高分配金、米国ETFとして人気のあるQYLDとは
【QYLD】とは、Global X社が運用するGlobalX Nasdaq 100 Covered Call ETFという米国ETFです。2013年12月11日に設定されました。マーケットはNASDAQです。近年、高配当ETFとして人気が出てきています。
【QYLD】はCBOE NASDAQ 100 BuyWrite V2 Indexに連動することを目指したETFです。このインデックスはNASDAQ100を対象とした「カバード・コール戦略」で設計されています。
「カバード・コール戦略」についてはのちほど触れるとして、NASDAQ100についてまず理解しましょう。
これも米国株インデックスです。ナスダックに上場する金融銘柄を除く、時価総額上位100社の時価総額加重平均によって算出される株価指数です。インデックスは毎年12月に見直されます。
上位10銘柄は以下の通りで、アップル、マイクロソフト、アマゾンといったおなじみの企業群です。この10銘柄で全体の時価総額の50%超を占めます。NASDAQといえばいわゆるIT系企業をイメージしがちですが、業種が多岐にわたっていることもわかりますね。
このNASDAQ100を用いた「カバード・コール戦略」とは、NASDAQ100の現物を1単位買い、NASDAQ100のコール・オプションを1単位売るという戦略です。少し複雑ですので、まずはオプション取引について少し触れます。
QYLDの使う、オプション取引とは
「オプション」は権利のことです。オプション取引は権利に対してつけられたプレミアムと呼ばれる、価格を取引するものです。権利には決められた価格で「買う」権利と「売る」権利があります。前者を「コール」、後者を「プット」と言います。
つまり、オプション取引には
- 「コール」の買い
- 「コール」の売り
- 「プット」の買い
- 「プット」の売り
の4通りの取引があります。例えば「コール」の買いには、「コール」の売り注文が無ければ取引は成立しません。
QYLDの高分配金の源泉、カバード・コール戦略
オプション取引の詳細はとりあえず横においておきましょう。ここからは「カバード・コール戦略」で使われる「コールの売り」にだけ焦点を当てます。
「カバード・コール戦略」で運用したい人は、現物を買い、同じ単位の「コール」を売って、オプションプレミアムを受け取ります。
オプションは毎月1度決済する日があります。決済日の価格がオプション取引の決められた価格に対して高いのか低いのかによって、利益と損失が決まります。
現物は上がれば上がるほど利益が出ます。
一方「コールの売り」は、決められた価格+プレミアムより決済日の価格が低ければ、プレミアムの分だけ利益が出ます。逆に、価格が高ければ高いほど損失が出ます。
仮に現物が10ドル、プレミアムが1ドルの場合、現物とコールの売りの損益はそれぞれ以下の図の通りになります。
つまり、コールの売りは現物の下落をカバーすることができます。「カバード・コール戦略」という言葉が腑に落ちるところです。一方、コールの売りは現物の上昇に対しては逆の効果を持ちます。よって現物の上昇には追随できません。
つまり「カバード・コール戦略」は、現物の上昇で得られるリターンを捨てる戦略です。プレミアムで得られるキャッシュフローと、現物から得られる配当金でリターンを追及しているしくみです。
毎月高分配金を実現してきた、【QYLD】について知る
「カバード・コール戦略」をざっくり理解したところで、その戦略を使っている【QYLD】を見ていきます。
まずは経費率を確認します。0.6%です。低くはないですね。【QYLD】最大の特徴は毎月分配です。先ほど述べたようにオプションは毎月精算されます。
NASDAQ100が上昇していれば、毎月オプションプレミアムというキャッシュを得られます。さらに月によっては現物の配当金が入金します。これらが毎月分配の原資になります。
この分配利回りが年10%程度になるということで、近年人気を集めています。今年の分配実績は以下のとおりです。
基準価額は23ドル程度で大きな変化が無いですから、確かに年利回りで10%程度にはなりますね。
NASDAQ100と比較したチャートです。
青:NASDAQ100
赤:QYLD
【QYLD】は現物の上昇を捨てている戦略ですので、パフォーマンスには明らかな差があります。
高配当、高分配金ETFである【QYLD】との付き合い方
【QYLD】は現時点でキャピタルゲインは要らないが、毎月コツコツ分配金を受け取りたいという方には向いているでしょう。
商品の特性上、【QYLD】を買う人が増えれば増えるほど、コールの売りを増やさなければいけません。しかし、NASDAQ100が下落し続けるようなマーケット環境ではコールを買う人が減ります。そのため、コールを売れない状況がくること、つまり作りたいポジションを作れない可能性もゼロではありません。
とはいえ、NASDAQ100の45%程度はGAFAMで構成されており、何年にも及ぶような当面下落し続けるような環境を、今は想定しづらいかもしれませんね。
しかしながら、下落し続けるような環境を想定しづらいのなら、NASDAQ100そのものを買った方がリターンとしては理に適っていますね。
特に資産形成の初期段階ならば【QYLD】ではなく、例えばNASDAQ100に連動するETFである【QQQ】の方がいいのではないでしょうか。
一方ある程度資産形成ができてから、定期的にキャッシュフローを得たいと望む投資家には、資産の1割程度を【QYLD】に割いてもいいかもしれません。
なお、分配金として支払われてしまうと、課税が必須です。一方現物の含み益には課税されないことも念頭に置いておきたいですね。かなりクセのある商品ですので、特徴と自身の環境を踏まえての投資となります。
また、この高利回りはNasdaq100の力強い上昇を前提にしたものです。そこも踏まえておく必要があります。当然ながら、Nasdaq100の勢いがなくなれば、分配金も大きく下落します。
そういう意味では、連続増配株のような景気に対しての下方硬直性は薄いと言ってよいでしょう。
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