米国株暗黒期を振り返る
米国株は基本的には右肩上がり、株式指数に連動するETFを買っておけば必ず上がる。そういう論調が米国株を扱うブログではよく見られます。かくいう私も基本的にはそう思っています。
しかし、ここまで米国株ブログが増えてきますと違う角度から考えてみたくなります。まず、下のチャートを見てみてください。
2000年4月から2010年4月までのSPYのチャートです。SPYはS&P500をベンチマークにしたETFです。数あるS&P500指数連動ETFでは、最も高い流動性と歴史を誇り、運用総額はおよそ30兆円にもなります。これは世界で運用されるETFの中でトップです。
いわば、米国でもっともメジャーであり、もっとも売買されるETFのうちの1つと言ってよいでしょう。バフェット氏が推挙されているETFでもあります。このS&P500指数でさえも10年間で2度の暴落期、さらには横ばいの取引値という時代があったのですね。
2000年4月から2010年4月、この間まったく株価は成長していません。様々原因はありますが、大きな理由は以下の2点です。
- ITバブルと呼ばれる2000年のハイテク株高の後遺症
- リーマンショックに象徴される金融株高の後遺症
この2点に引きずられたのが2000年代であったと言えます。
ITバブルと呼ばれる2000年のハイテク株高の後遺症
ドットコムバブルとも言われます。appleはもちろん、MicrosoftによるWindows95の登場は直感的に操作しやすい安価なパソコンを消費者に広く届けました。また、同時期にインターネットが誰でも使えるようになりました。
このことにより、特にインターネット発祥の地であるアメリカでは大きなビジネスチャンスが見込まれました。AmazonやGoogle、勢いは削がれましたがAOLやYahoo!などが華々しく起業、上場したのもこのころです。日本はといえば、慶応義塾大学の村井純氏のインターネット関連の本が話題になった時期です。
成長性が期待され、実態は伴いませんでしたが投資家はこぞってこれらの株を買いました。しかし、成長産業の宿命で、玉石混淆が著しく、買われすぎの銘柄が続出しました。
成長株というのは事業の見通しが難しく、何が正解で何が不正解か見抜く必要があります。PERなどの数字から株価を判断するのが難しいです。数字が大きく変わるからです。そのため電卓をはじいて割安、割高というのが成熟株以上に分かりにくいのです。
結果として、実績が出ない企業はたちまち馬脚をあらわし、株価は暴落しました。特に大きな影響を受けたのがNASDAQです。ちなみにNasdaq指数は2000年ITバブルの高値を更新するのに15年を要しています。
このチャートはNasdaq100連動ETFであるQQQのチャートです。SPY以上に悲惨なチャートであることが確認できます。2010年でも2000年時点での高値の約半分ほどです。このころにはQQQが買いであるということは今ほどには言われていませんでした。
投資家の脳裏にはITバブルの痛手が焼き付いていたのです。しかし、今はどうでしょうか。ETFならばQQQを組み込みたい。そう思う投資家さんは大勢います。Nasdaqとはそういう市場です。
リーマンショックに象徴される金融株高の後遺症
もう一つ2000年代に低迷せざるを得なかった理由があります。リーマンショックです。100年に一度の大暴落と言われますが、実際にはもっと頻回で起きるのではないでしょうか。個人的にはそう思っています。
リーマンショックはハイテク株が総崩れになったあと、金融株を中心に起きたバブルです。要は実態のないものを証券化などリスク回避をしたように見せかけ、積極融資をしたという流れです。
銀行が中心となって不動産始めとする担保物件への過度の貸付、株高を招いたという意味では日本の1989年のバブルに似てなくもありません。両社に共通するのは、銀行を始めとする金融機関の信用創造術です。
結果として、サブプライムローンなどのいくつかの信用創造が破たんし、急速に資金が引き上げられました。いくつかの金融機関はつぶれ、あるいは救済合併されるということになりました。
つぶれた企業では、ユダヤ系投資会社のリーマンブラザーズが最も有名です。救済されたではバンクオブアメリカにメリルリンチ証券、ウェルズファーゴのワコビアといったところが話題になりました。バンクオブアメリカはしばらくメリルリンチの負の遺産に苦しみ、ウェルズファーゴは地銀レベルを超越する飛躍の買い物になりました。
リーマンショックが不幸中の幸いだったのは、日本のバブルという身近な前例があったため、法整備や資金注入も含めて迅速な対応が可能だったことです。これらの対応が功を奏し、米国発のリセッションだったにも関わらず、米国が最も早く景気回復を果たしています。
余波はスペイン、イタリア、ギリシアなどの南欧や日本のほうがよほど大きかったと言えます。こちらはMSCI JAPANのチャートです。2003年と2009年の落ち込みが際立っています。
それでも米国株を私は選ぶ
株式はやはり危険なのでしょうか。資産運用先としては適さないのでしょうか。私は、それでも運用先として最善であると考えます。とはいえ、ご紹介したようなリスクはどうしてもあります。ですから、同時に株式以外の資産への分散投資というのは非常に有効だと思っています。
資産額が大きくなるほど、変化に富んだアセットアロケーションが大事になってきます。
好調な時というのはリスクを大きくとりがちです。QQQを含めてナスダック銘柄がこれだけもてはやされるのは、直近10年の実績が際立っているからです。しかし、それ以前の10年ではそのような評価ではありませんでした。
直近の10年は直後の10年を保証するものではありません。過去は未来を担保しないのです。退場しない分散投資術をリスクオンの今だからこそ意識していたいですね。
それでも私は米国株を選びます。いや、分散という意味では米国株「も」選ぶ、かもしれませんね。いずれにせよ、米国株投資が株式投資には外せない存在であることは間違いありません。
関連記事です
世界経済という意味ではまだまだ成長余地を感じさせる人口統計です。
日本の物価は世界との比較で安く感じられるようになり始めています。私たちが東南アジアを旅行した時に感じる感覚が、海外の人には同様に感じられる。そんな国もあるということです。
資産は1000万円を超えると急激に金額が大きくなるように思います。やはり種銭は大事です。スケールメリットですね。