たぱぞうの米国株投資

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Fund of the Year 2020の読み解き方と投資の考え方

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2020」とは?

 「Fund of the Year 2020」とは、投信ブロガーによるファンドの人気投票です。このイベントが始まった2000年代は、信託報酬などの手数料が高い商品が多く、今とは比較にならないほど選択の少ない投資環境でした。

 

 また、金融商品の評価をする場も限られ、今ほど多くはなかった投信ブロガーが関連した記事を書くという時代でした。記録に残っている2007年のデータを見ると、19名の投信ブロガーが当時のFund of the Yearに参加されています。

 

 先日行われたFund of the Year 2020は、190名の投票があったということです。この数年はブログ自体がyoutubeなどに押されているため、漸減しています。しかし、長い目で見るとおよそ10倍にまで投信ブロガーが増えたということですね。

 

 このことは、投資熱の高まりとともに、徐々に日常に投資が根付きつつあることの証左といってよいでしょう。

 

 そういう意味では、一貫して安価な良い投資信託を選び続けてきたFund of the Yearの運営さんの思いは、徐々に結実してきたともとらえることができます。日本の投資環境はより参加しやすく、より結果を得やすく変容してきたのです。

 

 それにはFund of the Yearのような地道な1つひとつの活動、ボランティアがあったことは見逃せないところですね。

Fund of the Yearで上位に食い込む条件は3つ

 このFund of the Yearですが、時代とともにランキングが固定化されていく傾向があります。端的に、以下の条件を満たすファンドに順位が固定化されがちだということです。

  • 低信託報酬
  • インデックス
  • 全世界投資

 逆に言うと、この3条件を満たしていないと継続してトップに食い込むことは難しいということです。なぜならば、この3条件を満たすファンドには根強い固定ファンがおり、時代を生き抜いた投信ブロガーが存在するからです。

 

 参考までに、サイトからランキング画像を拝借して検討してみましょう。

Fund of the Year 2020の上位5ファンド

Fund of the Year 2020の上位5ファンド

 Slim全世界株式やVTは全世界投資における東西横綱といってよいです。特にSlim全世界は円で買える最安の全世界株式ファンドということで安定した支持を受けています。およそ50名、2位以下に倍以上の差をつけている点は注目されてよいでしょう。

 

 一方で、ひふみ投信は伝統的に中小型に強いアクティブファンドで、その理念や藤野氏の個性が投信ブロガーに広く支持されています。こちらは先の条件の王道ではないがゆえに、その健闘が目立ちます。

Fund of the Year 2020の6位から10位

Fund of the Year 2020の6位から10位

 6位はSlimのバランスファンドが入っています。興味深いのは、運用総額で断トツのSlim米国株がSlim全世界株式(除く日本)にさえ順位で劣後しているということですね。

低信託報酬、オールカントリーという選択以外の多様性をどのように拾うか

 ここで、視点を変えてファンド評価をしてみましょう。2020年に目立ったファンドはどのようなものがあったのでしょうか。

最も優れたリターンを示した指数、ファンドは何か

 昨年、米系3指数の中で突出したパフォーマンスを示したインデックスはNasdaq100です。Nasdaq100系の投資信託にはiFreeNEXT NASDAQ100インデックスがあります。これだけ大きな指数でありながら、2020年初来46%のリターンを出しています。

 

 しかし、iFreeNEXT NASDAQ100インデックスはランクインさえもしていません。

Nasdaq100の圧倒的なリターンが目立った2020年

Nasdaq100の圧倒的なリターンが目立った2020年

 このことからFund of the Yearのランキングにおいては、リターンは参考数字に留まることが分かります。年間46%のパフォーマンスは継続して出すに難しく、再現不可能に近いといってよいでしょう。逆に言うと、これだけのパフォーマンスをだしてもトップ10にランクインさえできないという事実をどう考えるかですね。

運用総額、資金流入量の大きいファンドは何か

 また、実際の人気の反映とも言えるファンド運用総額、つまり純資産はどのようになっているのでしょうか。多くのファンドがランクインしている、Slimシリーズの比較が分かりやすいので引用してみましょう。

Slimシリーズの運用総額ランキング

Slimシリーズの運用総額ランキング

 こちらは、2020年9月のデータになります。その後、米国市場が大きく伸びたこともあり、Slim米国株の運用総額は2021年現在2500億円を超えています。実に3か月で1000億円を超える伸長があったということになります。

 

 Slimシリーズにおいては米国株式S&P500が圧倒的な運用総額です。9月時点のシリーズトータルの運用総額が5000億円ということですから、およそ30パーセントにもなるということですね。

 

 運用総額、資金流入量というのは人気のバロメーターになりえますが、ここでもFund of the Yearでは参考数字にとどまっているといえそうです。 

Fund of the Yearをどのように読み解き、投資に生かしていくのか。

 リターンや運用総額がランキングにおける重要な因子でないとするならば、Fund of the Yearはいったい何を反映しているのでしょうか。米国上場ETFに置き換えてみるとわかりやすいかもしれません。

 

  • カテゴリ1 VT、ACWIなど全世界系
  • カテゴリ2 VTI、S&P500など米国大型トータル系
  • カテゴリ3 QQQ、VGT、VCR、VHTなど新興、あるいは米国セクター系
  • カテゴリ4 ARKK、SOXX、ICLNなどトレンド系
  • カテゴリ5 TECL、SPXL、SOXLなどレバ系

 

 投資は幅広く、米国上場ETFだけでもこのようなカテゴリ分けができます。少々乱暴ですが、数字が増えるほどボラティリティも上がると思ってよいでしょう。

 

  Fund of the Yearに投票資格を持つ投信ブロガーさんはだいたいにおいて、長期投資で保守的に運用していく方が多いです。そのため、カテゴリ1に属する投資をしている人が多く、そのランキングの反映になりがちだということです。

 

 また、カテゴリ3,4,5の投資信託は数が少ない、あるいは信託報酬が高いというのもあるでしょう。ドルで直接買い付けをしている投資家がまだまだ少ないとも言えます。

 

 そう考えると、先のひふみ投信のランクインなどは「奇貨居くべし」、ランキングの多様性、語弊を承知で換言すると可能性を担保する貴重な存在といえそうです。

 

 投資初心者さんはFund of the Yearで上位に入っているファンドだから買う、積み立てる、という発想でも悪くはないでしょう。しかし、一方でこのような背景を踏まえ、資産を最大化するには自分なりに考え、一工夫していくということが肝要です。 

 

 Fund of the Yearのランキングは、あくまで冒頭にあるように「投資信託について一般投資家の目線でつねに考え、情報を集め、ブログを書いている投信ブロガー、投資信託の事情通である彼ら彼女らが支持する投資信託」のランキングだということです。

 

 例えば私などは全世界投信や全世界債券を積み立てるだけでは、老後資金を作るので精一杯だったでしょう。ましてや、セミリタイア、資産管理法人起業などは不可能でした。

 

 自分が何を目指して資産運用をするのか、考えるきっかけとしていきたいですね。投資というのは、なりたい自分の将来像とセットであるとも言えます。

 

 自分は何のために投資をするのか。ランキングとは何を反映したランキングなのか。また、どういった層がランキングに参加しているのか。データを都度読み解いていかないと、いつも人に影響され、方向性の定まらない投資になってしまいますね。個の確立というのは投資においても大事なことです。

 

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