国内株式アクティブ投信の信託報酬とリターン
金融庁から開示許可のあった資料で興味深いものをピックアップします。
まず、最初のこの資料は国内株式アクティブ運用投信の信託報酬とリターンの関係を表にしたものです。
画質がいまいちで恐縮ですが、要点をかいつまんで紹介します。
まず、赤い四角で囲んでいるのが、日経225ETFの位置です。
グラフの縦軸は過去10年の年率リターンです。日経225ETFのリターンは2%ちょっとです。アクティブ投信の平均で見ると、真ん中よりもやや上ということです。アクティブ運用がパッシブ運用に劣後するのは米国株でも同様です。
この結果自体は、予想通りの結果ということになります。
横軸は信託報酬です。日経225ETFの信託報酬が0.25%前後であるのに対し、アクティブ投信の信託報酬は軒並み0.5%以上であることが分かります。ひどいものになると、2%もの信託報酬を得ています。
ここで金融庁が問題にしているのはズバリこういうことです。
- アクティブ投信は信託報酬が高い割にリターンが低い
- 日経225ETFに勝てない投信がたくさんある
- 買い手に貢献しない投信はもういらない
アクティブ投信のほとんどはパフォーマンスでパッシブETFに劣後するわけですが、こうしてグラフに表すと一目瞭然ですね。
注目すべきは、この資料が私的なものではなく、金融庁内部で作成されたものだということです。
当然、ブロガーだけでなく大手メディアも知るところになる資料です。金融庁のフィデューシャリーデューティー路線、つまり金融機関が果たすべき顧客、投資家への義務・責任が強調される路線が継続されると、どうなるのでしょうか。
当然、投信運用会社ならびに販売会社は真の意味で私たち買い手に利益をもたらすような商品開発を迫られるようになるでしょう。
積立に資する大規模投信が日本には無いという問題
次の資料です。日米の売れ筋投信を1位から10位まで並べたものです。さすがに商品名は伏せてあります。
画質が悪くて恐縮ですがザックリいうと、こういうことを主張する資料です。
- 低信託報酬、低販売手数料の商品が日本の売れ筋投信には無い。
- アメリカの売れ筋投信では8/10が適合する
- なぜアメリカにできて日本にできないのか
青の反転表示は、金融庁の積立NISA適格とされる低価格投信です。赤の反転表示はそれに適合しないものです。
「日本の投信上位10本は、積立NISAの対象となるものはない」
「一方で、米国の投信上位10本については、うち8本が積立NISAの対象となる」
このように枠囲みで言い切っているところが注目されます。積立NISAの商品限定にはこれから紆余曲折が予想されますが、こういう問題意識が金融庁にあるというのは知っておいて良いでしょう。
つまり、金融庁は「高コスト・ローリターン」の低品質で競争力の無い投信を排除していこうという考えなのです。
なぜ日本の投信のパフォーマンスがこれほどまでに良くないのか
なぜ日本の投信のパフォーマンスがこれほどまでに良くないのでしょうか。このことについて触れておきます。これは非常にシンプルです。
- そもそも日本株式市場が振るわなかった
- 金融機関は手数料ビジネスから脱却できていない
大きくこの2点だということです。
1「そもそも日本市場が振るわなかった」 販売手数料や信託報酬が高くても、日本市場が右肩上がりであれば投資は成功します。しかし、その肝心の日本市場が長らく停滞したままです。
ETFにしても投信にしても、まず自国の市場の商品を拡充させます。ですから、日本の運用会社は非常に苦しい環境に置かれてきたとも言えます。アベノミクス以来、日銀のETF買い入れという奥の手を使って市場を安定化させています。
しかし、これだけ買い入れをしてもなかなかTOPIXや日経が米国株ほど上がらないのが現実です。ETF買い入れに関する限り、出口戦略は取れないと言ってよく、日本株式市場が危機的である状況は何ら変わるところがありません。
こうした状況での運用が難しいのは当然と言ってよいでしょう。しかし、そうすると資金は流入しませんから、負のスパイラルに陥るということです。
2「手数料ビジネスから脱却できていない」 これは結局法人にしても個人にしても、営業部隊による回転売買で益を出すというスタイルから脱却しきれない金融機関の利益構造に問題があります。
そのため、長期保有よりも短期売買に力点をおいた商品開発に血道をあげてきたのです。これは日本市場そのものが低迷していて利益が得にくいことも無関係ではありません。
私たち利用者としては、そういう販売スタイルに振り回されず、淡々と私たちにとって有益な商品を見極める眼力を蓄え、結果としての業界の変容に期待するほかありません。
ただし、日本というのは上が変わるとガラリと状況が変わることが多々あります。この積立NISAを巡る金融庁と金融機関の熾烈な「つばぜり合い」は今後も注目に値すると私は思っています。
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積立NISAの内容もさることながら、それに付随する金融庁の取り組みが秀逸です。こういう内部資料が作成されているということが意味すること。それは決して軽くないですね。
米国ETFの信託報酬の低さは出色と言ってよいでしょう。2017年3月末のデータです。群を抜く、バンガード、ブラックロック、スパイダーです。
ここで紹介する10冊は時代を超えて読まれる名著と言ってよいでしょう。投資を始めるならば、ここの10冊を読みながら始めると良いですね。投機と投資の違いが鮮明になります。