セクター分散投資は果たして有効か
セクター分散投資という言葉があります。株式には生活必需品やハイテク、ヘルスケア、公益株など様々なセクターがあります。1つのセクターに絞るよりも、様々なセクターに分散をしたほうがリスク分散がされるとされています。
米国株の場合はセクターがおおよそ10ぐらいに分けられています。それぞれのセクターから1社を選ぶと10社程度、2社を選ぶと20社に分散ができるというわけですね。
個別株投資だとこのセクターを意識して分けるというのはある程度は有効です。例えばハイテクがダメでキャピタルが期待できない場合に、公益のインカムでカバーする、というようなことです。
ただし、実際にはなかなか難しいことです。まず、ハイテクを選ぶ人が公益を買うとはまれに思います。また、ハイテクを選ぶにしても成長性の乏しい、割安な枯れたハイテク企業を選ぶとせっかくの成長の果実が停滞するということにもなりかねません。
つまりは個別株リスクから逃れようがないということです。
さらに言うと、株式のリスクを本当に下げようと思ったらアセットそのものを分散させたほうが値動きの幅は抑えられます。例えば、債券やゴールドなどがその代表格ということになるでしょう。
今回はこのセクター分散投資についてご質問を頂いています。
セクター分散の考え方はどのような考え方でしょうか
たぱぞう様
先日、ドル転についてご相談をさせて頂いたNです。その節はありがとうございました。また、お気遣いのメールありがとうございました。
今回相談させて頂きたい内容は、先日のブログネタでも取り上げていた、米個別株の分散投資についてです。
失礼と思いましたが、たぱぞう様のポートフォリオ(2017.06.06)をセクター別に現在の時価で見てみました。
結果、
- タバコ:14.39%(PM.BTI)
- 米国生活必需品:13.13%(PEP.PG)
- 米国ヘルスケア:24.64%(JNJ,GSK)
- 公益:22.82%(NGG.SO.D.BHP)
- 電気通信:14.24%(T.VZ)
- 金融:4.85%(WBK)
- エネルギー:5.74%(XOM.RDSB)
15銘柄・7セクターでした。私のポートフォリオをセクター別に見ると
- タバコ:53.84%(MO.BTI)
- 公益:26.7%(D)
- 電気通信:3.39%(T)
- 金融:16.06%(WBK)
始めたばかりで、5銘柄・4セクターしかありません。どうしても値下がりしている高配当銘柄ばかりを買ってしまい、さらに下がり、資産額を下げています。
平均回帰性を信じて、退場しないように勉強して分散投資をしていきたいと思っています。たぱぞう様は、
1、個別銘柄・セクターの分散割合をどのように決めているのですか?
※お答えだけ先にします。
10セクターならば、そのまま1から2銘柄ずつというのがセオリーになります。個人的には2銘柄にしたいですね。1銘柄だと外したら大きいです。例えば、ハイテクでIBMを選ぶと、非常に厳しいリターンになります。
2、銘柄選定はどのようにしているのですか?
基本は売り上げが落ちていない、営業利益率が高い(20%以上だと望ましい)、FCFが潤沢で伸びているとなおよい、ROEが高い、何よりビジネスモデルが良い、こういうことになりますね。ただ、逆張り要素だとチャートが大きな動機になります。
3、逆張りと記憶していますが、買い時をどのように決めているのですか?
事前に決めておいたサポートラインに到達したらですね。刺さらないことも多々あります。最近ちょこっと書いていますが、ああいうラインを自分で決めています。
お答えできる範囲で結構ですので、教えていただければ幸いです。
セクターに期待をし、セクターに裏切られたとも言えます。
懐かしいポートフォリオですね。今はすべて売り切っています。今まで持っていれば、相場変動による下げをそれなりに被弾していたと思われます。ぎりぎりのところで回避できたわけですが、反省を踏まえて振り返ってみます。
実は私は2016年ごろからディフェンシブさを大切にしつつ、その都度ファンダメンタルズで見て安いものを買っていました。それ以前の古いもののほとんどはリーマンショック後やギリシアショック、あるいはチャイナショック後に買ったものです。
古いものでリスクをとって大きく買っていたのはバンクオブアメリカです。実はちょこちょこせずに、これを持ち続けていたほうが大きく取れました。
逆張りで代表的なものはRDS.Bです。当時は、原油安であり、大きく下げていたところで逆張り的に買ったということです。BHPもそうです。チャイナショックに伴う鉄鋼需要の冷え込みと、その反転を狙って買ったということです。
WBKはオーストラリア経済との連動性が高く、オーストラリア経済と中国経済も密接です。オーストラリアは30年近く経済成長を続けている稀有な国で、その銀行株も手堅いと考えました。そのため、これもチャイナショック時に逆張り的に買っていました。
しかし、鉄鋼とWBKはそのまま中国経済の復活とともに反騰しましたが、原油は危なかったですね。正直に告白すると、違和感はあったもののシェールオイルがここまで市況に永続的に影響するとは思っていませんでした。
結果としては中期で反騰したので助かりました。しかし、シェールオイルが減産されないと、過去のような強さは地政学的なリスクにともなう上昇以外はなさそうです。中国経済にしても2018年のだだ下がりは読めず、WBKも再び下がっています。
また、たばこも危なかったですね。電子タバコが消費者の嗜好を代える、つまりシェア変動を起こすとは読んでいませんでした。JUULの影響というのは小さくないですね。
原油生産やタバコといった成熟産業でさえ、ストーリーが変わったというのは実は大きな変革だったように思います。
過去の決算や市況を見て判断するのですが、結局株式相場全体が下げている時に買ったものは利が乗るという身も蓋も無い結果でしたね。再び全体が下げたら、それらの銘柄もまた下げています。売られすぎと判断した銘柄は確かに反騰したけれど、描いたストーリーがぴしゃっと当たったわけではなかったということです。
公益やハイテクはちょっと異質ですが、基本的には全体が下げるときは下げ、上がるときは上がるのが株です。そのため、セクター分散もある程度は有効ですが、株という大きなくくりでは似たような動きをします。
オフェンシブならば米国が強みを持つ産業であるハイテク・金融を入れ込むのは当然の選択でしょう。ディフェンシブなら公益からの生活必需品、ヘルスケアなどが視野に入ります。しかし、その銘柄選定は難しく、個別株リスクは付きものです。
関連して2つ目のご質問を紹介します。
セクター分散投資をしないとするならば、どのようなETFを買いますか
初めまして・・・最近このサイトを知り興味深く読ませていただいています。
世界的な調整局面でもう少し下がればハンセン指数や米国のETFに投資したいと思っているのですが、たぱぞうさんは、もうひと下がりした時にはどのような株やETFなどに投資しようと思われていますか?よろしければ教えてください。
個別株は楽しいけれど・・・
個別株はそれぞれにストーリーがあるので楽しいですね。ただ、私の場合は大きなミスをしています。それはITバブルやリーマンショックの印象が強すぎて、枯れた産業の売られすぎ銘柄に目線が行き過ぎていたということです。
そういう意味では、ETFというのは自分の経験だけでない目線で銘柄を選んでくれます。VTIとBNDを組み合わせてリスク管理していくというのが、この数年来の私の考えるベストな方法です。
コツコツとVTIを買い、BNDやキャッシュでリスク管理をしていく。これが万人にお勧めできる方法ですね。これはブログ開設時からブレないところです。ご質問ありがとうございました。
関連記事です。
ちょっと古い記事ですが、バンガードのセクターの分類ですね。今は若干の入れ替えがありましたが、考え方として参考になります。
こちらはブラックロックのセクターです。こちらも若干入れ替えがありました。考え方としては大筋は変わりません。
成長産業であるIT系は過熱感から下がりましたが、それでも組み入れるべきセクターであることには変わりません。