高配当BDC銘柄とは?
高配当・高分配金というとブラックロックのHDVやバンガードのVYMといった株式系から、優先株式のPFF、あるいはジャンク債のJNKなどのETFが思い浮かぶかもしれません。
これらとは別に、BDC銘柄と呼ばれる銘柄があります。これは、配当を高めるために存在する特殊な法人の形を取る銘柄で、【Business Development Company】と呼ばれるものです。これは、90%以上の会計上の利益を配当することで、法人税の免除を受けています。REITやMLPなどに近似した仕組みですね。
この法人は、主に融資を業務としており、融資マーケットは中堅以下の企業群になります。広がった背景として、融資元の減少があります。米国ではリーマンショック以後、銀行の統廃合が進みました。例えばカリフォルニアの地銀だったウェルズファーゴがワコビアを合併して巨大銀行の地位を確立したようなことです。
そのため、中小規模の地銀が支えてきた、地場の産業や大きくない企業群にとっては、地域の銀行からの融資以外を開拓する必要がありました。そこでBDCの役割が大きくなったとも言えます。
信用格付けが高くないために銀行から融資を受けにくかったり、貸付金利が高かったりする場合にも、BDCは有効に活用されています。
こうした背景の法人のため、当然ながら金融危機には脆弱性があります。実際にリーマンショック時に分散性や審査が甘かったBDCは軒並み経営不安視され、取引値も暴落しました。
しかし、それを乗り越えたBDCは10%近い利回りを昨今は安定して継続していることもあり、投資の1つの選択肢として今も一定の存在感を示しています。
ちなみに、BDC銘柄は現在では以下のような取り決めのもと運用されています。
- 会計上の利益の90%以上を配当する
- 1銘柄あたりの構成比率を全体の25%以下に抑える
- 資産の70%以上を適格投資対象に投資する
- 借入は自己資本の2倍までならば可能
- SECの監督下に置かれる
こういった背景があり、BBBからBBB-と格付けとしては高くはないものの、安全性には一応の配慮がされています。
代表的なBDC銘柄は何があるのか
代表的なBDC銘柄としては【ARCC】【PSEC】【MAIN】といったものがあります。
Rank | BDC | Market Cap |
---|---|---|
#1 | ARCC | 7.10B |
#2 | ORCC | 5.23B |
#3 | GBDC | 2.37B |
#4 | FSK | 2.25B |
#5 | MAIN | 2.10B |
#6 | PSEC | 2.03B |
#7 | GSBD | 1.89B |
#8 | HTGC | 1.55B |
#9 | TSLX | 1.42B |
#10 | NMFC | 1.17B |
ランキング通り、【ARCC】が実績も歴史も長く、人気があります。上位の銘柄は私たち日本においても一定の人気があります。米国でも幅広く人気があり、専門のサイトも立ち上がっていますね。
いずれにせよ、こうした金融商品の幅広さは、米国市場の魅力の1つであり、ドルで投資する強みの1つになっています。ドルを持つということは、米国市場にアクセスできるということであり、様々な商品を取捨選択できるということだからですね。
さて、今回はこのBDC銘柄に関するご質問を頂いています。
【ARCC】や【MAIN】などのBDC銘柄への投資をどう考えるか
50代会社員の投資初心者です。いつも楽しく拝見しています。
そう遠くない将来手にする退職金をどのように運用しようかと模索しています。今のところ、米国株で安定した配当金を得るのが最適と考えて、生活必需品系の銘柄を少しずつ購入しています。
最近、ARCCやMAINなどのBDC(Business Development Company)の存在を知りました。不況時には減配するでしょうが、リーマンショックを乗り越えたのであれば長期保有も大丈夫では?と気になっています。
たぱぞうさんはBDC銘柄についてどのようにお考えでしょうか?銘柄分析等で取り上げていただければ幸いです。
【ARCC】などのBDC銘柄への投資は分散性が肝になる
BDC銘柄は高い配当金利回りに妙味があります。そういう意味では優先株の集合体であるPFFと似た投資戦略になります。リスクとしては、金融危機時の脆弱性です。それぞれご質問のARCCとMAINのチャートを見てみましょう。
ARCCのチャートと傾向
それぞれリーマンショック時とチャイナショック時には下げています。直近ではコロナショック時ですね。景気が悪くなると融資先のデフォルトリスクも高まるため、当然の結果と言えばそうですね。ピークからの下落はPFFなどもよりもきつく、よりボラタイルです。
リーマンショック時で言えば、直近高値の20ドルから3.4ドルまで下げたというのは頭の片隅においておきたいところです。その後、分配金は四半期で安定して0.38ドルずつでています。年間の利回りは9.33%にもなります。
MAINのチャートと傾向
MAINはBDCの中でも特徴的なチャートです。BDC銘柄はキャピタルが狙えないことが多いです。しかし、MAINはリーマンショック以後、キャピタルも取れるようなチャートを描いてきました。
もっともコロナではボラタイルな側面を示しました。利回りはやや下がり、6%~7%といったレンジにあることが多いです。直近は上昇、9%台ですね。
高配当BDC銘柄のまとめ
BDC銘柄はS&P500やVTIなどと違って、ポートフォリオの大多数を占めるような投資は難しいでしょう。しかし、少々トッピングしてインカムを増やすという使い方はありだと思います。また、極端に下がるときには、あえて火中の栗を拾いに行くというのも無くはないでしょう。これは上級者向けになります。
とはいえ、格付けは投資適格の殆ど最低基準に張り付いている銘柄が多いので、いずれの場合にしても過度に突っ込むのはリスクが高く、そういう評価の銘柄であることは知っておいて良いですね。
今後、BDC銘柄の買い付け、保有がどうなるか、行政的な関わりも含めて注目したいところですね。
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JNKも利回り狙いで人気があるETFですね。
HYGは高利回りの社債を集めたETFです。
こちらも強烈なインカム商品です。YYYとZMLPです。
PFFですね。こちらも人気あります。値動きとしてはARCCとほとんど同じような動きをしています。