住宅ローン控除と収益物件
30代、あるいは40代のご家庭だと住宅ローンを抱えている例が少なくないと思います。多分に漏れず、たぱぞう家もそうです。賃貸よりも安くなるようにキャッシュフローを組みましたので、生活は逆に楽になりました。
特に住宅ローン控除は大きく、これにより実質マイナス金利になっています。このように住宅ローン控除は上手に使えば生活レベルを向上させてくれます。自宅に対する基本的な考え方としては以下のようになります。よく考えて使い分けることが大事です。
- 出口を意識して収益を期待するのか
- 出口を意識せず収益を期待しないのか
この2点に尽きるということです。なお、出口というのは売却のことです。
出口を意識して収益を期待する
収益を期待する住宅ローンの組み方というのは3点です。
- 値上がり益を狙った売買をする
- 屋根の形状を工夫して売電する
- インカムを狙ったアパートやマンションを併設する
この3つです。
「値上がり益を狙った売買」はかつては盛んでした。しかし、今では殆ど成り立たない投資になっており、山手線の内側、あるいはターミナル駅近くなど立地に恵まれた限られた物件になるでしょう。そのぶん、初期投資も大きくなるので参入できる人は限られます。また、それなりの目利きも必要です。
「屋根の形状を工夫して売電」ですが、地方に行くと、屋根のカタチを一面フラットした家を見ます。あのモデルです。10度程度の斜度を付けて南側に太陽光を屋根一面で受け、効率よく売電するのです。
南側にいつ建造物が建つかわからない都市部では難しいところもありますが、地方ならば非常に有効なキャッシュマシーンになりました。
最後に土地を生かして「アパートやマンションを併設する」ということですが、都市部であれば非常に大きな意味を持ちます。実際にマンションの最上階を広くとり、自宅を吹き抜けのお屋敷みたいにしている知人がいます。賃貸併用住宅ですね。
そのマンションの下層階は全て賃貸マンションにしているのですが、これも強力なキャッシュマシーンになります。ただし、立地がものをいうのは言うまでもありません。また、グロスが大きくなり、出口が取りにくくなるのは事実ですね。
「出口を意識せず収益を期待しない」
私は住まいが都心ではありません。また、土地持ちでもありません。そのため、最初から収益は捨てていました。土地代はある程度しょうがなく、立地で選んだのでそのぶん上物は抑えました。ただし、30年、40年というスパンで見ると厳しい立地でしょう。
総額を押さえ、住宅ローン負担を軽くするという考え方です。結局、収益を生む自宅というのはわずかですから、こうするしかありませんでした。また、収益性と子育て環境が必ずしも合致しないというのもあります。
ただし、やはり賃貸と比べて住み心地は大変よく、しかもキャッシュフローが楽になりました。
人口減社会においては、収益が出る物件を除いて、自宅にお金をかけるというのは自分で自分の生活を苦しくする可能性があります。人生の選択肢を増やすためにも、無理せず買うというのが現実的でしょう。
その目安としては、今住んでいる賃貸物件の家賃と住宅ローンが少なくとも等価になるように、あわよくば安くなるように組むというのが身の丈にあった住宅ローンの組み方になります。私は当時の年収の3倍以内を意識し、年収の2倍で落ち着きましたが、都内だと難しいでしょう。
その上で資金的に余剰が出れば、どんどん投資に回していけばよいのですね。
多くの場合、自宅は収益の出ない、つまりお金がお金を生む状態にならない対象です。そこにお金を注ぎ込むリスクは意識されてよいでしょう。こうしたことを踏まえて、ご質問を紹介します。
住宅ローン控除をしつつ、投資もしたい
いつも楽しく拝見しております。40歳のサラリーマン男性です。
今後5年間の投資方針についてご相談です。35年固定住宅ローン残高が2,000万あり、借入金利も来春2年固定ないし3年固定で更新予定です。
今後は繰上返済をせず、住宅ローン控除期間満了(5年後)まで最大幅で控除を受けたいと思っております。
その5年間、毎年80万(月額7万円ほど)づつ計400万の運用について、米国株式を用いた運用を検討しております。現状は20万ほどの日本株式と40万ほどのFX投資、毎月の持株会掛け金2万円のみ行っております。
アドバイスいただけますと幸いです。
住宅ローン控除を繰り上げてまで無理して払う必要は全くない。
お考えの通り、住宅ローンを繰り上げる必要性は薄いと言ってよいでしょう。住宅ローン控除は非常に大きな意味を持ちます。金利が低いので、戻ってくる金額で実質マイナス金利になるからです。ただ、利用している住宅ローンが最適なのか、時々比較サイト(PR)などでチェックするとよりよい条件を探せます。
収入や年齢などの手軽な入力項目で、各銀行の審査通過確率が分かるようになっています。これにより、予め審査に通る確率の低い銀行に申し込む手間が省け、住宅ローン選びが非常に楽になります。すでに借りている人は比較して乗り換えも可能です。
お金を借りたら利息を払うのが常識です。しかし、金利にもよりますが住宅ローン控除に関しては、借りたらお金をくれる状態になっています。ですから、ここは10年の減税期間をフルに活用したほうが良いでしょう。
また、繰り上げると元本が減りますから住宅ローン控除で戻ってくるお金も減ってしまいます。計画的に借り続けるのが良いですね。繰り上げたいならば10年の枠を使い切ってドーンと返せばよいです。
住宅ローン控除と並行して行う、制度を生かした投資
残りの400万の投資ですが、ご夫婦で「つみたてNISA」を使えばちょうど5年で積み立てできる金額になります。また、資金拘束はありますが、税制面で控除が利いてお得なのは個人型確定拠出年金です。
これらの枠を使いながら投資をしていくのが良いでしょう。投資歴にもよりますが、FXや日本の個別株は難しいところです。もし、私の職場の同僚や家族が相談に来たならば、迷わず「手出し無用」と助言します。持株会は自社の成長性に依拠しますが、給与も含めるとかなりの集中投資になるという意識は持っていたいですね。
FXや日本の個別株は遊びならば良いですが、勝てる人が限られる投機的な要素も孕んだ投資です。自分の力を試すという意味では大いにアリですが、虎の子の400万はコンサバに運用したほうがよいと思いますよ。上手い人でしたらごめんなさい。どんどんやってくださいね。
ご質問ありがとうございました。
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まず押さえておきたい、住宅ローンの基礎基本です。
どちらがよいか、というのは単なる数字の定量判断だけで決められないですね。生活の質、定性的な判断も大きいですね。
住宅ローン金利は金額が大きいので、契約の中身が重要になります。