1億総活躍社会、新3本の矢
1億総活躍社会は3つの方針からなります。これは日本の未来を映した鏡に他ならないです。読めば読むほど危機感がかきたてられる内容です。
ズバリ端的に日本の課題を指摘したものと捉えることができそうです。
「唐突感がすごい」
「これは政策なのか」
という声も聞こえてきます。たしかに具体性に乏しく、そのため具現性も見えてこないのですが、知っておく価値はあります。
今後さらに明らかになってくるということですが、今現在わかる範囲で考えてみます。
名目GDP600兆円の実現
日本のGDPはおよそ500兆円、25年ほとんど横ばいです。ついこの間まで「失われた20年」と言って、バブル崩壊後の日本の停滞を嘆く表現がありました。しかし、それどころかさらに失われ続けているのが現状です。
これを600兆にするというのですから、相当な覚悟と政策の後押しが必要になります。
まず解決しなくてはいけないのは労働力の問題です。
定年の延長
かつて60歳だった定年退職。しかし、これから定年は伸びることはあっても短くなることはないでしょう。65歳から始まり、70歳、75歳と進んでもおかしくありません。
労働人口の確保が日本労働市場に必要だからです。
今後さらなる労働人口の現象が見込まれています。今までは女性の社会進出によって労働人口減少を補ってきました。しかし、多くの女性が働くようになりつつある今、さらなる労働人口の確保は定年の延長による年配層ということになりそうです。
これとセットで考えなくてはいけないのが、年金支給年齢の引き上げです。
年金支給年齢の引き上げ
年金は今は65歳で支給されます。昔は60歳でしたが、引き上げられました。そしてこれからは70歳、75歳、80歳と伸びていってもおかしくありません。国民年金、厚生年金とも積立金が枯渇するという説もあります。
年金:2037年に積立金は枯渇、40代で1000万円の払い損に -「定年後の5大爆弾」の正体【2】:PRESIDENT Online - プレジデント
年金が出なければ、何としてでも働かなくてはなりません。ほとんどの人がそうではないでしょうか。結果として、年金も保全され、労働人口も得られるという一石二鳥の年金政策ということになります。
一億総活躍社会とはそういうことです。老若男女働くということです。
これに代わるのは出生率の劇的な上昇か、移民しかありません。
第二の矢、希望出生率1.8
少子化対策として出生率を上げようということです。
男性が夜遅くまで仕事する。
女性が家事と子育てを中心とした専業主婦業をし、家を守る。
戦後の主流派だった家族モデルです。じつはこのモデルは大変に裕福な社会が前提にあるということが分かりました。今は核家族が進み、年収も落ちてきています。そのため、共働きでないと家計が維持できない家庭はたくさんあります。
結果として日常が大変に忙しく、時間もありません。子どもを作って育てる余裕もありません。職場の先輩がヒイヒイ言っているのを見て、後輩が結婚や子育てに夢を抱くことができるのでしょうか。
住宅ローン減税などは子育て家庭応援の間接的減税です。このような間接的減税は国民の理解を得やすいでしょう。反面、児童手当増額のように直接的な支援は広い支持を得にくいと考えます。対象が限られるからです。
しかし、本気で出生率改善を期待するならば、子育ての価値を金銭的な支援で認めていかなくてはいけません。自助努力では限界があります。保育所拡充だけでは不十分です。子どもを作ることが精神的にも、金銭的にもメリットがあるようにしなくてはいけません。語弊を承知で言いますが。
子育て世代は子育てにお金と時間がかかることを知っています。子ども一人2000万かかるという話や友人からの実態を聞いて怖気づいています。
介護離職ゼロ
介護を理由とした離職がすでにかなり多いということです。家族が倒れ、介護が必要になるから仕事を辞めざるを得ない。こういう人が今後増えそうです。これから本格的な高齢化社会を迎え、介護が必要になる人はさらに激増が見込まれているからです。
1 高齢化の現状と将来像|平成26年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府
グラフをみても高齢化はまだまだ序の口です。自助努力による介護には限界があります。国による支援で労働人口の流出を防ぐ必要があります。
まとめ
一億総活躍社会とは裏を返せば、日本の課題を洗い出したものと言えそうです。今後10年、20年後の日本が危機的な状態にあることが3本の矢をみても分かると思います。
ならば現役世代の私たちはどうしたらよいのでしょうか。実現には悲観的です。組織を変える、政策を変えることの難しさを実感しているからです。
他者は変えられないのです。変えられるのは自分です。
だからこそ成長モデルを前提にした人生観からのパラダイムシフトが求められていると確信します。