たぱぞうの米国株投資

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クアルコム【QCOM】の銘柄分析。通信と半導体に強み

クアルコム【QCOM】の銘柄分析。通信と半導体に強み

  クアルコム(Qualcomm)は、QualityとCommunicationsを合わせた造語です。その名のとおり、携帯などの移動体通信の通信技術と半導体の設計開発を行う企業です。

 

 アーウィン・ジェイコブズ氏とアンドリュー・ビタビ氏によって1985年に設立されました。アーウィン・ジェーコブズ氏の息子は2代目社長であり、現在の会長であるポール・E・ジョイコブズ氏です。

 

 アンドリュー・ビタビ氏は1935年生まれであり、設立当時はすでに50歳でした。設立までカリフォルニア大学ロサンゼルス校や同大学サンディエゴ校で教授として勤務していました。

 

 クアルコムは以前は携帯電話端末や通信設備部門もありましたが、携帯電話端末事業は日本の京セラに、通信設備事業はスウェーデンのエリクソンに売却しています。

 

 川下部門であるハードの製造販売を早々に見切ったのは、強みである3G、4Gさらには5Gの移動体通信のチップや特許収入に特化するためだったと言えます。

 

 クアルコムは自社で設計し、生産を外部工場に委託するファブレス企業として有名です。集中と選択を徹底して利益を上げる体質の会社です。

 

 創業者のアンドリュー・ビタビ氏が通信規格であるCDMAの策定にも関わったことから、WCDMAやLTEの携帯電話チップでは圧倒的な市場占有率を誇っています。

 

 これは殆ど独占的と言って良く、世界中で使用されている携帯電話の中にクアルコム製品が殆ど必ずと言って良いぐらいに搭載されています。また、その特許は移動体通信機器、あるいは方式を広く網羅しています。いわば、クアルコムの特許に関係無い移動体端末は無いと言ってよいほどです。

 

 それら特許から得られる収入は莫大です。中国はスマホメーカーが多いことから、現在のクアルコムの売り上げのおよそ50%は中国でのものです。2015年に中国で独占禁止法に抵触すると判断され、およそ10億ドルの制裁金を支払いました。

 

 また、Appleとも訴訟を繰り広げていました。こちらは2019年の春に和解をしました。内容は、特許に対する支払いが過大すぎるというものです。AppleはIntelなどと組み、チップの乗り換えを企図しましたがうまくいきませんでした。

 

 これで手打ちになればよいですが、これからもスマホに関わるマージンを巡って泥仕合になってくると、利益構造に変化が生まれそうです。

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 ※画像はクアルコムのページから

クアルコム【QCOM】の配当とチャート

クアルコム【QCOM】の配当とチャート

クアルコム【QCOM】の配当とチャート

2006年12月 株価37ドル 配当0.12ドル

2016年8月  株価62ドル 配当0.53ドル

2019年11月 株価89ドル 配当0.62ドル

 

 株価は2014年に80ドルをつけていました。クアルコムは前述のとおり中国での売り上げが大きいです。中国国内での訴訟を抱えたリスク、中国経済の減速リスクが嫌気され2016年初頭まで株価は下落を続けました。その後、訴訟が落ち着き、業績も安定したことから再び高値を奪還してきています。

 

 配当は右肩上がりに増配しており、実に10年で4倍以上になっています。配当利回りは以前は3%半ばでしたが、株価上昇を受けて3%まで下がってきています。

 

 変化の激しいIT業界にあって比較的高配当を実現しています。無駄な部門を持たず、強い部門に特化した高収益体質であることがそれを可能にしています。

クアルコム【QCOM】の基礎データ

ティッカー:QCOM
本社:アメリカ
上場:NASDAQ


 今後中国でのビジネスの方向性や4G以後の通信規格でも強みを持ち続けられるかどうかが、買いか静観かの判断を決定づけそうです。続いて、基礎データを見てみましょう。

クアルコム【QCOM】の売り上げと利益

クアルコム【QCOM】の売り上げと利益

クアルコム【QCOM】の売り上げと利益

 まず、2018年中の大きなニュースとしては、オランダのNXPを440億ドル(約4兆8700億円)で買収する計画がとん挫したことですね。中国独禁当局から承認が得られなかったのが理由です。

 

 これにより、違約金20億ドルをNXPに支払っています。並行して、スマホ利用の長期間化や市場の成熟化もあり、一時期の爆発的な売り上げの伸びはありません。今後、5Gスマホへの切り替え需要が期待されますが、もう少し時間がかかるでしょう。

クアルコム【QCOM】の配当と配当性向

クアルコム【QCOM】の配当と配当性向

クアルコム【QCOM】の配当と配当性向

  もともと高配当銘柄として知られますが、配当性向は毎年切りあがっています。2018年は見栄えを優先して100%としていますが、EPSは赤字ですので、計測不能となります。

クアルコム【QCOM】のBPSとEPS

クアルコム【QCOM】のBPSとEPS

クアルコム【QCOM】のBPSとEPS

 売り上げの漸減に伴う利益の数年にわたる縮小が懸念されるところです。

クアルコム【QCOM】のキャッシュフロー

クアルコム【QCOM】のキャッシュフロー

クアルコム【QCOM】のキャッシュフロー

 キャッシュフローも漸減傾向ですね。

 基本的にはCDMA以来の特許は幅広く、5Gへの継承も期待されるところです。ただし、中国、韓国、台湾、そして米国における特許に伴う訴訟、当局からの指導は不確定な要素としてのしかかりますね。

 

 また、利益構造としてはスマホへの依存度が高いため、それをどう考えるかということにもなります。とはいえ、3G・4Gで築き上げた特許の牙城は固く、5Gへの移行でも重要なプレーヤーであることには変わりありません。

 

 上記のようなリスクを考えると、集中投資ではなく、分散投資が前提となってくる企業のうちの1つと言って良いでしょう。直近決算では、売上・EPSともによく、時間外で5%以上上昇しています。

 

 ただ、中期目線では決算前からすでにやや買われすぎな傾向がみて取れますが、どうでしょうか。

 

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 5G関連銘柄としてまとめた記事です。

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  通信会社2強の一角、ベライゾンです。高配当で知られます。

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  通信会社、もう1つの2強であるAT&Tです。こちらも高配当で知られます。ベライゾンとAT&Tは高配当で有名でしたが、2019年に入り、キャピタルでも大きなリターンを示しています。債券高の流れに乗りましたね。

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