【QRMI】【XRMI】はオプションと現物を組み合わせてインカムを追求するETF
【QRMI】【XRMI】というETFがあります。オプションと現物を組み合わせてインカムを追求するETFです。利回りがおよそ10%にもなったことから、注目されています。
オプションに関しては4つの取引がありました。
- コール(買う権利)の買い
- コール(買う権利)の売り
- プット(売る権利)の買い
- プット(売る権利)の売り
実はこれらは単独で用いられることはあまりありません。【QRMI】【XRMI】のように、ほかの取引と組み合わせて使われることが多いのですね。
「カバードコール」と「プロテクティブプット」
たとえば現物の買いとコールの売りを組み合わせたものは、【QYLD】などで用いられている「カバードコール戦略」と呼ばれるものです。
出典:たぱぞう作
現物株の上昇という恩恵を捨てる代わりに、コールを売ることによって得られるプレミアムを原資に、毎月分配を出しているETFが【QYLD】や【XYLD】です。
最近は個人投資家にも人気がありますね。
このカバードコール戦略には一つ欠点があります。現物がストライクプライスを大きく下回ると、損失が大きくなることです。
実は、この欠点を埋め合わせる戦略があります。
現物とプットの買いで構築する「プロテクティブプット戦略」と呼ばれるものです。
“protective”とは「保護的」という意味です。「プロテクティブプット」は保護的プットということになります。
典:Investopia
図の”Stock Only“が現物の買い、”Put Only”がプットの買いを示します。結果、実践のような損益図になり、損失が限定されるポジションなので、「プロテクティブプット」なのですね。
「カバードコール」と「プロテクティブプット」の両方を使ったETF
GlobalX社が2021年8月25日に設定した2つのETFがあります。
- Global X NASDAQ 100 Risk Managed Income ETF、ティッカー【QRMI】
- Global X S&P 500 Risk Managed Income ETF、ティッカー【XRMI】
この2つは「カバードコール」と「プロテクティブプット」の両方を使ったETFです。
GlobalX社が「リスク・マネージド・インカムETF」と呼ぶこの2つのETFの損益概念図は以下の通りです。
出典: global X社
この損益概念図を実現するポジションは以下の3つで構成されます。
- 株式インデックスを構成する現物
- アット・ザ・マネーのコールの売り
- アウト・オブ・ザ・マネーのプットの買い
これはネット・クレジット・カラー戦略と呼ばれます。つまり、プロテクティブプットで市場の急落から防衛しつつ、カバードコールでプラスのオプション・プレミアム獲得を目指すものです。
「ネット・クレジット・カラー」とも呼ばれます。
コール・オプションの売りで得たプレミアムがプットの購入費用を上回るようにして、投資家へのインカムの原資を作ります。
プットを買っている分だけ、分配の原資であるコールの売りから得られるプレミアムから差し引かれる金額がありますね。
少し難しくなってきたので、【QRMI】、【XRMI】そのものをご紹介しながら、さらに深めますね。
【QRMI】と【XRMI】の概要はこうなっている
ベースとなるインデックスと市場が違うこと以外、特に属性の違いはありません。毎月分配はカバードコールETFと同じですね。
QRMI |
XRMI |
|
---|---|---|
ベースとなるインデックス |
NASDAQ100 |
S&P500 |
市場 |
NASDAQ |
NYSEArca |
設定日 |
2021/8/25 |
2021/8/25 |
経費率 |
0.6% |
0.6% |
分配頻度 |
月次 |
月次 |
出典:GlobalX社websiteよりたぱぞう作
【QRMI】と【XRMI】のチャート
出典:US版 Yahoo Finance
赤が【QRMI】、水色が【XRMI】、紫がS&P500、ピンクがNASDAQ100です。昨年8月に設定されていますから、まだヒストリーが浅いです。
キャピタルの上昇は捨てる戦略ですので、現物との比較はあまり意味がないかもしれませんが、それぞれの原指数とは少し相関が認められますね。
【QRMI】と【XRMI】の分配履歴
左が【QRMI】、右が【XRMI】の設定来の分配履歴です。直近は、どちらもNAVの1%程度を分配しています。NAVとは投資信託の純資産総額のことですね。
現時点ではカバードコール戦略ETFと大差ないですが、年率でおよそ10%の利回りがありますね。
出典:Global X Website
【QRMI】【XRMI】はオンライン大手3社で取り扱いあり
設定されてから日が浅いETFですが、
このETFはSBI証券、楽天証券、マネックス証券等が取り扱っています。
やはり毎月高分配は人気があるということでしょう。
将来にわたり永遠に望むポジションを組めるかという懸念はありますが、リスクを限定しつつインカムを追求するという意味では面白い商品です。
もっとも、ポートフォリオのコアにはしにくいですね。中級者以上の人が、特性を踏まえたうえでサテライトで少し持っておく。そのような付き合い方ならば、オプションの勉強にもなるかもしれませんね。
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