シュルンベルジェ【SLB】は石油サービスカンパニー業界の雄
シュルンベルジェ【SLB】はドイツ、フランス国境に位置するアルザス地方出身のシュルンベルジェ兄弟が1926年に設立しました。兄弟はドイツ系フランス人であり、ドイツとフランスのアルザス・ロレーヌ地方の帰属問題を思い起こさせます。
当初はフランス・パリに本社を置き、世界中で事業展開をしていました。事業内容は地質調査です。その後、1934年にアメリカ、テキサス州ヒューストンに進出します。これはテキサス州で石油が発見され、瞬く間に世界でも有数の原油産出地域になったことによります。
地質学や地球物理学と石油探査は密接な関係があります。
その後、ヒトラーのナチスドイツによるフランス占領があり、シュルンベルジェは本拠をそのままヒューストンにも移します。今も本社はヒューストンとパリにありますが、大戦の名残とも言えます。
現在の石油開発業界は、シュルンベルジェ【SLB】・ハリバートン【HAL】・GEの石油開発部門と合併したベーカーヒューズ【BKR】の3強です。数年前にベーカーヒューズはハリバートンと合併予定でしたが、独禁法にひっかかり司法省からストップがかかりました。その結果、GEのガスオイル部門と合併しています。
シュルンベルジェ【SLB】の株価チャートと配当
- 2006年 9月 株価64ドル 配当0.125ドル
- 2016年 9月 株価80ドル 配当0.5ドル
- 2018年 3月 株価66ドル 配当0.5ドル
- 2020年 3月 株価15ドル 配当0.125ドル
原油安で業績は落ち込んでいます。
2014年には株価は117ドルにまで上がっています。反面、2016年1月のチャイナショックには59ドルまで落ちています。今回のコロナショックでは13ドルまで落ちましたから、相当にボラタイルですね。
配当は10年でおよそ4倍になっています。ただ、原油市況変動は、エクソンなどの生産会社だけでなく、開発会社、輸送会社、パイプライン、すべての関連企業が影響を受けます。
かつては輸送やパイプラインの需要は変動が鈍いので原油安のヘッジになるという見方もありました。結果的にヘッジにはならなかったですね。このことは覚えておいて良いと思います。
基本的には開発会社であるシュルンベルジェも原油市況関連株、原油の価格次第で株価が決まるということです。
シュルンベルジェ【SLB】の基礎データ
- ティッカー:SLB
- 本社:アメリカ・テキサス州・ヒューストン
- 上場:ニューヨーク証券取引所(NYSE)
続いて、シュルンベルジェ【SLB】の基礎データを見てみましょう。
シュルンベルジェ【SLB】の売り上げと利益
営業利益は減少しつつもどうにか黒字水準を守ってきました。ただ、純利益では2016年、2017年の2年連続でのマイナス、2019年も巨額の減損処理をしています。それに伴い、かつて20%を窺う勢いだった営業利益率は10%切りの水準まで落ちています。
2020年4月17日の直近の2020年1Q決算では再び赤字でした。赤字幅は73億8000万ドルで、1株当たり5.32ドルになります。おおよそ85億ドルにのぼる減損処理が響きましたね。
シュルンベルジェ【SLB】の配当と配当性向
原油高のころは好調だったのですが、2015年から急激に悪化しました。今は、EPSが2年連続マイナスの中で2ドル配当を無理くり維持していました。しかし、今回決算で0.125ドル配当、大減配をしています。
売り上げ、純利益、フリーCF等の数字が軒並み落ちており、厳しい水準です。
シュルンベルジェ【SLB】のBPSとEPS
2016年、2017年、2019年とEPSがマイナスになっています。シュルンベルジェはその高い技術力から原油市況の値下がりには比較的耐性があると思われていました。しかし、ここにきてさすがに苦しくなってきています。
コロナショックに伴う石油需要の減退は追い打ちをかける形になっています。
シュルンベルジェ【SLB】のキャッシュフロー
キャッシュフローはピーク時のおおよそ半分にまで減りました。その分、急激に投資CFも絞っています。投資CFもピークの半分ですね。今後大きくフリーCFが伸びるにはやはり原油市況次第ということです。
もともと特に自社株買いに熱心ではなかった企業ですが、近年ジリジリ発行株式数が増えてきています。ROEがマイナスに転落しているのも、市況を考えると仕方のないところです。
石油会社の業績が原油安によって悪化しています。そのため、石油会社は投資を控える状況が続いています。シュルンベルジェは今年の投資額が世界で約20%、北米で40%縮小すると試算しており、状況はさらに悪化見込みです。
石油開発会社はその影響を大きく受けます。業界全体が影響を受けており、業界2位のハリバートンも苦しい状況が続き、赤字です。
今回大幅減配となったことで、株価下落と配当減のダブルパンチとなりました。持続可能な配当施策かどうか、ここを見極めた高配当投資が必要ですね。
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