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ロシアETF【ERUS】はロシアに丸ごと投資するETF

iシェアーズ MSCI ロシアETF【ERUS】でロシアに投資する

 ロシアは資源国であり、新興国です。広大な国土を持ち、ヨーロッパ文化圏に位置しながら、アジアでもあるという側面を持ちます。これは、東への領土拡張に熱心だったからです。

 

 かつてはアラスカもロシア領でしたが、安価で米国に売却しています。これはロシアの歴史上最も大きな失策の1つと言われています。ただ、そのころは石油の価値や戦略上の重要性は気づかれていませんでした。

 

 新興国というくくりではありますが、いくつか注意が必要です。

  • 人口減少国であること
  • 石油を中心とする資源国であること
  • 独特の政情があること

 この3つです。新興国というと、人口が増加しており、労働人口数も増えているというイメージをしがちです。しかし、ロシアはすでに高齢化を迎えつつあり、人口面での魅力ある市場ではありません。

 

 また、産業は石油を中心とする資源産業が強く、それ以外の分野で世界的に強い企業というのは限られます。

 

 加えて、プーチン大統領を中心とする独特の政治体制です。米国を中心とする西側とは政治の方向性が異なることが多いです。近年では2014年のウクライナ問題、シリア内戦への介入などで、その独自性を改めて確認する結果となりました。旧ソ連ほどの対立軸ではないにしろ、今後もそのような立ち位置が続くのでしょう。

 

 これらの理由からロシア企業は割安水準に置かれることが多く、ETFも常に割安です。配当利回りやPERが信じられないぐらいに安い水準に置かれることも多いです。割安だから良い買い物、というわけではないことを教えてくれる存在とも言えます。

 

 特に政情を理由とした株価の下落はよく起きており、私が最後に逆張り取引したのもこのロシアETF【ERUS】です。ボラティリティに魅力を覚える人は、押さえておいても良いETFの1つかもしれませんね。

ロシアの人口推移

 ロシアの人口推移です。

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https://www.populationpyramid.net/

 日本ほどではありませんが、より早い時期である1990年代から急速に減少し始めます。ソ連崩壊に伴う、死亡率の増加、出生率の低下は深刻なものでした。2050年時点で1億3000万人を割り込むことが予想されます。2100年には1億2000万人割れです。

 

 現在すでにシベリアなど地方における過疎化問題は大きな課題になっています。ヨーロッパ先進国のように経済的に弱い地域からの移民を期待するような、経済的な強みもありません。

 

 主にCIS諸国からの移民流入大国ですが、同時にロシア自体が移民流出側の国です。特に、高所得層・高知識層における流出が見られます。CIS諸国からは低賃金労働者が流入し、高所得層はモスクワなどの国内の中央ロシアへ集中しつつ、西側の豊かな国へも流出するという構図になっています。

 

 とはいえ、人口1億人超えの大国であることには変わりなく、市場規模は小さくありません。

ロシアの名目GDP

 次にロシアの名目GDPです。アメリカ、日本との比較です。ソースはGoogle、元は世界銀行です。

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 ロシアは大きな社会変革がありましたので、2000年代に大きく経済成長をしました。しかし、その後は伸び悩んでいます。そのころの効率的な資本経済化への脱却、成功へのシナリオというのは落ち着きつつあり、期待値がはがれたと言っても良いでしょう。

 

 将来的な伸びも他の新興国と比較するとさほど期待されておらず、国全体を期待して買うというよりは、個別株、あるいは政情や資源価格の動態を読んで買うということになります。

iシェアーズ MSCI ロシアETF【ERUS】の配当とチャート

 次に、配当とチャートです。

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 2014年末の暴落はウクライナ侵攻・原油安によるものです。西側諸国の経済制裁を懸念し、売り込まれました。22ドル近辺まで下がりました。

 

 2016年初頭の底値はチャイナショックによるものです。このときには新興国全般が売り込まれました。新興国ETFであるVWOも30ドル前半まで売られました。ERUSも再び20ドル前半まで売られました。

 

 ちなみに、2016年初頭から2018年7月までのリターンは60%近くあり、45%のリターンであるS&P500を上回ります。現在の配当は3%半ばですが、暴落時には6%以上になることもあります。

 

 私は2014年の暴落時に買いました。12月でしたので、買ってすぐに配当も出て非常に良い思いをしました。すぐに売ってしまいましたけどね。

 

 ただし、配当込でも2010年からの設定来で-2%の運用となっているのは注意が必要です。VTIなどのように、買い持ちしておけば長期右肩上がり、というETFではありません。

ロシアETF【ERUS】の構成銘柄

 次に構成銘柄を見てみましょう。

  ティッカー 銘柄名 (%) 業種
1 LKOH PJSC LUKOIL 14.35 エネルギー
2 SBER SBERBANK OF RUSSIA OJSC 14.01 金融
3 GAZP GAZPROM 11.19 エネルギー
4 NVTK PAO NOVATEK GDR 5.05 エネルギー
5 GMKN GMK NORILSKIY NIKEL 4.76 素材
6 TATN OAO TATNEFT 4.64 エネルギー
7 MGNT PJSC MAGNIT GDR 4.04 生活必需品
8 MBT MOBILE TELESYSTEMS 3.33 電気通信
9 SBER SBERBANK 3.32 金融
10 ALRS ALROSA CO. LTD. 3.31 素材

1位 ルクオイル

 ロシア最大の石油企業です。ロシア新興企業群である、いわゆるオリガルヒの代表企業と言えます。米国のベティ・オイルを買収した関係で、米国でも事業展開しています。

2位 ズベルバンク

 ロシア貯蓄銀行です。先進国における銀行業務は低金利や資金調達方法の多様化も相まって成熟産業になっていますが、新興国においては非常に重要な役割を担い、成長産業でもあります。

 ルーツはニコライ1世のズベル金庫にあり、名実ともにロシアきっての名門銀行です。

3位 ガスプロム

 ロシア最大の企業です。旧ソ連ガス工業省管理下の企業がルーツになっています。かつてはロシアの税収の四分の一も占めており、圧倒的でした。現在もロシアで最大の納税企業です。

 天然ガス生産に強みを持ち、全世界の天然ガス生産の2割程度を占めると言われています。

4位 ノヴァテク

 ガスプロムに次いでロシア2位の天然ガス生産を誇ります。

 

 見ての通り、ロシアETF【ERUS】有力企業は殆ど石油・天然ガス企業が占めます。

ロシアETF【ERUS】のまとめ

 2000年代はロシアの資本主義が大変に期待されました。しかし、今はその期待値も落ち着き、実態に伴った値動きをしています。経済的には殆ど停滞というところであり、長期で保有するにはよほどの確信が無いと厳しいでしょう。

 

 とはいえ、新興国特有の値動きがあり、それが魅力ということならば押さえておいてよい銘柄です。個人的には最後の逆張り売買銘柄だったということで、思い出深いです。

 

 日本でも東証上場でロシア関連銘柄は買えますが、指数への連動性という意味ではお話になりません。世界情勢を踏まえた各国ETF売買という意味でもERUSは面白みのある銘柄です。

 

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