たぱぞうの米国株投資

米国株投資ブログ。某投資顧問のアドバイザー。メディア実績/日経マネー・ヴェリタス・CNBC・ザイなど

東証上場、円建てS&P500連動ETFの分配金はなぜ少なく見えるのか

東証上場、円建てS&P500連動ETFの分配金はなぜ少なく見えるのか

 米国株投資の手段としてS&P500連動商品を利用する個人投資家が多いですね。近年は円建ての商品も増えました。


 投資信託だけでなく、東証に上場するETFも増えています。東証上場のETFは円貨で取引できます。また、特定口座で取引すれば、外国税額控除を受けるための確定申告が不要なものもあります。使い勝手がいいですね。

東証上場、円建てS&P500連動ETFとドル建ての比較検討

激増した円建てS&P500ETF

激増した円建てS&P500ETF

 改めて商品を比較してみます。なお、為替ヘッジをしている商品はさしあたり除外しました。

 

【1557】SPDR S&P500 ETFは、米国ETFの【SPY】の円貨版です。

 外国籍ですから外国税額控除を受けるために確定申告が必要です。なお、分配金の金額はドルで示されていますので、ざっくりと円換算した金額を掲載しました。

 

また、米ドル建ての商品と比較するために、Vanguard S&P 500 ETF、ティッカー【VOO】も載せてみました。

 

S&P500連動ETFの比較一覧表

S&P500連動ETFの比較一覧表

 このように並べてみると、同じインデックスに連動する商品でも、それなりに違いがあることがわかります。さしあたり【1547】、【2558】、【1655】を比較すると、上場来の期間は【1547】が長いです。しかし、純資産は【1655】が【1547】の2倍程度あります。


 この違いは信託報酬率と1単位の売買に必要な金額の違いも大きいでしょう。

 

【1547】は56,000円程度必要ですが、【1655】は3,700円程度で済みますから、手軽さに関しても【1655】に軍配が上がりそうです。また、【1547】は二重課税解消に対応していない点も大きいですね。

東証上場円建てS&P500連動ETFで目立つ分配金の利回りの差

 外国籍ETFと比較して、目立つ違いは分配利回りでしょうか。【1547】、【2558】、【1655】は0.7%~0.8%といったところですが、外国籍は1.3%程度とダブルスコアに近い程度の違いがあります。

 

 この分配利回りの違いの一つは、上場からの期間によると考えられます。東証だけでなく、証券取引所で取引される商品は証券取引所から料金を徴収されます。例えば、東証に上場するETFは新規上場料、追加信託時の追加上場料として純資産総額の0.0075%を東証に支払う必要があります。

東証に支払う新規上場料

東証に支払う新規上場料

また、12月末の純資産に応じた年間上場料も発生します。

東証に支払う年間上場料

東証に支払う年間上場料

 上場から日が浅いETFは、これらの費用が重たいことでしょう。


 少なくとも現時点で【1547】、【2558】、【1655】を比較すると上場から最も日が浅い【2558】の分配利回りが小さいことにも合理性がありそうに思えます。

 

 ちなみに、この費用をNYSE Arcaと比較してみました。NYSE ArcaのFeeは発行済口数に依存しますので、純資産で料金が決まる東証とは仕組みが違います。

 

 以下の表は、年間上場料(Annual Fee)です。

NYSEの年間上場料

NYSEの年間上場料

 例えば、【VOO】の場合、発行済口数は約6億5000万口ですので、一番高い料金区分になりますが、3万ドルですから1ドル115円で換算すると約350万円でしょうか。

 

 純資産に対して0.0075%を徴収する東証の場合、例えば【1655】ならば純資産は約860億円ですから、650万円程度/年の上場料が発生するわけで、純資産がはるかに大きい【VOO】の方が現時点では証券取引所に払う費用の面でもアドバンテージがあります。


 この費用の違いが信託報酬にも反映されているでしょうから、東証上場ETFの信託報酬率が米国ETFより高くなるのは仕方ないともいえます。東証も上場企業の傘下企業ですからね。

圧倒的なVOOの規模感

圧倒的なVOOの規模感

 加えて、為替のコストも無視できないでしょう。


 米ドルレートの1円の違いは0.5%以上の違いですので、為替は決して無視できません。【VOO】の保有で受け取った分配金を円転しようとすれば、コストはゼロではないことの方が多いです。


 よって、分配に関していえば米国ETFが必ずしも有利というわけでもないですね。

実はほかにも東証上場S&P500連動ETFがある

 実はご紹介していない為替ヘッジなしの東証上場S&P500ETFがあります。


 野村アセットマネジメントが運用する【2633】 NEXT FUNDS S&P 500 指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信です。


 2021年3月31日に設定されており、分配が年2回です。まだ1回しか分配されていません。公平性を保つために今回の比較の対象から外しました。


 しかしながら、信託報酬率が期間限定で引き下げられており、2022年12月30日までは0.077%と【1547】、【2558】、【1655】のどれよりも低いです。


 後発組なので、信託報酬を低くして資産を集めたいということでしょうね。ただ、分配の面ではしばしは魅力に欠ける可能性を想定しておいた方がいいですね。

 

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