たぱぞうの米国株投資

米国株投資ブログ。某投資顧問のアドバイザー。メディア実績/日経マネー・ヴェリタス・CNBC・ザイなど

可処分時間をどのように増やしていくのかという課題

可処分時間をどのように増やしていくのかという課題

 自分が自由に使える時間、つまり可処分時間をどのように増やすのか。

 

 これは、高度に複雑化した現代社会においては大きな課題ですね。収入のために時間を労働という形で提供したり、知らず知らずのうちにスマホで時間を空費したり、はたまた不要なお付き合いで時間を使ったり。

 

 よほど意識して過ごさないと、あっという間に時間が過ぎてしまいます。私の例で言うと、組織にいたころは毎日の定時が待ち遠しく、金曜日午後の解放感が好きでしたね。1週間がそれなりに長く感じたものです。

 

 しかし、独立してからは毎日があっという間で、時間が足りません。

 

 人生とはかくも時間が少なく、あっという間に過ぎていくものだったのかと感じた次第です。独立してからは自分の好きなことしかしていません。そのため、時間に対する感覚が変わったのでしょう。

 

 「人生二度なし」と言いますが、可処分時間の少なさに気づき、生活の質を変えるのは今後も大きな課題であり続けるのだろうと確信しています。何かに追われて、あるいはやらされて一生を終えるのは、あまりにつまらないからです。

 

 さて、今日は将来的にセミリタイアをし、可処分時間の確保をしたいという方からのご質問を頂戴しています。

可処分時間と可処分所得のバランスを考えて、生活を構築したい

 はじめまして。いつも勉強させていただいております。社会に対してだけではなく生き方に対してもいつも俯瞰的、客観的な視点を感じさせるご意見をさらりと文章に織り込まれており、すごい人だなと感服しております。

 

 過去にご家族に不幸があって辛い時期をお過ごしになった事があるようですので、生きるという事に対してご自分なりの深い悟りを持っておられるのかなと勝手に想像しております。さて、まず自己紹介をさせてください。

 

属性など

  • 48歳男性。
  • 妻、子供二人(小学校低学年)
  • 都内開業医(2代目)
  • 医療法人理事長。賃貸居住。

収入

  • 医療法人からの給与(役員報酬)は妻と合わせて3930万円。
  • クリニックの土地建物は相続で個人所有。
  • 医療法人から家賃として360万円。
  • 米国株配当は税引前で350万円/年程度。

支出

  • 家計簿アプリなどでは700~900万円/年程度

資産(自分だけ。妻は除く)

  • 医療法人に貸している土地建物
  • 生命保険(概算では現時点での解約で2000万円程度の返戻金)
  • いつでも現金化できる株・投資信託と現金を合わせると時価約2.7億円

内訳

  • 投資信託楽天VTI 750万円
  • 株1.75億円(時価。ほとんどすべて米国個別株)
  • 現金9000万円程度(ドル含む)

その他補足

  • 医療法人は先代の持ち株を少しずつ移行している途中。
  • 現段階で医療法人は無借金経営で現金は約2億円程度あり。

 二代目開業医でとても経済的に恵まれていると思っています。亡父とそれを支えた母親に感謝しております。


 ただし、今回相談させていただきたいのは医者という職業からのセミリタイア~早期完全リタイアについてです。

 

 医師になってほぼ4半世紀経過し、開業医生活も15年近くになりました。医師という職業は労働集約型の職業です。毎日7時間程度はほぼずっと座ったままで患者さんと話し続けます。

 

 昼休みは自由な時間もありますが、経営していると事務的な作業で時間が潰れることも多く、夜は(コロナで一時期減ったもののオンラインで最近また増えつつありますが)研究会や会議なども多くあります。

 

 いわゆる可処分時間がとても少ないのです。もちろん少ない時間を有効活用して非常に多趣味な医師仲間も多いのですが、私はあまり体力に優れる方ではなくて仕事が終わるとぐったりしてしまいます。

 

 開業医は先端医療を行ったり研究をしているわけではないので、仕事内容は単調になりがちです。

 

 もちろん一人ひとりの患者さんの悩みに向き合う事は大切だと思いますが、毎日仕事から帰って夕食を食べ、子供や妻と顔を合わせられる短い時間を過ごして就寝時間が近づく度に、今日、新しい何か(特に医療以外の事)を自分が学び得たか、そしてそういった活動のために使える時間がいったいどれだけあったのか、そしてこの先もどれだけそういった時間を持てるのかと考えると、今の生き方に疑問を覚えるようになったのです。

 

 医療法人の持ち株の多くを先代がまだ持っており、医療法人の資産も多くあります。今すぐ法人を解散して廃業する事は考えておりませんが、本職以外のインカム(またはインカムを生み出せる資産)を作って、本職を徐々に縮小し、7年後に55歳になるまでには現在の半分以下に労働時間を減らして(セミリタイア)、60歳頃には完全にリタイア(またはリタイアできる状態を作る)できないかと思っています。

 

 医者は世襲が多い職業ですが、私は子供がまだ小さく、開業医として働けるようになるにはどんなに早くても25年程度かかりますからそこまで開業医として働き続けるつもりはありません。

 

 また私自身が開業医の息子としてクリニックを継承するのが当然と思って医師になりましたが、そのせいで社会を見る目がとても狭くなってしまったという後悔の念もあります。

 

 また私の兄弟や医者仲間の家族を見ても、医者になった者もならなかった者もそれなりに有形無形のプレッシャーを受けて育っているのを感じます。

 

 子供達が自分で志して医者になるにせよ、私のクリニックを継承させるのではなく、自分達で切り拓いた道を歩んでほしいと思っておりますので、開業医は私の代で終わりにするつもりです。いずれにせよどこかで幕引きをしなければならないのです。

 

 現在クリニックの資産として現金が2億円あり、今でも年に2000万円程度増えつつあります。心身の疲れから今年から少し時間をしぼって患者さんを減らしていますので今後は1500万円程度の純利益になると思います。

 

 ただし、借りている駐車場が無くなると患者さんが激減する可能性があり、駐車場がいつ無くなるかは分かりませんので、先行きは不明です。その駐車場ごと買ってしまうという選択肢もあるのですが(なんの交渉もしていませんが)、おそらく買えたとしても数千万円が必要ですからクリニックを継承しないのならそこまで大きな投資は不要です。

 

 買っておいて廃業後に建物を建てるという選択肢もあると思いますが、仮に廃業が10年後なら60歳近いですから、ちょっとスタートとしては遅いようにも思います。この駐車場問題もまたセミリタイアを考える一つの理由です。

 

 セミリタイアを支えるための経済的目標として、具体的には55歳までに完全な不労所得を、税引き後1000~1500万円/年、60歳時点で1500万円~/年で考えています(いずれもそれ位の金額を受け取れるだけの仕組みや資産を作っておきたいということです)。

 

 生活するだけなら1000万円/年もあれば十分ですが、子供がまだ幼いので今後の教育費が読みづらく、やや多めの収入を確保しておきたいのです。並行して労働時間を徐々に減らして医療法人資産を縮小していき、医療法人からの退職金支払いのタイミングを見計らいながらリタイアの時期を決めたいと思っています。

 

 仮に1500万円/年(税引き後)の不労所得を得るためには約2200万円程度の収入が必要になると思います。そのためには、

 

  • パターンA 株・債権などで5億円程度を保有し、年率4%程度(2000万円/年)増えるとして、増えた分で生活する(2000万円の80%=1600万円程度の税引き後収入を目標)。残りは再投資する。
  • パターンB ペーパーアセットとハードアセットを組み合わせて税引き後1500万円/年程度の収入が得られる仕組みを作る

のいずれかと思います。ハードアセットはもちろん資産管理法人での運用になると思います。

 

 ただし、話が脇道にそれますが、資産を次の代にどこまで受け継がせるかは難しい問題だとも考えています。

 

 多すぎる資産や資産を生み出すスキームを残すことは子供のモラルハザードに繋がる可能性もあります(資産家や開業医の子弟にはそういった例も散見されます)し、私が後悔しているように自分で社会を広く見る目を損なってしまうリスクもあります。

 

 贈与だけでも110万円/年で10年続ければ1000万円を超えますから、仮に資産管理法人を作ったとしても将来的にはペーパーアセットだけにするかもわかりません。しかし、それは先の話です。

 

 話を元に戻します。パターンAについて試算してみました。仮に2.5億を今の時点で何らかのindexにすべて投入して年率4.5%で毎月複利運用し、一年に1500万円(月に125万円)ずつ追加投資すれば7年後には4.6億円程度になっていると思います(計算に自信はありませんが)。

 

 ただし、実際には一度に2.5億円を投入する度胸はありませんので3~5年程度に分割して投入することになるでしょうから、7年後の金額は4億円程度でしょうか。さらに月に125万円ずつ7年間投資し続けようと思えば本業を減らすのが難しいですから労働時間を縮小していくという目的を叶えづらくなります。

 

 パターンBについては知識が足りなくて正確な試算ができません。不動産や太陽光発電になると思うのですが、物件によって大きく変わってくると思います。現在の所、収入は安定していますし数年かけて不労所得を増やしていければよいので、不動産投資をする場合にはリスクがあまり高くない方法を選びたいと思っています。

 

 たぱぞう様は都内城南地区に物件をお持ちということですが、私も所有するなら客付けに困らない都心エリアでの投資を考えています。

 

 自然と高利回りは望めない投資になるでしょう。仮に資産管理法人を設立して不動産で5000万円自己資金を投入して残りを借り入れ、返済及び税引き後手残りの自己資金に対する利回りを8%とすると400万円/年になります。

 

 残り2億をパターンAと同条件で年率4.5%毎月複利投資(追加投資を1500万/年)した場合、7年後に3.96億円になります(計算の妥当性に自信はありませんが)。不動産で増えるのは400万円×7年=5600万円とすると、合計4.5億円程度になりますからパターンAとそんなに変わらないようにも思います。レバレッジをかけてリスクを取るからにはもう少しメリットが欲しい所です。

 

 不動産投資について更に具体的に計算してみました。仮に5000万円自己資金を投入して1億円を借り入れて1.5億円の物件を運用するとします。下記条件で試算してみました。

 

  • 借入金額:1億円 金利:0.900%
  • 借入期間:20年 (240回払)
  • 返済総額:109,307,142円
  • 支払利息総額:9,307,142円
  • 月額返済額:455,446円
  • 年間返済額(月額返済額×12):5,465,352円

 

  • 表面利回り6%なら年収900万、月収75万→返済比率60%。手残り29.5万円/月、354万円/年(自己資金に対する利回り7%)
  • 表面利回り7%なら年収1050万、月収87.5万→返済比率52% 手残り42万/月、504万/年(自己資金に対する利回り10%)
  • 表面利回り8%なら年収1200万、月収100万→返済比率45.5% 手残り54.5万/月、654万円/年(自己資金に対する利回り13%)
  • 表面利回り9%なら年収1350万、月収112.5万→返済比率40% 手残り67万/月、804万円/年(自己資金に対する利回り16%)

 計算上、年に400万円/年の手残りを得ようと思うと表面利回り7%程度は必要になります。しかしその場合は返済比率が50%を超えていて高すぎると思います。

 

 また太陽光発電については閉じられつつある投資の様ですが不動産と違って資料が少なく、具体的な試算はできませんでした。

 

 最近たぱぞう様がセミリタイアと資産管理法人についてご自身で実践・お勧めされているのを拝読し、私も同じような方向で今後の人生設計を考えていきたいと思うようになりました。

 

 ブログを拝見する限りではハードアセットとの組み合わせの方がリタイアへの道が早くなるように感じています。ハードアセットと組み合わせる場合に太陽光発電や不動産投資についてアドバイスがいただけませんでしょうか。

 

 特に不動産投資は色々本を読んだりwebで情報収集をしたのですがあまりにも幅広い手法があり、ハードアセットへの投資を始める場合に自分が選択すべき手法はどういったものなのかをつかめておりません。

 

 長々と駄文を書き連ねてしまいましたが、ご指南のほど、よろしくお願い申し上げます。

ズバリ言うとハードアセットを組み合わせたほうが楽です。

 ご属性が高く、資産もおありなので、セミリタイアからの可処分時間の確保は現実的ですね。文面からは「やりきった」という思いも伝わってくるように思いますが、いかがでしょうか。だとするならば、たしかに次のフェーズが意識されるのでしょう。

 

 さて株式、例えばS&P500連動のETF、1655などでインカムを得ようと思っても、1億円で年間200万弱の手取りにしかなりません。高配当ETFだと500万程度の手残りが狙えますが、それでも質問者さんの求める水準には達しませんね。

 

 しかし、キャピタルも含めたトータルな資産運用ではやはり魅力です。第一、手間が全くかかりません。外せない投資対象であり続けるでしょう。

 

 これに対して、ハードアセットの場合は、レバレッジを効かせて最大化することが可能です。ただし、こちらも23区内だとインカムというよりはキャピタル、出口を狙った投資になってきますね。持ち切るよりも、出口を取ったほうがよい投資になります。都内でも、CCRで見ればもう少しインカムもよくなりますね。

 

 フェーズとしては、手のかからない、ペーパーに近い感覚で運営できる物件がよいでしょう。そうしないと、結局ここでも労働集約型の事業になります。可処分時間を増やすという第一義を大事にしたいところです。

 

 太陽光は、完全にインカム狙いの投資になりますね。出口を取ろうとすると、減価償却分や消費税の関係で計算する必要がありますが、それでもセカンダリが人気を得てきています。

可処分時間と可処分所得のバランスが人生には大事

可処分時間と可処分所得のバランスが人生には大事

 おっしゃる通り、0か100かではなく、事業を縮小していきつつ、資産管理法人を育てていくというのがベストに思いますね。そのほうがご属性も生かせます。

 

 あとはメールした通りですね。ご自分ですでにある程度道を想定してらっしゃいますから、あとは微調整してより安全に、無理なく実行していくこととなります。今まで積み上げた努力を大切に、あとはお金がお金を生むシステムを作っていくだけですね。

 

 共に頑張りましょう。

 

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 いずれにしても、自分である程度の想定をして、計算していくことは大事です。あとは、真逆ですが「勢い」です(笑)

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  低金利というのは、借り手にとっては実はチャンスです。物事は裏と表があり、それを見極めて適切な行動をしていけばよいということですね。

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 私たちの世代よりも次の世代のほうがより困難が待ち受けていると考えるならば、どのように将来を考えていくべきなのでしょうか。

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