たぱぞうの米国株投資

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マイクロソフト【MSFT】の銘柄分析。サブスクリプション化とazureが大成功

マイクロソフト【MSFT】その栄光の歴史と飛躍の現在

 マイクロソフトは有名なビル・ゲイツ氏とポール・アレン氏によって1975年に設立されたソフトウェア会社です。

 

 もともと中学、高校の同級生だった2人は高校時代に起業し、交通量計測システムを州政府に納入するなど、高校生離れしたプログラムに長けた学生でした。その後、ビル・ゲイツ氏はハーバード大へ進学し、ポール・アレン氏はワシントン州立大へ進学、それぞれ中退します。2人とも卒業はしていません。

 

 ハネウエル社で勤務していたポール・アレン氏が大学生だったビル・ゲイツ氏を誘ってできた会社がマイクロソフト【MSFT】です。

 

 マイクロソフト【MSFT】が大きく伸長するきっかけはIBMパソコンでした。1980年、アップルが先行していたパーソナルコンピュータ業界にコンピュータ業界の巨人であるIBMが参入します。

 

 IBMはパソコンの開発期間が限られてたため、OSを自社開発せず、外注します。そのときに採用したのがのちのMS-DOSの原型であるPC-DOSと呼ばれるOSでした。

 

 もっとも、そのDOSもマイクロソフトが他社から安価(約5万ドル)でライセンスを買い取ったもので、安価すぎるとのちに訴訟になっています。

 

 MS-DOSはパソコンOSの先駆けとして大きくシェアを獲得します。しかし、その限界も見えていました。その限界の一番の理由は、文字ベースのOSであるというところです。直接文字でプログラムを指定して動かすコマンドラインのやり方は、ある程度コンピュータに興味や造詣がないと親しみにくかったのです。

 

 しかし、今のようなアイコンとマウスを用いたグラフィカルなOSは当時すでに登場しており、マイクロソフトもそういったOSの開発が急がれるところでした。このとき、アップルからライセンスを獲得しようと交渉したり、アップルのサードパーティとしてワードやエクセルを開発しています。

 

 その後自社のグラフィカルなOSとしてWindowsシリーズをリリースします。大きく飛躍したのがウインドウズ3.1、それに続くWindows95です。これにより、パソコンが誰でも使える、家電のような存在になったと言えるでしょう。

 

 その親しみやすさからOS分野で圧倒的なシェアを持ち、文字通り世界標準としてOS業界に君臨します。そして、その流れはWindows登場から20年以上たった今でも続いています。

 

 また、OSの世界標準であるWindowsシリーズで走るワードやエクセルもビジネスソフト界で大きなシェアを持ちます。その後グーグルやアップルに追われる立場となり、インターネットブラウザなどではシェアを奪われていますが、マイクロソフトは依然ソフトウェア業界の巨人であることには変わりありません。

 マイクロソフト【MSFT】の基礎データ

ティッカー:MSFT
本社:アメリカ
上場:NASDAQ

 ちなみに、マイクロソフト【MSFT】はナスダックのダウ平均採用銘柄です。ナスダック銘柄は原則4文字、NYSEは原則3文字です。このごろはこの限りではありませんけどね。

 

 マイクロソフトは圧倒的強みを持つOSであるウインドウズをはじめ、ワードやエクセルなどビジネスソフトなどのパソコン事業に軸足を置いていました。パソコン出荷が落ち込む中、事業の見直しが迫られていました。

 

 しかし、クラウド事業への参入が大変上手くいっており、サブスクリプション化含めて見事に業績は復活しましたね。この5年の変容は特に著しいです。

マイクロソフト【MSFT】の配当とチャート

マイクロソフトの配当と株価チャート

マイクロソフトの配当と株価チャート
  • 2006年 8月 株価26ドル 配当0.09ドル
  • 2016年 5月 株価53ドル 配当0.36ドル
  • 2017年 8月 株価83ドル 配当0.39ドル
  • 2019年 5月 株価123ドル配当0.46ドル
  • 2020年 7月 株価211ドル配当0.51ドル

  2006年といえば、ビル・ゲイツ氏が2年後に引退すると発表した年です。その後も順調に株価は上がり続けています。ゲイツ氏後任のスティーブ・バルマー氏は賛否ありましたが、黎明期からの功労者です。現任のサティア・ナデラ氏はインド出身で、見事に業績向上をさせました。大復活と言ってよいでしょう。

 

 創業者からの世代交代はどの会社も頭を悩ませるところですが、マイクロソフト社の場合は比較的それがスムーズに、そして上手くいっている会社ということになります。

 

 株価はこの10年で10倍近く、配当は5倍になっています。かつては増配率に着目された株でしたが、配当利回りは下がっています。これだけ株価が上がると当然ですね。 

マイクロソフト【MSFT】の配当と配当性向

マイクロソフト【MSFT】の配当と配当性向

マイクロソフト【MSFT】の配当と配当性向

 見事な増配歴が見て取れます。シスコシステムズもそうですが、かつての成長株が成熟株に転じたときは割と早いペースで増配をし、高配当化する傾向にあります。が、マイクロソフトの場合は業績の伸びが素晴らしく、株価も高騰しました。

 

 そのため、再び低配当利回り化するという珍しい過程を経ていますね。増配ペースは順調ですが、同時に配当性向も上昇しています。配当目当ての株ではなくなりましたね。かつては高配当ETF【VYM】の組み入れトップでした。

マイクロソフト【MSFT】のBPSとEPS

マイクロソフト【MSFT】のBPSとEPS

マイクロソフト【MSFT】のBPSとEPS

 1株資本と1株利益です。マイクロソフト【MSFT】は自社株買いに比較的熱心な企業です。この10年でおよそ1割の自社株買いをしており、それに伴いBPSは倍以上になりました。

 

 EPSはやや物足りないですが、業績は悪くないので今後も期待したいところです。

マイクロソフト【MSFT】の売り上げと利益

 マイクロソフト【MSFT】は10年前までは営業利益率が40%近くある驚異的な高収益企業でした。

マイクロソフト【MSFT】の売り上げと利益

マイクロソフト【MSFT】の売り上げと利益

 その後2010年代に入ってやや低下したものの、依然として高い営業利益率を保っています。2019年の決算では40%台の回復が確認されました。先行投資してきたクラウドサービスが収益化されてきています。

 

 売り上げは1.5倍になりましたが、営業利益が伸びないのが難点でした。しかし、近年の経営改革により業績の改善が鮮明ですね。

 

 サーバーOSなどではLinuxというライバルがあり、実際シェアもそこまで高くありません。また、モバイルではアンドロイド、iOS、ブラウザではクロームなど様々なライバルが存在します。

 

 とはいえ、職場においてパソコンを上回る入力装置はほかになく、スマホやタブレットが全盛とはいえWindowsの牙城は揺るがないでしょう。

 

 また、オフィスシリーズに代表されるビジネスソフトは殆ど企業間の共通言語化しており、欠かせない存在です。利用者は全世界で10億人を超えます。これらアプリケーションのサブスクリプション化が業績に貢献しています。

 

 また、近年ではクラウドのMicrosoft Azureが売り上げを驚異的に伸ばしています。直近決算でも50%近い成長率が確認されましたね。

全ての分野において成長をしているMSFT

全ての分野において成長をしているMSFT

 売り上げや営業利益はアップルの半分程度ですが、圧倒的なワイドモート企業であり、それは数年で揺らぐものではありません。

マイクロソフト【MSFT】のキャッシュフロー

 この10年でジワジワ投資CFが増え続けているのが一目で分かります。

マイクロソフト【MSFT】のキャッシュフロー

マイクロソフト【MSFT】のキャッシュフロー

 マイクロソフト【MSFT】が今最も力を注いでいる分野の1つがクラウド分野(Azure)です。実際に業界2位のベンダーになっており、新たな収益の柱に育ちつつあります。1位はAmazonです。

 

 また、Googleなどの他の強力なライバルも控えており、この分野での競争の激しさを物語っています。しばらく投資CFは増加傾向かもしれませんが、業界におけるクラウドの重要度を考えると妥当な投資と言えるでしょう。

 

 変化の激しいIT分野において、見事に時流にキャッチアップしている企業の1つといってよいですね。

 

 注目の直近の2020年6月期通期決算は、市場予想を上回るものでした。

 

 マイクロソフトは6月で決算月となっています。通期としては、売上高は前期比14%増の1430億1500万ドル、純利益は同13%増の442億8100万ドルでした。

 

 一方の四半期としては、売り上げが355億ドルの見通しに対して380億ドル、EPSは見通し予想1.36ドルに対して1.46ドルでした。

 

 注目のクラウド部門、azureを含むクラウドプラットフォームは売り上げが47%と規模を考えると好調でした。しかし、期待値も高く減速と解釈する向きもあります。特に前期の59%からの下落、コロナ特需を入れての数字ということで今後の見通しにやや弱気というところです。

 

 Office 365やリンクトインを含む部門は6%増、ゲーム部門は13億ドル(64%)の成長を記録し、Xboxハードウェアの収益は49%急増と目を引くものになっています。ただし、全体からすると割合は限られています。

 

 Microsoftはクラウドプラットフォームで評価される企業になりましたね。実際、売り上げ成長率の低下を嫌気してアフターではやや弱い展開になっています。

 

 株価に関しては、Amazonなどと同じく年始から急速に割安感を消しており、目先の達成感があります。個人的に想定していた妥当株価も±10%のレンジに入ってきており、決算を踏まえて再評価を検討する時期ですね。

 

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  ハイテク系ということでシスコシステムズ【CSCO】も高配当で有名です。ただし、伝統的にLAN/WANの通信機器は特許で固めつつも比較的後発企業が善戦しやすい分野でもあります。Microsoftほどの強みは無いでしょう。

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  バンガードの高配当株式ETFであるVYMはマイクロソフトを組み入れ上位に据えていました。今となっては信じられないですね。

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  そのVYMの比較記事です。よく並び称されるHDVとの違いについて言及した記事です。選択肢が複数あるのが米国ETFの魅力の1つと言ってよいでしょう。

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