:US版 Yahoo! Finance


【XYLD】の構成銘柄

 S&P500採用のおなじみの銘柄が並んでいます。

XYLDの構成銘柄

XYLDの構成銘柄

【XYLD】の投資戦略、活用方法

 【QYLD】と同様に現時点でキャピタルゲインは要らないが、毎月コツコツ分配金を受け取りたいという方には向いているでしょう。

 

 想定される欠点は、【XYLD】を買う人が増えれば増えるほど、コールの売りを増やさなければいけませんが、S&P500が下落し続けるようなマーケット環境ではコールを買う人が減るので、コールを売れない状況がくることです。

 

 つまり作りたいポジションを作れないことでしょう。これは「カバードコール戦略」共通の特徴です。

 

 しかしながら、下落し続けるような環境を想定しづらいのなら、S&P500そのものを買った方がリターンの追求としては理に適っています。資産形成の初期段階ならば【XYLD】ではなく、例えばS&P500に連動するETFである【VOO】の方が合理的です。

 

 一方ある程度資産形成ができてから、定期的にキャッシュフローを得たいと望む投資家には、資産の1割程度を【XYLD】に割いてもいいかもしれません。

 

 なお、分配金として支払われてしまうと、課税が必須です。一方現物の含み益には課税されないことも念頭に置いておきたいですね。

 

 【XYLD】はSBI証券松井証券楽天証券マネックス証券auカブコム証券、ネット証券トップ5社が取り扱っています。

 

関連記事です。

カバードコールETFのNasdaq100版、QYLDについてです。

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カバードコールを組み合わせたJEPIです。

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こちらは後払い決済、今はやりのフィンテック系ですね。

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【JEPI】はインカムとキャピタルを追求できるS&P500の派生ETF

【JEPI】はインカムとキャピタルを追求できる(?!)ETF

【JEPI】はJP Morgan Investment Management Inc.が運用するJPMorgan Equity Premium Income ETFという米国ETFです。2020年5月21日に設定されました。マーケットはNYSEです。


 設定されてから日が浅いですが、日本の証券会社でも取引できる商品です。

 

 【JEPI】の”Fund Story”では以下のように謳っています。


“JPMorgan Equity Premium Income ETF seeks to deliver monthly distributable income and equity market exposure with less volatility.”


(JPMorgan Equity Premium Income ETFは毎月分配金を出すことと、相対的に小さなボラティリティで株式市場のエキスポ―ジャーを追求する)

 

 つまり、キャピタルゲインとインカムの両方を追求することを目的としたETFです。


 資金の8割程度をS&P500採用銘柄を中心とした株式に投じ、残りの2割程度をEquity Link Note(以下;ELN)と呼ばれる仕組み債に投じています。


 ELNはS&P500のコール・オプションを売るデリバティブで、この部分に関してはNASDAQ100でカバードコールポジションを作っている【QYLD】とよく似ています。

 

 つまりELNでインカムを追求し、残りの株式投資部分でキャピタルゲインを追求しているETFが【JEPI】です。

 

 経費率は0.35%です。低くはないですが、比較的許容できる高くもない水準と評価してよいでしょう。

【JEPI】の構成銘柄、投資先

 上位10銘柄は以下の通りです。

JEPIの構成銘柄、投資先

JEPIの構成銘柄、投資先

出典: JP Morgan Investment Management Inc. website

 

 1位から5位までは、いわゆるELNです。全体で見るとELNが10銘柄あり、そのトータルウエイトは約16.3%です。


 6位以下は普通株式ですが、すべての銘柄を確認したところ88銘柄で、必ずしもS&P500採用銘柄をすべて保有しているわけではありません。

 

 低ボラティリティを謳っているためか、例えばテスラ【TSLA】は銘柄リストに存在していません。


 またS&P500においてウエイトが高いアップル【AAPL】は【JEPI】では0.5%程度です。保有銘柄やウエイトはS&P500採用銘柄のそれぞれのボラティリティを考慮した運用だと想像されますね。

 

 なお、一部REITもあります。S&P500にもREITが採用されていますので、これは不思議ではありません。

【JEPI】のチャートと分配金

JEPIのチャート

JEPIのチャート

出典: US版 Yahoo Finance

 設定されてから1年半程度ですので、レコードは少ないです。

  • 赤:S&P500
  • 青:【JEPI】
  • 緑:【QYLD】

 1年半をS&P500と比較すると、株式の割合とそのボラティリティを意図的に抑えている分だけ、【JEPI】のパフォーマンスが劣るのは当然です。


 カバードコール戦略オンリーの【QYLD】と比較して高パフォーマンスであるのは、株式部分が80%を占めるので、これも当然と言えば当然でしょうか。

 

 謳われている通り、【JEPI】は毎月分配です。過去1年の分配利回りは約7.1%です。

JEPIの分配金履歴

JEPIの分配金履歴

出典: JP Morgan Investment Management Inc. website

 分配金の原資は、株式の配当とオプションのプレミアムです。

 月によってその構成割合は異なりますが、総じてプレミアムの方が圧倒的に大きいです。

【JEPI】をどのように考え、投資していくか

 キャピタルゲインとインカムのいいとこどりをしようという意図は見えますし、現時点では結果はその通りになっていると言えるでしょう。


 ただし、株式部分は銘柄やウエイトがインデックス投資ではなく、かなりアクティブ投資と言えそうです。よって、ファンドマネージャーの腕次第で、キャピタルゲイン部分は変化しそうです。

 

 オプションプレミアム部分は、【QYLD】と同様で、原資産であるS&P500が上昇している限りは、プレミアムを得られるであろうと考えられる仕組みですから、その将来はS&P500次第ということになりそうです。

 

 キャピタルゲインはS&P500より抑えられがちになると考えられる仕組みですので、資産形成期であれば素直にS&P500連動商品でよいでしょう。

 

 定期的にインカムを欲しいというニーズであれば、資産の一部を【JEPI】で持つことも戦略としてはありかもしれませんね。

 

 【JEPI】はSBI証券楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。

 

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やや尖り感のある、中国ニューエコノミーETFです。

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S&P500積立投資、売却の出口についてです。

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かなり尖った、中国のネット関連企業レバETFですね。

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米国の中型株ETF【IJH】のシンプル分析。米国株、中規模銘柄への投資。

米国の中型株ETF【IJH】とは?

 【IJH】とは、米国の中型株で構成される指数と同等の投資成果をあげることを目指しているETFです。米国ブラックロック社が運用しており、正式名称はiShares Core S&P Mid-Cap ETF です。2000年5月22日に設定されており、ETFとしては古株でしょうか。マーケットはNYSEです。

 

 ベースとなるインデックスはS&P MidCap 400 indexです。MidCapとはMid Capitalizationの略で、時価総額が中規模という意味です。S&P 500は知っていてもこちらのインデックスにはなじみが薄いかもしれませんね。

 

 実は大型株のS&P 500、中型株のS&P MidCap 400、小型株のS&P SmallCap600というインデックスがあり、MidCapの定義は36億ドルから131億ドルで、浮動株が50%以上という条件があります。

 

 131億ドルは、日本円に換算すると1兆4000億円程度です。日本株なら時価総額1兆円以上であれば、大型株と呼ばれることが多いですが、米国ではその程度だと中型株にカテゴライズされるということです。

 

 と言いつつ、2021年9月末の構成銘柄には165億ドルの銘柄もあります。

IJHのインデックスの特徴

IJHのインデックスの特徴

出典:S&P website

 インデックスのレコードは1991年6月1日から存在しています。1928年1月3日からレコードがあるS&P500よりは歴史が浅い指数です。

【IJH】の経費率と分配金

 ベースとなるインデックスであるS&P MidCap 400 indexをざっくり理解したところで、【IJH】を見ていきましょう。経費率は0.05%です。かなり低いですね。

 

分配は3か月ごとに出しています。

IJHの分配金推移

IJHの分配金推移

出典:ブラックロック website

 次に、チャートの比較をしてみましょう。

【IJH】のチャートの比較

 大型株インデックスであるS&P500と比較したチャートです。

  • 赤:S&P500
  • 青:IJH

 S&P500の方が概ねIJHを上回って推移しています。

IJHとS&P500の比較チャート

IJHとS&P500の比較チャート

出所:US版 Yahoo! Finance

【IJH】の構成銘柄とセクターウェイト

 上位10銘柄は以下のとおりです。概ねインデックス通りです。

IJHの構成銘柄

IJHの構成銘柄

出典:ブラックロック website

 セクターウエイトは資本財、金融、一般消費財、情報技術等が大きな割合を占めていますが、これと言って突出したセクターがあるわけでもないです。

IJHのセクターウェイト

IJHのセクターウェイト

出所:US版 Yahoo! Finance

米国の中型株ETF【IJH】のまとめ

 最後にまとめです。

 S&P500連動ETFの代表選手である【VOO】の構成銘柄、上位10銘柄と比較してみましょう。

VOOの上位10銘柄

VOOの上位10銘柄

出所:US版 Yahoo! Finance

 言うまでもなくGAFAMが上位に位置するわけですが、そのウエイトも高く、10銘柄で約3割のウエイトを占めます。

 

 これと比較すると【IJH】は突出したウエイトの銘柄が無く、これといった特徴を見出しにくい印象です。米国株市場の成長を享受しようと思うとやや魅力に欠けているとでもいいましょうか。

 

 プライスの推移を鑑みても、ETFへの投資としてはS&P 500連動商品でよく、【IJH】への投資を無理に考慮する必要はないと考えます。

 

 このETFの使い方の一つは「未来のS&P500採用銘柄候補」を見つけることではないでしょうか。

 

 S&Pのインデックスは四半期ごとに見直されます。S&P500の採用銘柄の条件の一つは時価総額が131億ドル以上で、MidCap400の上限が閾値になっています。


 MidCap400の上位の銘柄は近い将来のS&P500採用銘柄になる可能性があります。

 

 S&P500採用銘柄になれば、その連動資金が当該銘柄を買いますので、明確な買い需要を産み、それは指数参入時に株価の上昇をもたらします。裏を返せばS&P500から除外される銘柄も必要です。

 

 のんびり長く付き合う投資とはいいがたいですが、投資のイベントでリターンを得るための情報源としてMidCap400構成銘柄の変化を追うために【IJH】をウォッチするという使い方ができるように思います。

 

 IJHはSBI証券楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。機関も使っているETFですので、運用総額も大きいです。

 

関連記事です。

 このような尖ったETFもありますね。米国市場の魅力は上昇だけでなく、商品の多様性というのもあります。

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 昨今よく聞くBNPLについてです。

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 こちらも何かと注目を浴びるARKKの記事です。

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【TQQQ】はNASDAQ100のブル3倍の値動きを示すレバレッジETF

【TQQQ】はNASDAQ100の3倍の値動きを示すレバレッジETF

 【TQQQ】は、米国ProShares社が運用するレバレッジETFです。2010年2月9日に設定されました。マーケットはNASDAQです。

 

 【TQQQ】はNASDAQ100の日次の値動きの3倍になるように設計されたレバレッジETFです。正式名称はProShares UltraPro QQQです。

 

 NASDAQ100についてはもはや申し上げなくてもよいでしょう。連動するETFにインベスコ社が運用する【QQQ】があります。【TQQQ】はTriple QQQ(3倍QQQ)、いわゆるトリプルQQQですね。

 

 経費率は0.95%です。レバレッジETFとしては平均的な値でしょう。

TQQQの構成銘柄

【TQQQ】の構成銘柄

【TQQQ】の構成銘柄

出所: US版 Yahoo! Finance

 上位10位の構成銘柄です。スワップを使ってレバレッジを効かせています。金融機関名が載っているのは、スワップは相対取引で、どの金融機関を相手にスワップ契約を結んでいるかを示すものです。


 S&P500の2倍レバレッジETFである【SSO】もProshare社が運用するもので、上位10銘柄は同様に、スワップ契約相手の金融機関名が掲載されていましたね。

TQQQとQQQの比較チャート

 NASDAQ100(緑)と比較したチャートです。過去5年ではNASDAQ100の6倍程度のパフォーマンスです。もっともパフォーマンスに大きな差が出てきたのはコロナショック以後だということがよくわかるチャートです。
 

TQQQとQQQの比較チャート

TQQQとQQQの比較チャート

出所: US版 Yahoo! Finance

TQQQの分配金推移

 【TQQQ】の分配はごくたまに少しだけという状況です。レバレッジ商品は値動きにフォーカスが置かれますから、分配はあればラッキーと言ったところでしょう。 

TQQQの分配金履歴

TQQQの分配金履歴

出所: ProShares website

TQQQの純資産額

【TQQQ】について特筆すべきことは、純資産額が大きいことです。
 

TQQQの純資産額

TQQQの純資産額

出所: Bloomberg.co.jp

 日本円で約1兆7000億円です。

SPXLの純資産額

SPXLの純資産額

出所: Bloomberg.co.jp

 S&P500の3倍レバレッジETFである【SPXL】は約3400億円ですから、【TQQQ】は【SPXL】の5倍の資産規模である、巨大なレバレッジETFといえます。NASDAQ100に関してポジティブな見通しを持っている投資家が多いということでしょう。

TQQQは大手オンライン証券では取り扱いが無い

 【TQQQ】は日本の大手オンライン証券会社では2021年9月時点で取り扱いが無いです。サクソバンク証券では購入可能です。

 

 資産規模なら【TQQQ】の方が大きいのに、【SPXL】は日本で買えて、【TQQQ】は日本のネット証券で買えないのは少々不便ですね。

Nasdaq100のブル3倍ならば円建て投信という手がある

【TQQQ】そのものではありませんが、NASDAQ100の3倍レバレッジ商品に投資するならば、大和アセットマネジメントが運用している「NASDAQ100 3倍ブル」があります。

 

 2020年10月に設定され、SBI証券楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。

Nasdaq100、ブル3倍の投資ならば投資信託がある

Nasdaq100、ブル3倍の投資ならば投資信託がある

出所:大和アセットマネジメント website

ただし、信託報酬等は高めです。1.5%程度を想定しておく必要があります。

Nasdaq100、ブル3倍投資信託の信託報酬

Nasdaq100、ブル3倍投資信託の信託報酬

出所:大和アセットマネジメント website

また、あと2年程度で償還(運用を終了して投資家に資金を返す)の見込みです。

Nasdaq100、3倍ブルは償還日が示されている

Nasdaq100、3倍ブルは償還日が示されている

出所:大和アセットマネジメント website

 

 レバレッジ型商品故、長期で保有するべきものではありませんよと商品自体が訴えているようにも思えます。

 

 投資信託ですから、約定は1日1回で原則として取引を販売会社が受け付けた翌営業日の基準価額で取引され、取引受付日から5営業日後に受け渡されます。

 

 このあたりはETFとはルールが違いますので特に換金時は念頭に置いておきたいことです。ETFのようにマーケットで取引をすることはできませんし、受渡までの日数もETFよりは長いです。


 要は機動力には欠けるということですね。円建てで買えるという点は魅力的に思える人もいるかもしれません。どうしてもNASDAQ100の3倍レバレッジ商品を試したいというのであれば、候補になりうるでしょう。

 

 ただし、TQQQそのものは

SBI証券楽天証券マネックス証券、いずれも取り扱いはありません。

 

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 基本的にはレバレッジ系はお勧めしませんが、商品選択の幅が増えるのはよいことだと考えます。

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 大和さんの商品はこちらも人気です。

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 TECLなども昨今大変人気ですね。

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【CURE】ヘルスケアセクターレバレッジETFの特徴と投資の仕方

ヘルスケアセクター限定レバレッジETF? CUREとは?

 【CURE】は、Direxion Investments社が運用する米国のヘルスケア関連企業株式で構成される株価指数をベースにしたレバレッジETFです。2011年6月15日に設定されました。マーケットはNYSEです。

 

 ベースとなるインデックスはStandard & Poor’sが提供しているHealth Care Select Sector Index(ティッカー: IXVTR)です。


 米国の製薬、ヘルスケア機器やサービス、バイオテクノロジー、ライフサイエンス企業等の株式で構成されます。

 

 米国の医療費はグラフの通り年々増大しています。OECDの統計によれば、2019年の米国の医療費は3,634,174百万ドルです。同じ年の日本の医療費は608,479百万ドルですから、米国は日本の6倍の規模です。


 米国の人口は日本の約2.6倍であることを加味しても、米国民一人当たりの医療費は日本のそれの2倍以上だということです。


 つまりヘルスケアセクターのマーケットが巨大だということです。当然、関連企業の数も多く、規模も大きいということになります。だからこそ米国企業のみでインデックスを構成できるとも言えます。

米国の医療費推移

米国の医療費推移

 【IXVTR】の構成上位10位銘柄は以下の通りです。 Johnson & Johnson【JNJ】、医療保険の最大手ユナイテッド・ヘルス【UNH】のウエイトが高いです。ファイザー【PFE】、アボット・ラボラトリ―【ABT】などが続きます。

ヘルスケアセクターインデックスの構成銘柄

ヘルスケアセクターインデックスの構成銘柄

 

出所: Direxion Investments website

 なお、【IXVTR】に直接連動する金融商品は現時点ではありません。【CURE】のために作られたインデックスとも言えそうです。

【CURE】の構成銘柄と経費率はこうなっている

 【CURE】は【IXVTR】の日次の値動きの3倍になるように設計されたレバレッジETFです。半導体指数の3倍レバレッジETFである【SOXL】のヘルスケアセクター版と理解すればいいでしょう。

 

 このあたりは、過去のレバレッジ商品記事をご覧いただいただいた方にはなじみがあるでしょうか。経費率は1.04%です。


 インデックスが特殊です。そのため、たとえばフィラデルフィア半導体指数のようなポピュラーなインデックスをベースとしている【SOXL】よりも、インデックスの使用料が高いことが想像されます。

 

 上位10位の構成銘柄です。スワップなどを使ってレバレッジを効かせています。このあたりは、【SOXL】と似ていますね。

CUREの構成銘柄

CUREの構成銘柄

出所: US版 Yahoo! Finance

CUREの取引値推移とチャート

 S&P500(緑)、ヘルスケアセクターのETFである【VHT】(Vanguard Health Care Index Fund ETF)(ピンク)と比較したチャートです。

CUREの取引値の推移とチャート

CUREの取引値の推移とチャート



 まずこの5年では【VHT】はS&P500を総じてアンダーパフォームしていますが、10年単位では勝ります。トータルリターンは10年で5倍前後です。対して、S&P500 は4倍前後です。直近の5年はIT系のグロースが全盛だった、ということがここでもよくわかります。

 

 ヘルスケアセクターの特徴は、値動きが激しくないことだということがよくわかるチャートです。【CURE】は5年で見ればS&P500の約3倍になっています。

 

 製薬は1企業単位だと決算や新薬開発でボラタイルな面もありますが、セクターとしてはディフェンシブな安定成長であることが確認できます。

 

 【VHT】のパフォーマンスで読み取れる通り、ヘルスケアセクターはマーケット全体の中で値動きは落ち着いている傾向があります。そのため、レバレッジをかけても大きなリターンになりにくい特徴があるように思います。


 一方、落ち着いた値動きはマーケットが低迷する時期には功を奏し、コロナショック時のダメージは3倍レバレッジETFとしては小さいものでした。

【CURE】の分配金推移

 分配は3の倍数の月にわずかに出ています。レバレッジ商品は値動きにフォーカスが置かれますから、分配はあればラッキーと言ったところでしょう。

CUREの分配金推移

CUREの分配金推移

【CURE】ヘルスケアセクターレバレッジETFのまとめ

 レバレッジ商品の魅力の一つはブル商品であれば構成銘柄のプライスの上昇によってインデックスより大きなリターンを得られることです。しかし、【CURE】はそのセクターの性格により、ベースとなるインデックスの値動きがそれほど大きくありません。

 

 よって、【CURE】はブル型のレバレッジ商品としては落ち着いた値動きに感じられることでしょう。マイルドなレバレッジ商品を望む方には向いているかもしれません。

 

 同じ3倍レバレッジでも、例えば【SOXL】に比べてボラティリティは低くなりがちですので、下げ相場でもダメージが小さくなる傾向があり、長所ともいえます。

 

 ただし、経費率が相対的に高いです。したがって、長期保有ではよくよく検討されたほうがいいですね。

 CUREはSBI証券楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。

 

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レバレッジ商品に関してのまとめです。

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昨今人気のレバナスです。使い方には注意が必要です。

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様々な商品に投資するしないはおいておいて、全体的な知識の底上げはあってよいでしょうね。

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【QYLD】のリスクは?Nasdaq100のカバード・コール、高分配金ETF

高分配金、米国ETFとして人気のあるQYLDとは

 【QYLD】とは、Global X社が運用するGlobalX Nasdaq 100 Covered Call ETFという米国ETFです。2013年12月11日に設定されました。マーケットはNASDAQです。近年、高配当ETFとして人気が出てきています。

 

 【QYLD】はCBOE NASDAQ 100 BuyWrite V2 Indexに連動することを目指したETFです。このインデックスはNASDAQ100を対象とした「カバード・コール戦略」で設計されています。


 「カバード・コール戦略」についてはのちほど触れるとして、NASDAQ100についてまず理解しましょう。


 これも米国株インデックスです。ナスダックに上場する金融銘柄を除く、時価総額上位100社の時価総額加重平均によって算出される株価指数です。インデックスは毎年12月に見直されます。

 

 上位10銘柄は以下の通りで、アップル、マイクロソフト、アマゾンといったおなじみの企業群です。この10銘柄で全体の時価総額の50%超を占めます。NASDAQといえばいわゆるIT系企業をイメージしがちですが、業種が多岐にわたっていることもわかりますね。

NASDAQ100の構成上位10銘柄

NASDAQ100の構成上位10銘柄

 このNASDAQ100を用いた「カバード・コール戦略」とは、NASDAQ100の現物を1単位買い、NASDAQ100のコール・オプションを1単位売るという戦略です。少し複雑ですので、まずはオプション取引について少し触れます。

QYLDの使う、オプション取引とは

 「オプション」は権利のことです。オプション取引は権利に対してつけられたプレミアムと呼ばれる、価格を取引するものです。権利には決められた価格で「買う」権利と「売る」権利があります。前者を「コール」、後者を「プット」と言います。

 

 つまり、オプション取引には

  • 「コール」の買い
  • 「コール」の売り
  • 「プット」の買い
  • 「プット」の売り

 の4通りの取引があります。例えば「コール」の買いには、「コール」の売り注文が無ければ取引は成立しません。

QYLDの高分配金の源泉、カバード・コール戦略

 オプション取引の詳細はとりあえず横においておきましょう。ここからは「カバード・コール戦略」で使われる「コールの売り」にだけ焦点を当てます。

 

 「カバード・コール戦略」で運用したい人は、現物を買い、同じ単位の「コール」を売って、オプションプレミアムを受け取ります。

 

 オプションは毎月1度決済する日があります。決済日の価格がオプション取引の決められた価格に対して高いのか低いのかによって、利益と損失が決まります。

 

 現物は上がれば上がるほど利益が出ます。


 一方「コールの売り」は、決められた価格+プレミアムより決済日の価格が低ければ、プレミアムの分だけ利益が出ます。逆に、価格が高ければ高いほど損失が出ます。


 仮に現物が10ドル、プレミアムが1ドルの場合、現物とコールの売りの損益はそれぞれ以下の図の通りになります。

 

カバードコール戦略とは

カバードコール戦略とは


 つまり、コールの売りは現物の下落をカバーすることができます。「カバード・コール戦略」という言葉が腑に落ちるところです。一方、コールの売りは現物の上昇に対しては逆の効果を持ちます。よって現物の上昇には追随できません。

 

 つまり「カバード・コール戦略」は、現物の上昇で得られるリターンを捨てる戦略です。プレミアムで得られるキャッシュフローと、現物から得られる配当金でリターンを追及しているしくみです。

毎月高分配金を実現してきた、【QYLD】について知る

 「カバード・コール戦略」をざっくり理解したところで、その戦略を使っている【QYLD】を見ていきます。

 

 まずは経費率を確認します。0.6%です。低くはないですね。【QYLD】最大の特徴は毎月分配です。先ほど述べたようにオプションは毎月精算されます。

 NASDAQ100が上昇していれば、毎月オプションプレミアムというキャッシュを得られます。さらに月によっては現物の配当金が入金します。これらが毎月分配の原資になります。


 この分配利回りが年10%程度になるということで、近年人気を集めています。今年の分配実績は以下のとおりです。

QYLDの毎月分配履歴

QYLDの毎月分配履歴

 基準価額は23ドル程度で大きな変化が無いですから、確かに年利回りで10%程度にはなりますね。

QYLDとNasdaq100の比較チャート

QYLDとNasdaq100の比較チャート

NASDAQ100と比較したチャートです。

青:NASDAQ100
赤:QYLD

 【QYLD】は現物の上昇を捨てている戦略ですので、パフォーマンスには明らかな差があります。

高配当、高分配金ETFである【QYLD】との付き合い方

 【QYLD】は現時点でキャピタルゲインは要らないが、毎月コツコツ分配金を受け取りたいという方には向いているでしょう。

 

 商品の特性上、【QYLD】を買う人が増えれば増えるほど、コールの売りを増やさなければいけません。しかし、NASDAQ100が下落し続けるようなマーケット環境ではコールを買う人が減ります。そのため、コールを売れない状況がくること、つまり作りたいポジションを作れない可能性もゼロではありません。

 

 とはいえ、NASDAQ100の45%程度はGAFAMで構成されており、何年にも及ぶような当面下落し続けるような環境を、今は想定しづらいかもしれませんね。

 

 しかしながら、下落し続けるような環境を想定しづらいのなら、NASDAQ100そのものを買った方がリターンとしては理に適っていますね。

 

 特に資産形成の初期段階ならば【QYLD】ではなく、例えばNASDAQ100に連動するETFである【QQQ】の方がいいのではないでしょうか。

 

 一方ある程度資産形成ができてから、定期的にキャッシュフローを得たいと望む投資家には、資産の1割程度を【QYLD】に割いてもいいかもしれません。

 

 なお、分配金として支払われてしまうと、課税が必須です。一方現物の含み益には課税されないことも念頭に置いておきたいですね。かなりクセのある商品ですので、特徴と自身の環境を踏まえての投資となります。

 

 また、この高利回りはNasdaq100の力強い上昇を前提にしたものです。そこも踏まえておく必要があります。当然ながら、Nasdaq100の勢いがなくなれば、分配金も大きく下落します。

 

 そういう意味では、連続増配株のような景気に対しての下方硬直性は薄いと言ってよいでしょう。

 この商品はSBI証券楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。

 

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テック系のレバレッジ商品、TECLです。

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相場が良いと、レバレッジをかけたくなるのが心情かもしれません。

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【ARKK】破壊的イノベーションを狙うARK社のアクティブETF

破壊的イノベーションを狙うアクティブETF。ARKKとは

 【ARKK】は、米国ARK Investment Management LLC(以下:ARK社)が運用するARK Innovation ETFという米国ETFです。2014 年10月31日に設定されました。マーケットはNYSEです。

 

 【ARKK】はETFですが、ベースとなるインデックスはありません。アクティブETFとカテゴライズされます。【ARKK】について掘り下げる前に、まずはARK社について確認しておきましょう。

 

 ARK社には投資の信条ともいえる言葉があります。


 “Disruptive Innovation” -- 「破壊的イノベーション」です。

 

 その定義は

  • 劇的に生産性の向上をもたらす
  • 大きくコストを減らせる
  • 他のイノベーションを生み出せる下地であること

 です。

 

 次世代のイノベーションを起こす可能性がある上場企業群から、ETFを組成運用します。まさに、破壊的イノベーションをテーマとした資産運用会社となります。


 女性版ウォーレン・バフェットと呼ぶ人もいるCEO兼CIO(Chief Investment Office)のキャシー・ウッド氏が2014年に創業した、まだ若い会社です。

 

 2021年9月現在、以下の8本のETFを運用しています。

ARK社のアクティブETF

  • イノベーション(【ARKK】、ARK Innovation)
  • 自動運転技術&ロボティクス(【ARKQ】、ARK Autonomous Tech. & Robotics)
  • 次世代インターネット(【ARKW】 、ARK Next Generation Internet)
  • ゲノミック レボリューション(【ARKG】、ARK Genomics Revolution)
  • フィンテック イノベーション(【ARKF】、ARK Fintech Innovation)
  • 宇宙探査&イノベーション(【ARKX】、ARK Space Exploration & Innovation)

ARK社のインデックスETF

  • 3Dプリンティング(【PRNT】、The 3D Printing ETF)
  • イスラエル イノベーティブ テクノロジー(【IZRL】Israel Innovative Technology)

 【ARKK】はARK社が運用するETFの中で一番純資産が多い(約2兆7千億円)基幹商品です。

【ARKK】の経費率、投資対象企業

 ARK社のETFでも特に知名度の高い、【ARKK】についてみていきます。

 経費率は0.75%です。低くはないですがアクティブETFですので仕方ないところでしょう。

 

【ARKK】が投資する対象は

  • 新製品またはサービスの開発
  • DNA技術(「ゲノム革命」)
  • エネルギー、自動化、製造における産業革新(「ゲノム革命」)の分野に関連する科学研究の技術的改善に関わる企業
  • 進歩に依存または利益をもたらす企業 「産業イノベーション」
  • 共有テクノロジー、インフラストラクチャ、「次世代インターネット」
  • 金融サービスをより効率的にするテクノロジー「フィンテックイノベーション」

 などがあります。

 特にセクターを問わず、イノベーションを起こせそうと判断できれば投資対象になると明言しています。どこの国の企業かは問いません。

【ARKK】の構成銘柄トップ10

 それに基づいた、ウエイト上位10銘柄は以下のとおりです。上位10銘柄で約50%のウエイトを占めます。

ARKKの構成銘柄

ARKKの構成銘柄

出所 ARK Investment Management LLC website

 箇条書きでまとめてみましょう。

  • 電気自動車のテスラ【TSLA】
  • 遠隔医療プラットフォームを提供するテラドック【TDOC】
  • エンターテインメント企業のロク【ROKU】
  • 仮想通貨取引所を運営するコインベース【COIN】
  • ソフトウェア企業であるユニティ・ソフトウェア【U】

 おなじみのズーム【ZM】やショッピファイ【SHOP】も確認できますね。

【ARKK】のパフォーマンスと株価チャート

 パフォーマンスを確認しましょう。過去1年はいい数字に見えますね。

ARKKのパフォーマンス推移

ARKKのパフォーマンス推移

出所: US版 Yahoo! Finance

 

 この1年のリターンは特に出色と言えます。S&P500と比較します。

ARKKの取引値チャートとS&P500との比較

ARKKの取引値チャートとS&P500との比較

出所:US版 Yahoo! Finance

赤:S&P500
青:ARKK

 

【ARKK】は特に2020年の夏以降の上昇が著しいです。

 【ARKK】が日本の投資家で話題になったのは2020年の年末ぐらいでした。確かに、そのあたりの上昇は著しいですね。


 テスラ【TSLA】のウエイトが高い運用ですが、ちょうどこのころテスラの株価も大きく上がっていました。一方、2021年春以降はやや軟調です。


 もう一段の上げのためには、「次のテスラ」が必要かもしれません。

【ARKK】は構成銘柄の特徴を踏まえた購入が吉

 中長期のグロースを想定した運用をしている商品です。NAVが現在120ドル程度とそれほど高いプライスではありません。そのため、少しぐらいPFに入れてサテライトとして活用するのには向いているそうです。

 

 運用方針が明確ですから、その方針に魅力を感じる人には、良いサテライト投資先となるでしょう。

 

 また、構成銘柄を見て中長期の個別銘柄投資のヒントにするという使い方もよいでしょう。

 

 近年のパフォーマンスが良すぎて、注目されすぎたがゆえでしょうか。最近は、【ARKK】が純投資だけではない対象にもなっているようです。


 ベストセラー「世紀の空売り」で有名になった投資家のマイケル・バーリ氏は【ARKK】のプットオプションを約3,100万ドル取得したことをSEC(米証券取引委員会)に報告しています。


 プットオプションですから、単純に言えば原資産である【ARKK】の下落を見込んだポジションです。合理的かどうかは別にして、著名な投資家の行動というのはしばしば注目されやすく、そのポジションに追随するような投資家も出てきがちです。

 

 いずれにしても、話題の割には手堅く方針がしっかりしたETFといえそうです。課題は、中小型グロース特有のボラタイルな性格です。

 

 短期うねり取りか、長期で保有か。買う前にしっかりと自分のスタンスを決めておくことが肝要と言えます。

 

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