カバード・コール戦略ETFのしくみと種類
これまで本ブログでは2つのカバード・コール戦略ETFをご紹介してきました。
- 【QYLD】 NASDAQ100を原資産としたカバード・コール戦略ETF
- 【XYLD】 S&P500を原資産と下カバード・コール戦略ETF
まずはカバード・コール戦略を振り返ります。
「カバード・コール戦略」で運用したい人は、現物を買い、同じ単位の「コール」を売って、オプションプレミアムを受け取ります。オプションは毎月1度決済する日があり、決済日の価格がオプション取引の決められた価格に対して高いのか低いのかによって、利益と損失が決まります。
現物は上がれば上がるほど利益が出ます。一方「コールの売り」は、決められた価格+プレミアムより決済日の価格が低ければ、プレミアムの分だけ利益が出て、価格が高ければ高いほど損失が出ます。
仮に現物が10ドル、プレミアムが1ドルの場合、現物とコールの売りの損益はそれぞれ以下の図の通りになります。つまり、コールの売りは現物の下落をカバーすることができます。「カバード・コール戦略」という言葉が腑に落ちるところです。
一方、コールの売りは現物の上昇に対しては逆の効果を持ちます。よって現物の上昇には追随できません。
出所:筆者作
つまり「カバード・コール戦略」は、現物の上昇で得られるリターンを捨てて、プレミアムで得られるキャッシュフローと現物から得られる配当金でリターンを追及しているしくみです。
カバード・コール戦略ETFを比較する
「カバード・コール戦略ETF」は主にオプションプレミアムを原資とした毎月分配とその分配利回りが魅力で最近日本の投資家においても注目を集めています。
既にご紹介した2つのETFにもう一つのカバード・コール戦略ETFを含めて、比較してみましょう。
もう一つはRussell 2000 Covered Call ETF、ティッカー【RYLD】です。Russel 2000は米国に上場する企業の時価総額上位1001〜3000位で構成されるRussell 2000インデックスのことです。大型株に次ぐ銘柄で構成されたインデックスです。
【RYLD】の原資産はRussell 2000です。2019/4/17に設定された比較的新顔です。運用しているのは既にご紹介している2つと同様、GlobalX社です。
マーケットはCBOE、経費率は0.6%です。他の2つと同様に過去7年は毎月分配されています。
主な投資先は他の2つと違い、Russell 2000のETFです。2000銘柄買いながら、ウエイトをインデックスと同じにするのは楽な運用ではありません。そのためETFを買っているのは合理的です。
では3つを比較してみます。純資産は【QYLD】が1桁違うレベルで多いです。
それだけ人気があるということでしょう。
カバードコール戦略ETFのチャートを見てみる
S&P500と比較したチャートです。
- 水色:S&P500
- 紫:RYLD
- 赤:XYLD
- 緑:QYLD
カバード・コール戦略は現物の上昇を捨てるものですので、どれもS&P500と比較するとパフォーマンスには明らかな差があります。ただし、【RYLD】は特にコロナショック後のプライスの動きが他の2つのカバード・コール戦略ETFより良好です。
出所:US版 Yahoo! Finance
3つのカバード・コール戦略ETFの原資産はNASDAQ100>S&P500>Russell 2000の順です。
Russell 2000は中小型株インデックスので、他の2つと比較して相対的にボラティリティ(値動きの変動率)が大きくなりがちです。オプションの価格はボラティリティが高ければ上がりますので、結果としてボラティリティの高低がカバード・コール戦略ETFのプライスも左右しているということでしょう。
いずれにせよ、どの原資産であっても3つのカバード・コール戦略ETFのパフォーマンスを上回っていますので、カバード・コール戦略ETF自体はキャピタルゲインを追求するべきものではないと考えます。
<カバード・コール戦略ETFとの付き合い方>
カバード・コール戦略ETFをコアの資産形成に使うことをお勧め出来ないのは従来どおりです。資産形成にはキャピタルの成長が大事だと考えます。
3つのETFを比較して、チャートと分配利回りだけを見て【RYLD】を買うのもよく検討されてからの方がいいでしょう。【RYLD】はコロナショック時の下落も大きいです。、マーケットに不透明感が出ると、中小型株から資金が逃げやすくなります。すると、【RYLD】はまともに影響を受けます。チャートからも読み取れますね。
なお3つのカバード・コール戦略ETFのうち【QYLD】と【XYLD】はSBI証券、楽天証券、マネックス証券等が取り扱っています。
しかし、【RYLD】は取扱がありません。
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QYLDの解説です。
仮想通貨とFIREについてですね。
1億円を作るのにどの程度の時間がかかるか、というお話です。