VHTはヘルスケアに特化したバンガードのセクターETF
VHTはバンガード・米国ヘルスケア・セクターETFと言います。 MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア25/50インデックスへの連動を目指したETFです。経費率は0.10%です。実は2016年は0.09%でしたが、ちょっと上がりましたね。
このあたりが経費率の下げの限界なのかもしれません。とはいえ、安定の低信託報酬です。バンガード・米国ヘルスケア・セクターETFは、医薬品企業はもちろん、保険、ヘルスケア機器やヘルスケア用品を扱う企業の株式から構成されています。
リーマンショック時の最大の下落幅が-23%だったことから、ディフェンシブなETFとして知られます。ちなみに、同様にディフェンシブとされる生活必需品セクターETFであるVDCは-17%程度でした。
※画像はバンガード社から
パフォーマンスは、過去3年間では8%、10年間では13%と安定的な平均リターンを上げています。セクターETFの中では、情報技術セクターETFであるVGTに次いで良いリターンです。
アメリカは人口増加国です。また、世界的にみても人口は今後も増え続け、2050年には100億人に達するとも言われています。そして、それは今後の世界的な高齢化の進展と無縁ではありません。
高齢化と医療費の関係は高い相関関係にあり、今後も医薬品の利用は増え続けることが予測されます。
また、ヘルスケア業界は他業種と比較してもグローバリズムの進んでいる業界であり、疾病に対する効果的な医薬品や医療機器を開発する能力を持つ企業は限られています。
日本のノーベル化学賞受賞者である大先生、大村智氏がメルクと組んでイベルメクチンを広めたように、メガファーマの資力は開発に欠かせません。大村智氏は立志伝を体現したような方で、そのストーリーは多くの共感を呼んでいますね。本庶佑氏とオプジーボ、ブリストル・マイヤーズスクイブと小野薬品の関係をみてもそうです。
米国を中心とするメガファーマ、大手医薬品企業は買収戦略も含めて独占的な強みがあると言って良いでしょう。ヘルスケアとはある種の投資のようなところがあり、不確定な未来に対する投資、それができるだけの資力がないと勝負になりません。
懸念材料としては、医療費高騰は各国政府の社会保障費、支出において大きな割合を占めつつあり、削減対象となっていることです。それは日本もそうですし、アメリカでもそうです。
そのため今後、医療費削減の観点から特許の切れた薬品がジェネリックに置き換えられることは必然と言って良く、それはヘルスケアセクターにとっては不安材料になりつづけています。ヘルスケア、特に製薬企業の盛衰は多分に政治的な要素が含まれるのはそういうことです。
とはいえ、分散投資のETFであれば、高齢化進展に伴う売り上げの上昇のほうが大きいでしょう。
VHTの分配金とチャート
- 2006年 取引値 57ドル 分配金 0.615ドル
- 2016年 取引値133ドル 分配金 1.8ドル
- 2017年 取引値155ドル 分配金 2.02ドル
- 2018年 取引値174ドル 分配金 2.222ドル
- 2020年 取引値202ドル 分配金 2.551ドル
分配金が四半期になったのは2016年からです。四半期によって多少の分配金の増減はあるものの、基本的には増配基調です。
取引値は10年で4倍近くになります。セクターETFの中でも最も安定的に成長してきたETFの1つです。その分、分配金利回りは1%台がほとんどで、直近も1.3%となっています。
VHTの構成銘柄群とコメント
構成銘柄はおよそ360銘柄です。
2018年の構成銘柄
銘柄 | % |
---|---|
Johnson & Johnson | 8.5 |
Pfizer Inc. | 5.9 |
UnitedHealth Group Inc. | 5.9 |
Merck & Co. Inc. | 4.4 |
AbbVie Inc. | 3.3 |
Amgen Inc. | 3.2 |
Medtronic plc | 3.1 |
Abbott Laboratories | 3 |
Eli Lilly & Co. | 2.4 |
Bristol-Myers Squibb Co. | 2.3 |
2020年の構成銘柄
構成銘柄 | シンボル | 構成比 |
---|---|---|
Johnson & Johnson | JNJ | 8.21% |
UnitedHealth | UNH | 6.20% |
Merck | MRK | 4.34% |
Pfizer | PFE | 4.01% |
AbbVie | ABBV | 3.70% |
Abbott Laboratories | ABT | 3.57% |
Thermo Fisher Scientific | TMO | 3.20% |
Eli Lilly | LLY | 3.13% |
Amgen | AMGN | 3.08% |
Bristol-Myers Squibb | BMY | 2.94% |
Medtronic | MDT | 2.72% |
Danaher | DHR | 2.45% |
Gilead Sciences | GILD | 2.15% |
CVS Health | CVS | 1.88% |
ジョンソンエンドジョンソン、ファイザーといった企業はそこそこの高配当企業です。ジョンソンエンドジョンソンは増配率も高く、連続増配企業でもあるので、多くの個人投資家から支持を受けています。
また、ユナイテッドヘルス、健康保険に強みを持つ企業やアムジェンといったバイオ製薬もランクインしています。この数年上位にランクインしていたC型肝炎のギリアドはランクを落としています。C型肝炎はインターフェロンによる治療が長らく主でしたが、ギリアドの新薬が著効で、難治性の病気ではなくなりました。結果、市場が縮小しています。
株価を大きく伸ばしたサーモフィッシャーもランクインしてきましたね。
医薬品企業とバイオテクノロジーで構成の6割を占めます。医薬品に偏らず、医療機器や保険、施設というところまですそ野を広げているところが、リスク分散になっています。
VHT、米国ヘルスケアセクターETFは、今後もディフェンシブな成長が期待できるETFと言って良いでしょう。
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ヘルスケアの雄、ジョンソン&ジョンソンです。ヘルスケアは今後も市場拡大が予想されます。世界規模での高齢化が進むからです。ただ、多分に政治的であり、研究開発費も嵩みます。そういう意味では奇跡的な成長曲線を描いています。
バンガードの考えるセクターです。ヘルスケアも主要な投資先になっていますね。