たぱぞうの米国株投資

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メルク【MRK】の銘柄分析。全米第2位の製薬会社、安定配当が特徴。

メルク【MRK】の銘柄分析。全米第2位の製薬会社

 メルクは1668年にフリードリヒ・ヤコブ・メルク氏が経営権を獲得した薬局が始まりです。その薬局はドイツのダルムシュタットにありました。 

 

 また、その一族からは作家であり、ゲーテの友人・後援者であるヨハン・ハインリッヒ・メルク氏が出ています。化学や薬学だけではなく、文学や芸術にも造詣の深い一族でした。

 

 会社としての設立は1827年です。1855年に50名程度の薬局であったメルクは、20世紀には1000人を超える会社体制になります。工場を擁する大製薬会社への一歩を踏み出したと言えます。

 

 同時に海外進出も果たします。1887年にはニューヨーク支社をつくり、1891年にはメルクアンドカンパニーとして子会社化させます。

 

 その後、第一次世界大戦があります。ドイツの会社であったメルクは敵国企業としてアメリカ政府に接収されます。

 

 それが現在のNYSE上場のメルクアンドカンパニーとドイツのメルク社になっています。

 

 NYSE上場のメルクアンドカンパニーは北米でのみメルクと名乗ってます。日本など海外ではMSD【Merck Sharp & Dohme】です。日本子会社は昔の萬有製薬です。海外ではメルクを名乗る権利を有していません。

 

 ドイツのメルク社は北米では【Emanuel Merck, Darmstadt】という名称です。名称権を北米ではMSDが持っているからです。ティッカーは「ドイツDAX」のMRKがドイツメルクでNYSEのMRKが米国メルクです。

 

 両社は組織としては別会社です。

 

 分社後の米国メルク社は規模が非常に大きく、1990年代までは業界首位級の売上でした。しかし、世界的な製薬業界の合併、再編の流れでファイザーやサノフィ、グラクソの後塵を拝することになります。

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※画像は米国メルク【MRK:NYSE】本社ページから

 

 そんな中、2009年に同じニュージャージーのシェリングプラウ社と合併し、順位を再び上げています。

2019年世界製薬大手会社収入トップ15ランキング

製薬業界売り上げランキング2018年

製薬業界売り上げランキング2018年

 製薬業界の売り上げランキングです。メルクは5位につけています。売り上げは2015年以降調子が良いですね。それを反映した順位になっています。 

メルク【MRK】の配当とチャート

メルク【MRK】の配当とチャート

メルク【MRK】の配当とチャート
  • 2006年 8月 株価40ドル 配当0.38ドル
  • 2016年 4月 株価58ドル 配当0.46ドル
  • 2019年 9月 株価82ドル 配当0.55ドル

 

 リーマンショックでも減配せずに0.38ドル配当を続けたところは評価されてよいと思います。ディフェンジブな配当銘柄と捉えてよいのではないでしょうか。ただし、後述する配当性向は高めです。

 

 新薬開発のプレッシャーとジェネリックとの競合は業界全体の構図で、国家の方針として医療費抑制傾向にある中、どのような企業戦略を選択するのか注目されます。

 

 この頃業績がさえず、株価が下落する局面がありましたが米国株過去最高値更新という市場環境の中、メルクも株価が回復しています。売り上げ停滞期の2015年を経て、よく伸びています。 

メルク【MRK】の基礎データ

ティッカー:MRK
本社:アメリカ・ニュージャージー
上場:ニューヨーク証券取引所(NYSE)

 続いて、基礎データを見てみましょう。

メルク【MRK】の売り上げと利益

メルク【MRK】の売り上げと利益

メルク【MRK】の売り上げと利益

  2010年の売上増は、「コパトーン」シリーズのスキンケアで知られるシェリング・ブラウのM&Aに伴うものです。その後、事業の再編を行い、一部事業をドイツのバイエルに売却しています。2011年、2012年の営業利益の増加はそれに伴うものですね。

 

 2015年以降は落ち着き、免疫チェックポイント阻害薬「キートルーダ」の貢献もあって売り上げは右肩上がりになっています。同分野でキートルーダは先行するオプジーボと競合、凌駕しつつあり、抗がん薬としての地位を確立しています。

 

 ちなみに、2018年の世界における売上高はキートルーダが61.2億ドルで、先行するオプジーボとほとんど同じでした。両剤とも、22年には100億ドル近くまで売り上げを伸ばすと言われています。すでに2019年3Qで30億ドルの売上ですから、前倒して達成する可能性がありますね。

 

 

 子宮頸がんなどの原因になるヒトパピローマウイルス (HPV) の感染予防ワクチン「ガーダシル」、糖尿病薬の「ジャヌビア」、抗リウマチ薬なども広くシェアを獲得しています。

メルク【MRK】の配当と配当性向

メルク【MRK】の配当と配当性向

メルク【MRK】の配当と配当性向

 高配当株として知られますが、配当性向はやや高めです。恒常的に100%を超えていますが、キャッシュフローは安定していますね。これをどう評価するかというところです。メルクの場合、配当目当てというよりもむしろ、キャピタルを狙うフェーズに入っているのかもしれません。

 

 それだけ、キートルーダが爆発的です。

メルク【MRK】のBPSとEPS

メルク【MRK】のBPSとEPS

メルク【MRK】のBPSとEPS

 EPSは非常に出入りが激しくなっています。こちらも配当と同じく評価の難しいところですが、やはりブロックバスターに伴う伸びが注目されるところです。

メルク【MRK】のキャッシュフロー 

メルク【MRK】のキャッシュフロー

メルク【MRK】のキャッシュフロー

 キャッシュフローは3年連続減り続けましたが、2018年になり持ち直しています。ただし、傾向としてはやはり右肩上がりというものではなく、今後もやや落ち着かない展開になりそうです。

 

 キートルーダやジャヌビアといった競争力を持つ医薬品ポートフォリオは、魅力です。ただし、ジャヌビアはいずれジェネリックとの競合があり、免疫腫瘍学の進歩はキイトルーダの牙城を揺るがす可能性があります。このジャンルは1つのトレンドになっており、他社も研究開発を急いでいます。

 

 とはいえ、直近決算は強いです。キートルーダの売上高は四半期で30億ドル超えをしており、通期見通しも引き上げています。このまま薬剤世界一の売上になる見通しですね。懸念された中国での売り上げも好調で、売上高もEPSも予想を上回る決算でした。

 

 製薬業界の新薬開発競争と特許切れの問題は常について回る懸念で、そのため他業界と比べるとやや割安に置かれがちです。メルクの場合も現在の値付けはやや割安、そういったリスクを織り込むならば、今の水準は買いやすい水準と言えそうです。

 

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