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貸株制度による配当金相当額と配当金の違いとは

 貸株制度による配当金相当額と配当金の違いを改めて整理する

 貸株とは、自分が保有している株式を、証券会社を通じて誰かに貸すことです。第三者に株を貸す対価として、「貸株金利」と呼ばれる利息を受け取ります。貸株金利は証券会社や銘柄によって異なります。


 毎月金利収入を得られる手段で、少しずつですが個人投資家にも浸透してきたように感じます。

貸株サービスのしくみ

貸株サービスのしくみ

出典:JPX website

貸株のメリットとデメリットを挙げます。

【メリット】

  • 利息が受け取れる
  • 長期保有予定の株式を活用できる
  • 多くのサービス提供証券会社において、投資家は、貸株中でも保有株券等を自由に売却することができる

【デメリット】

  • 貸している間は株主優待が受けられないことがある
  • 配当金が「貸株配当金相当額」となり、配当所得ではなく雑所得扱いになる
  • 貸している証券会社が倒産してしまった場合は貸株を返却してもらえない
  • 一般NISA口座で保有している株式など、一部の株式は貸株対象にならない

 日本株の場合、原則として保有している株は証券会社ではなく、証券保管振替機構(「ほふり」と呼ばれる)で管理されますが、貸株は証券会社において管理されるため、証券会社の経営破綻時には株を返却してもらえない可能性があります。

 

 権利取得については、証券会社によっては基準日に自動的に株券が返却されるような設定が可能です。しかし、長期保有認定などの対象外になることもまれにあります。よって、利用している証券会社の貸株サービスをよく確かめてから利用したいものです。

 

 さて、次は貸株と配当金、配当金相当額の扱いについてです。

貸株による「配当金相当額」は「配当」ではない

 保有している株式を貸した場合、貸株した株式から得られる配当金が、「配当金相当額」というものに変わります。よく似た言葉ですが、その属性に大きな違いがあるので、区別して使われます。

 

 株式を保有していれば、配当金を受け取れます。しかし、株式を貸株した場合、株式を保有していないため、配当金を受け取れません。その代わりに、貸株サービスを実行している証券会社から"配当金相当額"が支払われます。

 

 税法上の扱いが違いますから、知っておきたいですね。

配当金は「配当所得」、配当金相当額は「雑所得」

 貸さずに保有している株式から受け取る配当は税法上「配当所得」に該当します。
一方、「配当金相当額」は個人投資家の場合「雑所得」に該当します。

 

 配当所得は、申告分離課税制度が適用され、ほかの所得とは分けて課税させることのできるものです。分離課税対象ということです。


 一方、雑所得は、総合課税になります。そのため、株の譲渡損との損益通算ができません。さらに、受け取った金額次第では確定申告が必要になることから、通常の源泉徴収有の特定口座で行う株取引に比べ、手間がかかります。


 なお貸株金利も雑所得に該当します。

「配当金相当額」は二重課税されることになる

 貸株時に受け取れる「配当金相当額」は、貸さずに保有していた場合に受け取れる源泉徴収後の配当金と同じ額になります。配当金相当額は"本来ならもらえるはずの配当金に相当する額"を保証するものだからです。

 

 本来、配当金への課税は、配当金の受け取り時に源泉徴収されることで完了します。しかし、配当金相当額を受け取った場合は、源泉徴収額を実際に支払っているわけではありません。

 

 結果として、雑所得である配当金相当額には、雑所得に対する課税が発生し、二重課税になるのです。これは法人の場合は事業所得として二重課税になります。

証券会社によっては配当金自動取得制度がある

 「配当金相当額」の受け取りは、普通に配当金を受け取ることとは違う点があることをご理解いただいたと思います。


 やや不都合なこの状況を避けるためには、貸している株を権利確定日に貸株解除すれば、「配当金」として受け取れます。

 

 証券会社によっては、あらかじめ設定しておくことで「配当金」として受け取れるサービスを実施しています。「配当金自動取得制度」と呼ぶところもありますね。オンライン証券では楽天証券マネックス証券等が取り扱っています。

配当金自動取得制度とは

配当金自動取得制度とは

「金利優先」設定はあまりお勧めしない

 貸株サービスは、証券会社によってさまざまな設定ができます。「金利優先」や「株主優待優先」といったものです。

 

「金利優先」を選択すると、株券をすべて貸し出し、株主優待の権利は取得せずに貸株金利の取得を優先します。結果、配当金の84.685%を配当金相当額(雑所得)として証券口座に入金されることになります。さらに、ここから雑所得への税金がかかるわけですね。


「金利優先」設定は避けたほうが無難でしょう。どんな金融サービスにもいい点とよくない点があります。よく理解してから使うことが大事ですね。

 

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