Nasdaq100における、インデックスの特別リバランスとは
2023年7月、NASDAQが発表し、実施されたNASDAQ100のextraordinary rebalance(特別リバランス)が話題になりました。
NASDAQ100で高いウエイトを占める銘柄のウエイトを減らすものです。NASDAQ100の特別リバランスは、過去1998年12月、2011年5月に行われていますが、実に久しぶりのイベントと言ってよいでしょう。
このリリースで「リバランス」に興味を持たれた方がいらっしゃるかもしれないですね。そこで、今日はリバランスの簡単な理屈とNASDAQ100のルールを記事にします。
インデックスのリバランスで起きることの例
リバランスで何が起きるのか。それはインデックスのルールによります。
一つ例を挙げましょう。理解しやすくするために10銘柄で構成される修正時価総額加重平均株式インデックスを想定し、ウエイト上位3銘柄で63%を占めるインデックスがあったとします。
このインデックスに「ウエイトの上限は15%とする」というルールがあったとしましょう。その時、何が起こるのかを示したのが下の図です。
出典:たぱぞう作成
15%超のウエイトを占める銘柄A、B、Cはリバランス時にそれぞれ15%にされます。
ですから、15%になるまで銘柄A、B、Cは売られます。売られたウエイトの合計は18%です。
一方売られた資金は「もとのウエイト」が15%未満の銘柄を買います。その時の買われ方は時価総額加重平均ならば、
- 売られたウエイトの合計/もとのウエイトの合計×もとのウエイト
になるでしょう。
銘柄Dの場合
- 18%/37%×9%≒4.378%
程度のウエイト増になります。銘柄E以下も同様の計算結果でウエイトが大きくなります。インデックス連動資金は計算結果に基づいて売買を行います。つまり、「リバランス」とは売られるだけではなく、買われる銘柄もあるということです。
ただし、ご紹介した例は簡略化されています。リバランス以外にも業績見通しなどで株価を動かす要素はあります。つまり、実際の売買はリバランス以外の要素を含み、株価がシンプルな動きをするわけではありません。
Nasdaq100における、特別リバランスの理由は何か
2023年7月7日にNASDAQがリリースしたリバランスのお知らせを振り返ります。
Nasdaq today announced that the Nasdaq-100 Index® (NDX®) will undergo a Special Rebalance effective prior to the market open on Monday, July 24, 2023. As described in the published index methodology, a Special Rebalance may be conducted to address overconcentration in the index by redistributing the weights. The Special Rebalance will not result in the removal or addition of any securities.
(NASDAQは2023年7月24日のマーケットオープン前にNASDAQ100の特別リバランスを実施すると発表した。メソドロジーに記述されているように、特別リバランスはウエイトの再配分によって、指数の中における過集中への対処を行う。特別リバランスでは銘柄の除外も追加も起きない)
“methodology”とはインデックスのルールブックのようなものです。NASDAQ100 methodologyの4ページに、”Constituent Weighting”という項目があります。「構成銘柄のウエイト」を決めるルールを示しています。
大事なことがいくつか書かれていますので、簡単に挙げておきます。
1) NASDAQ100は「修正時価総額加重平均」指数である。
ピュアな時価総額加重平均指数ではないということです。
では、なにが「修正」されているのか。これが特別リバランスの理由でもあります。
2) 年に4回、2つのステップを踏まえてリバランスされる
- ステップ1 単独で24%を超えるウエイトの銘柄が発生した場合、どの銘柄もウエイトが20%を超えないようにする。2011年の特別リバランスはアップル【AAPL】が単独で20%超になったため実施されました。
- ステップ2 4.5%以上のウエイトを占める銘柄の合計が48%を超えてはいけない。超えた場合、4.5%を超えた銘柄の合計を40%とする
3) 年1回のリバランスでは2つのステップを踏まえてリバランスされる
- ステップ1 単独でウエイトが15%を超える銘柄がある場合は、14%を超えないようにする
- ステップ2 上位5銘柄のウエイト合計が40%を超える場合、5銘柄合計を38.5%とする。6位以下に関しては、4.4%あるいは5位のウエイトを上限とする。
NASDAQ100のリバランスは3の倍数月で、12月が年1回の銘柄入れ替え実施月です。
7月のリバランスは上記2)、3)のどちらにも該当しませんので特別リバランスということになったのでしょう。
Nasdaq100におけるリバランス対象銘柄のパフォーマンス
こちらは2023年7月23日現在のインベスコQQQトラスト・シリーズ1のウエイト上位10銘柄です。NASDAQ100連動ETFで最大の純資産を持つものが【QQQ】ですね。
リバランスによる差分を把握するために比較しました。マイクロソフト【MSFT】とエヌビディア【NVDA】は大きな変化であったことがわかります
出典:インベスコ websiteよりたぱぞう作成
ウエイト低減対象になったのは上位8位までです。最初の方で示したリバランスの理屈に倣えば、8位までは売られて、9位以下は買われることになります。
ブロードコム【AVGO】やペプシコ【PEP】とNASDAQ100を比較してみました。青い部分が、リバランスの発表があった7月7日です。水色がNASDAQ100です。ブロードコムは買いが入ったように見えます。
出典:US版 Yahoo Finance
ウエイト減銘柄も確認してみます。7月19日以降は全体的に売られましたが、終わってみれば大きな変化はなかったように見えます。
出典:US版 Yahoo Finance
つまるところ、Nasdaq100インデックスのリバランスとはいえ、それぞれの個別銘柄のEPSが変わるとかいうわけではなく、純粋な需給の問題です。
ファンダメンタルに変化がなければ、リバランスは買い場になることもあるでしょうね。とはいえ、得てしてこのような短期の需給の歪みはすぐに修正されます。積立メインの投資家さんは過度に気にするようなことではなさそうです。
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よく言われますが、融資上のルールですね。
Nasdaq系の商品も多様性が出てきましたね。