アドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】のシンプル銘柄分析
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】はジェリー・サンダース (Jerry Sanders) 氏らによって1969年に設立された半導体企業です。日本ではティッカーの通り、「エー・エム・ディー」と呼ぶことが多いです。
黎明期はパソコン用のCPUが主な製品で、インテル製品の互換品を製造していました。IBMがIBM PCに搭載するチップにセカンドソース(互換品を提供する主体)を要求したため、インテルはアドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】を含む複数の製造会社と契約せざるを得なかったのです。
現在はパソコンのみならず、データセンター向け製品も主力です。得意分野はコンピュータのCPU(Central Processing Unit)と画像処理演算装置のGPUです。
後述しますが、米国企業らしく数々のM&Aとスピンオフを実施し、現在はファブレス企業となっています。
AMD Accelerated Processing Unit (エーエムディー・アクセラレーテッド・プロセッシング・ユニット、略称:AMD APU) と呼ばれる同社の主力製品は、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】が2006年から開発を行なっている、CPUとGPUとを合成・統合させた新しい製品の名称です。
APUは、後述するAMDによるATIの買収により誕生しました。ソニーのPlay Station4に採用されています。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】の株価チャートと配当
出典: US版 Yahoo Finance
同業のエヌビディア【NVDA】とS&P500 と比較する形での5年チャートです。赤のS&P500、紫のエヌビディア【NVDA】を大きくアウトパフォームしています。
コロナ禍以降は浮き沈みが大きい銘柄でしたが、2022年秋に底をつけてから反転してきました。2023年初から5月末までに約2倍になっています。無配銘柄です。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】の基礎データ
- 本社: カリフォルニア州サンタ・クララ
- ティッカー: AMD
- NASDAQ上場
- 決算期: 12月末
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】の売上高と利益
2022年にぐっと売上高が上昇したのは、後述するM&Aによるものです。そのM&Aに伴い多額の償却を計上しており、売上高の伸びに対して営業利益がさえない結果になりました。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】のEPSとBPS
2016年までは最終赤字が続いていましたが、近年はコンスタントに黒字です。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】のキャッシュフロー
2015年まではキャッシュマネジメントに苦労していたことがうかがえる経緯ですが、近年はフリーCFが潤沢になりました。ファブレス企業ですから、設備投資は少ないです。よって現在はフリーCFが潤沢です。
AMDのM&Aとスピンオフの歴史
ざっくり振り返るとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】は以下のようなM&Aとスピンオフを実施してきています。
- 1996年 NexGen Microsystems社を買収
- 2002年 Alchemy Semiconductorを買収
- 2003年 ナショナル・セミコンダクターからパソコン用のCPU開発部門を買収
- 2004年 アドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】のフラッシュメモリ部門と富士通のフラッシュメモリ部門を統合し、スパンションを設立
- 2006年 Alchemyプロセッサ部門をRaza Microelectronics, Inc.に売却することを発表。グラフィックスチップ、チップセットの開発、製造を行うカナダのATIを買収
- 2008年 デジタルテレビ部門をブロードコムへ売却することを発表。 製造部門(ファウンドリー)をスピンオフし、グローバルファウンドリーズを設立(2009年分社化完了)
- 2012年 マイクロサーバーベンダーのシーマイクロを買収すると発表
- 2020年 ザイリンクスの買収を発表(2022年手続き完了)
簡略化すると、M&Aで新たな分野を獲得してグラフィックやサーバー用製品に参入して事業領域を広げ、ファウンドリーを売却してファブレス企業になったということです。
2006年に買収したATIが持っていた資産で、現在のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ【AMD】の主力製品を作り出したのは前述のとおりです。M&Aに長けた企業と言えるでしょう。
2022年に買収を完了したザイリンクスは、FPGA(現場でプログラム可能な集積回路)と呼ばれる分野のリーディングカンパニーです。事業を多様化し、データセンターや自動車などの主要なエンドマーケットでの事業機会拡大が見込まれます。
かつては凸凹だった業績に落ち着きが見られてきています。シリコン・サイクルこそあれ、今後はM&Aで獲得した資産が業績にポジティブな寄与をすることが期待できますね。
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