セゾン投信社長、中野晴啓氏の主張が読める
預金バカというのはかなりのあおりタイトルですが、書かれている内容は硬質かつ分かりやすい主張です。
預金から投資へという言葉が聞かれて久しいですが、本書を読めばなぜ投資知識が必要なのかが分かるのではないでしょうか。セゾン投信社長である中野晴啓氏による投信購入のススメとも言えます。預金がいかにリスキーであるかを分かりやすく解説しています。
セゾン投信とは中野晴啓氏の理想を形にしたもの
中野晴啓氏が、投信会社を設立しようと思った動機や、そこに至る苦労話はなかなか読み応えがあります。そして手数料がやたらと高い投資信託商品に関してはこれでもかと否定的です。
日本の証券会社は大中小規模問わず、商品を回転させ、手数料をせしめてリテール営業が成り立つ、というような時代がありました。それに対して金融業界に籍を置く著者がきちんと総括的に批判しているのは、利用者としては痛快以外の何物でもありません。
それだけ自社商品への思いと自信がある、と私は好意的に解釈しました。事実、セゾン投信はファンも多く、運用額を伸ばし続けています。特に積み立てタイプの日本株インデックスに強いですね。
澤上ファンドと同様、長期投資に軸足をおいています。
預金バカという語弊あるタイトルだけども
タイトル通り、預金がなぜ危険なのかを初心者にも分かりやすく解説している点に非常に共感できます。まず、銀行預金がすでに利用者の資産運用というニーズに応えられなくなっています。金利が低すぎるからです。
そのため、銀行は利率の良い商品を勧めますが、それは手数料が高すぎる金融商品であったり、見えにくいながらも過度にリスクを負った商品であったりします。
また、日本円は対ドルでみるとボックス相場です。これは毎年2%程度のインフレがあるドルと連動しているとも言え、そうするとこの20年でずいぶんと円の価値が下がったことになります。
低金利で預金をするため資産は増えず、それどころか対ドルが示すように緩やかに減価しているのが日本円の預金なのです。
そういった円預金の見えざる危険性が中野氏によって熱く語られています。
時代は変わりつつある
海外株が気安く買える時代になりました。以前は日本株しか買えなかった日本の証券会社ですが、今では米国株式だけでなく、ベトナムやロシア、タイなど様々な国の株式が買えるようになりました。
また、ETFという商品のリスクを分散によって究極までヘッジし、しかも信託報酬が低い商品も出ています。
預金が実は危険性もはらんでいることを念頭に、預金から次なる投資への一手として本書に目を通しておくことは意味あることと思います。初心者でもわかりやすい投資の和書です。