グローバリズム以後、アメリカ帝国の失墜と日本の運命
今をときめくフランス人であるエマニュエル・トッド氏は歴史人口学者であり、文化人類学者です。そのエマニュエル・トッド氏へのインタビューをまとめた本です。その豊富な知識と提案性ある社会分析は刺激的で示唆に富んでおり、私たちが海外株投資をするにあたって読んでおきたい本と言えます。
読み応えがあるインタビューは
- 夢の時代の終わり
- 暴力・分断・ニヒリズム
の2つで、この2本のインタビューで100ページ近く割かれています。

グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命 (朝日新書)
- 作者: エマニュエル・トッド
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/10/13
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (6件) を見る
世界的地位が低下しつつある先進国、勃興する中国、高齢化
EUやアメリカ、つまり先進諸国が共通の理想としてきたグローバリズムの限界を説明しています。もう少し言うと、アメリカの主流派、イギリスによるアングロサクソンの理想の限界でしょうか。
昨年のイギリスのEU離脱に関わる投票、ブレグジットやメキシコに壁を作ることを主張したトランプ大統領とサンダース候補の主張の内容などは、その限界を肯定するものと言えるでしょう。ソ連崩壊後の共通的理想だったグローバリズムの転換点となりそうです。
また、東アジアについても悲観的です。中国は国全体が豊かになる前に人口ボーナスによる成長を終えることが不幸だとしています。「次第に不安定になっていく国」と中国を表現しているところは言い得て妙だと思います。
中国で先ごろまで実施されていた一人っ子政策と、経済的成長が高齢化社会と無縁ではありません。今後猛スピードで高齢化社会の進展を招きます。2050年には世界でもトップレベルの高齢化社会になることが予想されています。高齢化の進展は韓国も同じです。
また、日本については政治的にも経済的にも安定しているものの、「安定しているが、老いつつある国」としています。世界において核兵器が依然として力の均衡に大きく作用していることから、日本に「核武装」を勧めています。
朝日新聞という媒体がこういう主張を取り上げたところに面白味を感じます。インタビュアーの戸惑いが感じられ、そのくだりもなかなかです。
グローバル化というエリート層の理想についていけない現実的な大衆
エスタブリッシュメントあるいは、エリート層の理想郷はグローバリズムでした。しかし、結果として移民による仕事のパイの奪い合い、低賃金、宗教的断絶を招いています。
異なる文化を持った者同士、お互いに立場を理解し、尊重し合い、世界が融和するというのがグローバリズムの理想だったわけです。しかし、経済的、宗教的な格差となって表れています。大衆はその不満を選挙、投票、最悪のケースではテロなどの反社会的行動という形で表現しています。
移民の多いドイツ、フランス、イギリスなどでそれはずいぶん早くから顕著でしたが、もともと移民の国であるアメリカでさえ断絶がおきつつあることが先の大統領選挙で証明されました。
エマニュエル・トッド氏はアメリカの混乱を壮年期の白人の死亡率が上がっていることに関連して説明しています。つまり、死亡率の向上は麻薬、アルコールの過剰摂取といった、社会的ストレスや貧困からくる負の行動面が表れているということです。
従来、アメリカにおける白人は優位な立場にありましたが、グローバリズムという名の実力主義のもと、変容しつつあるということです。
ドイツは気が付けばヨーロッパ有数の移民大国です。しかし、「ドイツは欧州の管理をすることができない。あまりに自己中心的なのです。ドイツは帝国の建設には才能がない。」としています。
同郷人であるフランス人から批判をされると言いつつ、フランス人らしい発想と思想
エマニュエル・トッド氏はやはりフランス人で、個が光りつつもその思想の奥底にはフランス的な自由主義が感じられます。イギリスやアメリカ、つまりアングロサクソンが個、あるいは世代による断絶が当然に行われるのに対し、やはりフランスの発想というのは連続性が強いように思います。
それがどことなく私たち日本人の思想、文化に似たところがあり、エマニュエル・トッド氏の主張が日本人にうける理由の一つではないでしょうか。私たち日本人もやはり連続性や組織性というのが強い民族なのでしょう。
関連記事です。日本、中国、韓国は同じような高齢化のジレンマを抱えています。
移民大国ランキングです。日本は28位です。
2017年の新書大賞2位になりました。1位は新潮新書、橘玲氏の「言ってはいけない」でした。新書は安くてしかも分かりやすく平易に書いてあるのでコスパが本当に高いです。