「敗者のゲーム」、負けない投資法を本書で知る
チャールズ・エリス氏の著書、「敗者のゲーム」を紹介します。米国株投資をするきっかけとなった3冊のうちの1冊です。インデックス投資がそれほど人気がなかった時代からその優位性について指摘していた、先見性の高い本です。
初版は驚きの1985年です。改訂版は6版にもなっており、時代に合わせて主張を補強してきた形になります。アメリカの投資文化が成熟しているのはこういう名著が世間から広く支持され、版を重ねるところにあります。
1985年といえば、日本の投信が高い信託報酬と手数料で商品を乱発し、買っては売り、売っては買い、回転させることで利益を投資家から吸い上げていた時代ではないでしょうか。そこに投信会社と投資家の共存共栄の発想はありません。
今もラップ口座という不確かで手数料ばかり高い商品を勧めてきますが、経費に見合った成果は残せているのでしょうか。
一方本書は資産運用に難しい専門知識はいらない、とうたっています。まさにその通りの、初心者にとっても読みやすい内容になっています。財務諸表が読めない人も、チャートが分からない人も、安心して資産運用ができる。そのことを証明する珠玉の名著です。
ミスをしないという当たり前の投資哲学
敗者のゲームとは言い得て妙な表現です。チャールズ・エリス氏は投資をテニスに例えています。私もテニスを少しするので分かるのですが、プロのようにズバズバ打ち込んでポイントを取るのは素人には無理です。それよりも繋ぐこと、苦しい場面でなるべくしのいで場面場面で負けないことが大事です。
これはそっくりそのまま投資にもあてはまります。何倍にもなる市場から低い評価を得ている株を見つけ出して購入するより、つまらないけど年数%成長のETFを買い増しし続けるほうが確実性が高いのです。VTIやVYM,VOOの投資です。
ちょっと投資で上手くいくと、自分に才能があると錯覚しがちです。そうした浮ついた気持ちを本書はたしなめてくれます。他人を出し抜いて儲け続けることは、いつもできることではないのです。自分が特別でないことを自覚することが大切です。
インデックスファンドは投資のドリームチーム
全体の80%のアクティブファンド・マネージャーは市場平均に勝てないそうです。逆に言うと、20%は勝てている。しかし、その20%のアクティブファンドを見つけ出すのが大変に困難です。
それに対して、バフェット氏もチャーリー・マンガー氏も、ジョージ・ソロス氏も、こういったすべてのトッププロの投資判断を含んだものがインデックスだということです。
去年勝っていたから、あるいは殆どありませんが過去10年勝っていたから、これからも勝てるはず。違います。過去は未来を保証するものではないのです。
その点インデックスは違います。経済が成長を続ける限り、比例して儲けを出し続けるのです。世界経済が成長を続けることは間違いありません。その点を踏まえ、チャールズ・エリス氏は米国インデックス50%、他国投資50%を主張しています。VTが人気なのも恐らくこういった主張を踏まえてのことでしょう。
前提条件を間違えてはいけない
インデックスは最強ですが、成長国に限ることを忘れるべきではありません。本書も前提は米国投資が基本になっています。そのうえで他国投資をリスクヘッジとして推奨しています。しかし、個別国投資は否定しています。例えばEIDO、EPHEなどは値動きや成長性からすると魅力ですが、リスクもあります。
1989年の高値から横ばいで値動きも激しい日本株インデックスが投資対象から外れるのは本書も同じです。例えばバフェット氏はかつて一度も日本株に投資をしたことがありません。
日本が世界中の投資家から認められる市場になるには、安心して投資できる法整備と自社株買いなどの株主尊重の姿勢が必要なのでしょう。
米国株投資をするにあたって基本的な考え方を教えてくれる「敗者のゲーム」は、これからも広く読まれ続けると確信します。
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