ジェレミー・シーゲル氏のシーゲル流の投資術とは
ジェレミー・シーゲル氏の名著「株式投資の未来」は豊富なデータから導き出される結論が明快です。かくいう私もシーゲル氏の著作は読んでいますし、大きな影響を受けています。
かつての持ち株の多くはインカムを狙ったものでしたし、時機も良かったのでその恩恵も大きく受けることができました。
シーゲル氏の主張する投資術とは、極めて簡単に言うと以下のようになります。
- アルトリアやエクソンのような、成熟したビジネスモデルの会社の株を買う
- 成熟したビジネスモデルはタバコ株のように割安水準に置かれているとなおよい
- 受け取る配当金はそのまま再投資し、複利効果を狙う
- 成長株は割高であることが多い。これを「成長の罠」という。
このような主張です。米国株でよくみられる連続増配銘柄の多くはシーゲル氏のいうところの成熟株ですね。配当というインカムは不景気でもある程度計算できます。半面、成長株は不景気になるとたちまち値崩れします。
リーマンショック時に増配銘柄の多くが減配しなかったこと。成長株の多くが半値以下になったこと。こうした禍々しい記憶もあいまって広く支持される考え方、それがシーゲル流投資術ですね。
さて、今回はシーゲル流投資術に関してご質問をいただいていますので、ご紹介します。
ジェレミー・シーゲル著の「株式投資の未来」の影響
たぱぞう様
はじめまして。いつも楽しく読ませていただいてます。たぱぞう様のブログや様々な米国株ブログや書籍を読み、私も米国株投資を始めたいと思いました。
現在20代半ばで、数年後に今よりも収入源を増やしたいと思い、またジェレミー・シーゲル著の「株式投資の未来」の影響を受け、VZなど高配当株を中心に投資10社ほどに分散投資していきたいと考えています。そこでたぱぞう様に2つ質問があります。
- ここ数年配当性向が高くなってきた高配当株、TやPMに対してこれから新たに投資していくべきかどうか?
- インカムゲインを目的とした高配当株投資の引き際はどこか?
①について90%近くまで上がっており、またそろそろ米国経済も二番底が来るのではないかと言われております。
こういった配当性向が高い会社はフリーキャッシュフローが潤沢とはいえ、高配当株の減配の様子を見ていると今後も配当が続くのか不安になり、数年後のインカムゲイン目当てのポートフォリオに入れてよいか迷います。
②について
こちらも先日の減配株の様子を見ていると、減配当が発表されてから動いたのでは遅いと感じます。以前たぱぞう様の記事「米国高配当株の売り時」では「自分なりに逃げ時を見つけておく」とありましたが、それの見つけ方がわからないです。
配当性向90%以上が○年続いたら引く、減配してもその後に復活することもあるのでずっと持ち続けるなど、もしたぱぞう様なりの逃げ時の見方や対応があれば教えていただけないでしょうか?長くなりましたがよろしくおねがいします。
ジェレミー・シーゲル流の投資術で押さえておきたいこと
まず、配当性向が高まってきたら逃げるというのは鉄則です。しかし、少し前のRDSやTの例を見てもわかるように、予兆こそあれ基本的に減配や暴落は突然にやってきます。決算書などを熟読しても、100%それを防ぐのは無理と言って良いでしょう。
そもそも、財務諸表が読めれば株式売買が成功するということであれば、世間の会計に強い人たちはみんな株式で億万長者になっているのです。売買するのが人間である以上、多分に情緒的で非論理的な部分があるから面白いし、難しいのですね。
とはいえ、売り上げが落ちてきたり、営業利益率が下がってきたり、営業キャッシュフローが出にくくなっていたりといった明らかな兆候は掴んでおいたほうがいいですね。
高配当株、たとえば通信株、たばこ株、これらは配当あっての銘柄ですから特に気を付けたいところです。
シーゲル流投資術で最も大事にしたいことは「分散」です。分散さえしていれば、1つの株がダメになっても、相場で生き残ることは可能です。そう考えると少なくとも10~20銘柄は分散させたいですね。管理できるならばもう少し銘柄が多くても良いでしょう。
フィリップモリス【PM】やアルトリア【MO】の一時期の株高はアイコスの好調さを受けたものでしたが、その後急速に株価が萎みました。電子タバコというのも大きなイノベーションでした。同時にシェアの変動を引き起こしています。紙よりも利益率が低いことを含めて、どう考えるかということですね。
個人的には、高配当投資を志向するならばシーゲル氏のエッセンスを盛り込みつつ、VYMやHDVなどのETFで再投資をする。これが誰でもできる投資術ということで手軽で良いと思っています。ダメになった銘柄も自動で入れ替えてくれますからね。ただし、これらの高配当株ETFは微妙にトレンドを外した銘柄群になりますから、キャピタルは目をつぶる展開になります。
かつて盤石に思えたGEの例というのは非常に多くの示唆を与えてくれました。GEは最近まで唯一のダウ30種始まって以来の銘柄だったのですね。逆に言うと、今はもうダウ30種始まって以来残っている銘柄が1つも残っていないということです。
これは、永続する会社がほとんどない1つの証左だと私は思っています。

- 作者: ジェレミー・シーゲル,瑞穂のりこ
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2005/11/23
- メディア: 単行本
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名著と名高いシーゲル氏の著作です。米国株投資に関しては必読書ですね。
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配当再投資をするのに適したETFとして以下の3つを上げておきます。最後のVTIは利回りは低いですが、キャピタルがある程度期待できるETFとなりますね。
米国高配当株式ETF【VYM】です。
トータルストックETFであるVTIです。