ユナイテッドヘルス【UNH】は米国医療保険の代表格
NYダウ30種に加えられているユナイテッドヘルスは、アメリカを代表する医療保険会社です。1977年に設立されました。全世界で1億人以上にヘルスケアサービスを提供しています。
また、ITを活用したPBM(Pharmacy Benefit Manager)という薬剤給付管理システムでも業界大手です。PBM大手のカタマランRxやヘリオスを合計2兆円近くかけて2015年に買収しています。
PBMというのは医師から指示される処方薬の管理、給付システムです。これを握っていると製薬会社との交渉で薬価の値引きを引き出しやすくなります。このシステムに応じて医師が患者に薬を処方していくからです。
※ユナイテッドヘルスのページから
そういう意味では保険会社が処方薬まで握っているわけで、ジェネリック薬の導入が進む理由の一つになっています。保険会社としては安い薬で効果を上げたいからです。ユナイテッドヘルス【UNH】は、医療保険とPBMでの大手ということになりますので、シナジーは大きいです。
ちなみに日本は公的健康保険が充実しており、庶民でも病院に行くことが簡単にできますが、アメリカはそうではありませんでした。というのも、日本は健康保険加入義務がありますが、アメリカは義務ではなかったのです。
そのため、2014年に完全実施されたオバマケア(通称:Affordable Care Act)法整備をしました。それまでは20%近くの人が保険に入ってませんでした。その数は4800万人にもなります。そのためアメリカの個人破産の大きな原因の1つが医療費になっています。
盲腸で手術したら800万円、腕を骨折して手術したら150万円、という実際に遭った嘘みたいな話があるのが医療費高騰のアメリカです。
こういう実態を踏まえ、オバマケアにより国民皆保険にしようとしたのです。80%の既存の加入者プラス、残りの20%が職場などを通じて医療保険に入る法整備を進めたのです。これは罰則規定もある強制加入制度です。
そのため、民間の健康保険会社が俄然注目を浴びることになりました。
扱っている会社にはアンセム【ANTM」やエトナ【AET】があります。ユナイテッドヘルス【UNH】も大手でしたが、2016年に個人医療保険から多くの州で撤退の意思を示しました。すでに30近くの州で撤退表明をしています。利益を上げにくい構図だからです。
今後も国民皆保険に絡んだ業界の動向が注目されます。
ユナイテッドヘルス【UNH】の配当とチャート
2006年3月 株価 50ドル 配当0.03ドル
2016年6月 株価137ドル 配当0.625ドル
2018年3月 株価221ドル 配当0.75ドル
2019年3月 株価221ドル 配当0.9ドル
見事なまでの右肩上がりですね。後述する売り上げを見ていただければ一目瞭然ですが、大きく事業拡大をしてきました。それが株価に反映されています。280ドルを超えて伸びてきましたが、ここのところの国民皆保険問題で大きく調整しています。
ユナイテッドヘルス【UNH】の基礎データ
続いて基礎データを見てみましょう。
- ティッカー:UNH
- 本社:ミネソタ州ミネアポリス
- 上場:ニューヨーク証券取引所(NYSE)
ユナイテッドヘルス【UNH】の配当と配当性向
2009年まで一期配当でした。しかも0.03ドル、配当利率は0.05ドルでしたので、成長株扱いだったと捉えてよいでしょう。
2010年から年四回配当をするようになり、時期も良かったこともあって増配を続けています。また、株価は他の米国株と同様にリーマンショック後は右肩上がりを続けています。
配当性向も上昇していますが、それでも30%程度です。配当余力は十分です。
ユナイテッドヘルス【UNH】のBPSとEPS
米国企業にしては珍しく、一株資産(BPS)もかなりの勢いで上昇しています。一株利益(EPS)はおよそ2.5ドルから10ドル超まで上昇しています。この10年間で4倍以上ということです。企業規模が急激に拡大してきたことが窺い知れます。
ユナイテッドヘルス【UNH】の売り上げと利益
実に売り上げがおよそ3倍になっています。規模を考えると凄まじい売り上げ増加です。ただ、営業利益率はさほど高くなく10%に届きません。これは業態によるもので、業界全体みてもさほど高い営業利益率にはなっていません。そういう意味では不安材料ではないですね。
このグラフでは見にくいですが、営業利益は10年でほぼ4倍になっています。
ユナイテッドヘルス【UNH】のキャッシュフロー
フリーキャッシュフローは潤沢で、特に2015年からの3年間の伸びが顕著です。投資CFは営業CFに比べて低い水準で、このキャッシュフローは大変魅力的です。ダウ30種の中でも優等生と言えるでしょう。
ユナイテッドヘルス【UNH】のまとめと雑感
セクター的にはヘルスケアということになりますが、製薬や医療機器とは違う、医療保険&PBMという業務内容が同社の魅力を増しています。ただ、このヘルスケアセクターは医療費高騰が過ぎるため、今後もしばしば政治的な介入を呼ぶことが予想されています。
また、米国健康保険業界は競争が激しい業界でもあります。しかし、ユナイテッドヘルスは業界トップであり、業績もついてきています。PBMの買収戦略も功を奏しており、業績にも陰りが見えません。
国民皆保険に伴う政治の影響を好機とみるか、ネガティブニュースとみるかで対応が変わりますね。
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一時期は7パーセント近くまで配当利回りが上昇していた製薬のGSKです。
ヘルスケアETFです。ユナイテッドヘルスなどの健康保険会社から製薬、医療機器メーカーまでカバーしています。