ロッキード・マーチン【LMT】軍事部門売り上げが8割という特殊性
ロッキード・マーチン【LMT】は軍事部門の売上ランキングで世界で1位、2位の地位にあり続けています。特に21世紀に入ってからは盤石の態勢になっています。
他の軍事企業であるボーイングやユナイテッドテクノロジーなどが少なからず民間向けの売り上げを持つのに対し、ロッキードマーチンは8割が軍事向け、政府向けとなっており、その特殊性が際立ちます。
ステルス性の高いF-35ライトニング2やF-22ラプターといった最先端の戦闘機をボーイングと共同開発したり、THAADミサイルを設計、製造しています。
さて、そのTHAADミサイルはパトリオットPAC-3が成層圏内での迎撃を想定しているのに対し、成層圏外での迎撃を前提としており、地上への影響も最小限で食い止められるとされています。
真偽はともかくとして、全世界が束になってかかってもアメリカの軍事力には勝てないと言われます。それは膨大な軍事費と、世界に類を見ないロッキードマーチンのようなハイテク軍事企業の存在があるからです。
SIPRI Arms Industry Database | SIPRI
ストックホルム国際平和研究所の軍事産業ランキングです。
Arms salesは軍事部門の売上です。ロッキードマーチンが1位です。2位のボーイングは売上は大きいものの、軍事部門はそのうち3割です。これは、ボーイングが民間機も作っているからです。ロッキードもかつて民間機を作っていましたが、今は撤退しています。
田中角栄氏が政権を追われるきっかけとなったロッキード事件はロッキードのトライスター、民間機の売り込みで起きた事件です。日本に限らず、世界的に営業をかけていました。
ちなみに3位のBAEシステムズはイギリスの軍事企業で、2008年にはランキング1位でした。戦車や潜水艦に強みを持ちます。
こうしてランキングを俯瞰してみると、イタリアを除いて第二次世界大戦における連合国、戦勝国側に企業群は集中していることがわかります。なお、中国はここのランキングには入っていませんが、世界でも有数の軍事企業をいくつもかかえています。
ロッキード・マーチン【LMT】の配当とチャート
- 2006年11月 株価 88ドル 配当0.35ドル
- 2016年8月 株価254ドル 配当1.65ドル
- 2018年1月 株価344ドル 配当2ドル
- 2019年1月 株価289ドル 配当2.2ドル
- 2020年4月 株価350ドル 配当2.4ドル
10年で株価は3倍以上になっています。特に目を引くのが2013年からの上昇です。2013年以降でガラリと評価を変えた株の1つといって良いでしょう。リーマンショック後の高値を抜くのに7年を要し、そこからは順調に上昇してきました。
同じ時期、同業種のレイセオンやボーイングが軒並み売り上げを減らす中、ロッキードマーチンは過去3年売上成長率は2%近く、利益成長率はおよそ8%もそれぞれ伸ばしました。同社の独占的な強みを象徴する近年の成長です。
軍事企業は開発もさることながら、その後のメンテナンスも大きな収益になっています。
ロッキード・マーチン【LMT】の基礎データ
続いてLMTの基礎データを見てみましょう。
ロッキード・マーチン【LMT】の売り上げと利益
IS&GS部門をスピンオフしています。4つのセグメントから成り、特に強いのが航空です。F-22、F-35、F-16などの戦闘機が有名ですが、中でもF-35シリーズは唯一無二の戦闘力を備えます。航空部門の7割、ロッキードマーチン全体でも4割近くがこのF-35由来の利益になります。
利益成長を支えてきた根幹といって良いですね。
ロッキード・マーチン【LMT】の配当と配当性向
順調に配当金が伸びています。配当性向はおおよそ40%に抑えられており、余力は十分と言ってよいでしょう。成長性は政治に左右されるものの、世界の多極化時代にあって軍事力はますます重きをなしています。冷戦後のような不振は考えにくい状況になっています。
ロッキード・マーチン【LMT】のBPSとEPS
EPSの伸びが良いですね。どう評価するかというところですが、2019年は10ドル台後半までEPSは伸びると見積もられています。ちなみにPEレシオは17前後です。軍事関連の企業としては標準的ですね。
ロッキード・マーチン【LMT】のキャッシュフロー
フリーキャッシュフローは比較的安定しています。新製品開発などにかける設備投資は小さくないですが、維持管理も含めて安定的で大きな利益を生み出しています。毎年の投資CFが安定的なのはそういうことです。
言うまでもなく、唯一無二の企業です。米国の国防のかなりの部分を担う企業と言ってよく、投資先としては非常に魅力的と言ってよいでしょう。
2017年ごろはやや株価が走りすぎていましたが、このごろは落ち着いています。
同盟国へのF-35シリーズの売り上げ、それからTHAADミサイルの配備は順調です。これらは利益率も高いです。また、トランプ政権下では海外輸出規制も緩和されており、政治的にも後押しされています。共和党政権下では軍事費は落ちにくく、それも明るい材料ですね。
ユナイテッドテクノロジーズから買収したヘリコプター部門、シコルスキーは商業部門が正直あまりパッとしませんが、軍事がやはり強く、今後シナジーが期待されます。
2020年4月の直近の決算では、売上高が前年同時期の143億ドルから157億ドルに増加しました。一株当たり利益は5.99ドルから6.08ドルに上昇しました。これは、事前予想の5.8ドルを上回ります。コロナショックでのサプライチェーンの停滞が軽微だったのが良かったですね。
今後、一株利益やフリーキャッシュフローのガイダンスは修正がないものの、売り上げに関してやや悲観的な見方をしています。
とはいえ、防衛セクターはコロナショックでの落ち込みをすでにほとんど回復しています。今後も、影響の少ないセクターの1つと見込んでよいでしょう。一時270ドル台まで落ちた株価も急反発しています。
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ボーイングも防衛関連株ですが、民需が比較的大きいのが特徴です。
こちらのランキングには中国企業も含まれています。その伸びは著しいですね。
外貨建てMMF・MRFのメリットデメリット、守りの投資のお話です。