ブリティッシュアメリカンタバコ【BTI】とは、どのような会社?
ブリティッシュアメリカンタバコ(BTI)は英国のタバコ会社です。200種以上のタバコを200か国を超える国で販売しています。文字通り多国籍企業です。
2016年までの業界順位はフィリップモリス(PM)に次いで2位でしたが、買収により1位になっています。もっとも、非上場では中国の「中国専売」が市場規模を生かして圧倒的ですので、あくまで上場するタバコメーカーで1位ということですね。
従前よりアメリカのロリラードを買収した、レイノルズアメリカンの株式を42.2%保有していました。2016年10月に、残りの株式を購入してレイノルズアメリカンを買収する提案をし、認可されています。
ラッキーストライク、ケント、クール、ダンヒルといったブランド銘柄は日本でも有名です。
※ブリティッシュアメリカンタバコのホームページから
ブリティッシュアメリカンタバコ【BTI】の株価チャート
昨年まで素晴らしい株価と配当の伸びを示してきましたが、2018年には急ブレーキ、大調整と言ってよい値動きをしています。
2007年 5月株価36ドル 配当0.74ドル
2017年 3月株価65ドル 配当1.48ドル
2018年12月株価33ドル 配当2.71ドル
現在の33ドル台というのは業界のネガティヴニュースを含んでもファンダメンタルズを見ると割安に感じます。少なくとも45ドル近辺が適正と見ていますがどうでしょうか。利回りは8%を超えており、そろそろ下げ止まりが意識されるところです。まさに「まだはもうなり、もうはまだなり」です。
10年で配当は4倍近い伸びです。2017年2月には1:2で株式分割をしています。ちなみに2000年ごろには株価は4ドルから5ドルをうろうろしていました。そのころからかなりの株価成長をしています。
若い投資家が有利なのが時間です。数十年に及ぶ長期投資の果実を得ることができます。配当を始めた1984年当時の配当は0.1ドル程度でした。こちらもすでに10倍以上の増配をしていることになります。
寡占的多国籍企業に投資をすることで、将来とんでもない高配当を得る可能性があるという、1つの例だと思います。営業利益率はこの数年20~25%あたりです。タバコ株の安定感ですね。
とはいえ、2017年8月にはFDA(米国食品医薬品局)によるニコチン含有量に関する規制方針、2018年にはメンソールタバコの規制方針と逆風です。株価はこのような数字を反映しており、過去20年に比べるともたつき感は否めません。
FDAによる規制は米国内に限ったことですが、レイノルズを昨年買収したブリティッシュアメリカンにとっては他人事では当然ありません。
また、JUULという電子タバコが爆発的にシェアを伸ばしており、紙巻きたばこの勢力図を塗り替えつつあるのも投資家心理の大きな負担になっています。
こちらの図は電子タバコの四半期ごとのシェアです。赤い部分がJUULです。2017年以後急速に伸びています。この結果、既存のたばこ各社のシェアを侵食する形になっています。その結果、市場は伸びているのにシェアが伸びないというジレンマに陥っています。
電子タバコというイノベーションによる売り上げの拡大を期待したたばこ業界ですが、皮肉なことに新興企業のJUULの脅威にさらされています。紙巻きタバコ時代には考えられなかった大規模なシェアの変動があるわけですね。
なお、このJUULはアルトリアグループが1.4兆円の出資をし、35%の株式取得意思を示しています。さすがの資本力、寡占市場の強みを知悉している戦略と言ってよいでしょう。
ブリティッシュアメリカンタバコ(BTI)の基本データ
過去の配当利回りはだいたい4%程度です。今は株価が落ちており、利回りで8.2%近辺まで上がっています。すさまじい高利回りですね。
ブリティッシュアメリカンタバコ(BTI)の配当と配当性向
配当と配当性向です。配当はこの10年じりじりと上昇傾向にあります。
それに対して配当性向は比較的抑えられており、持続可能な配当であることを窺わせます。一般的にタバコ株は高配当傾向にありますが、よくコントロールされた配当政策だと言ってよいでしょう。リーマンショック時にも全く影響を受けていません。
ブリティッシュアメリカンタバコ(BTI)のBPSとEPS
EPSはこの10年でおよそ2.5倍になっています。
BPS=1株あたり純資産
EPS=1株あたり利益
このEPSの上昇は主に自社株買いによるものです。IRによると、この10年で発行済み株式数の1割を自社株買いしており、そのためEPSも切りあがっています。反面、BPSは伸びておらず、EPS重視の経営をしていることが見て取れます。資本効率を考慮した、欧米らしい経営と言えます。
ブリティッシュアメリカンタバコ(BTI)の売上と営業利益
実は売り上げはこの10年さほど伸びていません。これはブリティッシュアメリカンに限ったことではなく、タバコ業界全体に言えることです。そのため、レイノルズアメリカンを買収したり、JTがフィリピンの地場企業を買収したり、買収で売り上げを補っています。ブリティッシュアメリカンの2018年の売り上げの伸びはレイノルズアメリカンの買収効果ですね。
そもそもこの業界の旨味は高い営業利益率に基づいた、安定的な高配当にあります。業界自体は成熟しており、面白みには欠けます。しかし、競争がさほど激しくなく、しかもブランドが強く、固定客をつかめていることから業界の業績は安定的なことが多いです。
もっとも、前述のとおり電子たばこの登場、シェア獲得競争というのは業界地図と収益構造を塗り替える可能性はあります。
ブリティッシュアメリカンタバコ(BTI)のキャッシュフロー
最後にキャッシュフローです。
比較的抑えられた投資CFがフリーCFの漸増を後押ししています。ただし、先述の通り今後は電子たばこ関係の投資が増えると思われます。
フィリップモリスのアイコス、ブリティッシュアメリカンのグロー、JTのプルームテック、そしてJUULという4社の電子たばこのシェア争いが注目されます。
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こちらの記事はフィリップモリスです。アルトリア含むフィリップモリス、ブリティッシュアメリカン、JTがタバコ業界における3強ですね。
フィリップモリスの米国内会社、アルトリアグループです。フィリップモリスとの合併のうわさが絶えませんが、FDAの規制による株価への影響を見ると、分社化したのは良かったのかもしれませんね。
高配当株投資についての記事です。月々のキャッシュフローを増やすということならば、こういう投資法になります。