バンガードETFの5年・10年リターンから見えること
バンガードETFの5年・10年リターンをランキングします。
この10年を総括すると、エネルギーセクターが受難の年であったといえます。2010年代前半においては、1バレル100ドルを超えるような場面が常態化したこともあり、大変好調でした。
しかし、その後のシェール革命に伴う原油価格の下落は、世界の原油市場を大きく様変わりさせました。
また、GAFAMを始めとする、大型グロース株が大躍進を遂げました。そのため、ラッセル2000などの小型株指数、中型株指数がリターンでパッとしない傾向があります。この傾向はマザーズがパッとしない日本の状況に似てなくもありません。
さて、早速バンガードETFの【株式】部門から見てみましょう。
バンガードETFの5年、10年リターンランキング【株式編】
それぞれ、配当込みの数字です。5年前、10年前に10000ドル投資をしていたら何ドルになっていたかということになります。4倍を超える数字を示したVGTが圧倒的な強さを示し、1位になっています。
それぞれ、直近のコロナショックでパフォーマンスをかなり落としていますが、それでも余裕の安全域にありますね。
なお、VOOはわずかに10年を経過していませんので設定来で出しています。
順位 | ティッカー | 経費率 | 5年 | 10年 | コメント |
---|---|---|---|---|---|
1 | VGT | 0.10% | 21336 | 42303 | 情報技術 |
2 | VHT | 0.10% | 13259 | 34031 | ヘルスケア |
3 | MGK | 0.07% | 16238 | 33373 | 超大型グロース |
4 | VUG | 0.04% | 15505 | 32111 | 大型グロース |
5 | VCR | 0.10% | 12746 | 31646 | 一般消費財 |
6 | VOOG | 0.16% | 15614 | 30734 | 大型グロース |
7 | VPU | 0.10% | 14788 | 27398 | 公益 |
8 | VOO | 0.03% | 13821 | 26499 | ※設定来 |
9 | VTI | 0.03% | 13216 | 26302 | トータル株 |
10 | VIG | 0.06% | 14182 | 26140 | 増配株式 |
11 | VDC | 0.10% | 12395 | 25372 | 生活必需品 |
12 | VYM | 0.06% | 12168 | 24358 | 高配当 |
13 | VO | 0.04% | 11086 | 23361 | 中型株 |
14 | VIS | 0.10% | 11338 | 22907 | 資本財 |
15 | VXF | 0.10% | 10529 | 22067 | 中小型 |
16 | VB | 0.05% | 10212 | 21275 | 小型 |
17 | VFH | 0.10% | 11427 | 19105 | 金融 |
18 | VOX | 0.80% | 10141 | 18314 | 通信 |
19 | VT | 0.80% | 11473 | 17888 | 全世界 |
20 | VWO | 0.10% | 9448 | 10343 | 新興国 |
21 | VDE | 0.10% | 4115 | 5823 | エネルギー |
22 | VTWO | 0.10% | 9896 | ※ | ラッセル2000 |
ほかにもヨーロッパETFなど様々ありますが、掲載していないものはリターン面と将来性で特に必要を感じなかったものです。そのため、ほとんど米国株ETFが上位にランクインしています。
エネルギーETF、新興国ETF、小型株ETF、受難の10年
ラッセル2000連動のVTWOは10年リターンでソートをかけたので下位にランクされています。しかし、VWOやVDEより優れたリターンです。
エネルギー、新興国受難の10年であったと総括してよいでしょう。
基本になるのはVOOとVTIです。バンガードにおいて最も運用総額の多いETFです。この2つのETFは、1つの指標になります。この2つのETFよりもリターンが低いものをあえて狙うならば、何らかの動機が欲しいところですね。
例えばVTのように、米国投資だけだと不安だから全世界という視点でVTを選ぶ、といったような動機です。値動きを抑えるために安定的な公益を加える、というのも一つの目線になるでしょう。
いずれにしても、たったの10年です。小型株がだめ、新興国がだめ、という話ではなく1つの傾向としてこういう10年だったということですね。 自分がどのようなストーリーを持って投資をするのかという手掛かりになる気がします。
人気ETFであるVTとVTIに対する雑感
VTは米国だけでなく全世界を含むので足を引っ張りました。VTIはわずかですが小型株を含むので足を引っ張りました。この10年でいえば、大型グロースを含んでいるのか、大型情報技術を含んでいるのかが大きなポイントだったわけです。
つまり、GAFAMにどれだけ純化しているかがリターンを分けることになりました。これは、今後もそうである保証は全くなく、やはりここでも大事なのは自分なりのストーリーということになります。
2000年代の圧倒的リターンは中国株だったことを想起すると、そういう結論になります。
先行きは不透明、世界経済を買っていくということならばVTです。米国株を買っていくということならばVOO/IVV/SPY、VTIということになっていくのでしょう。
米国を除いた地域の株式ETFのリターンはマイナス
ちなみに、参考までにバンガード・トータル・インターナショナル・ストック(除く米国)ETF(VXUS)のチャートです。昨今のコロナショックで5年リターンはマイナスになっています。
つまり、VTも内実は米国株部分でリターンを得ているにすぎず、米国を除いた全世界部分はマイナスだということです。
米国を除いた地域のETFが5年リターンでマイナスに落ちているというのは、注目されてよいでしょう。コロナショックのインパクトの大きさを物語っています。
バンガードETFの5年、10年リターンランキング【債券】
次に債券編です。こちらは世界債券であるBNDXのランクがきちんと表示されないと意味をなさないので5年で並び替えをしています。
ティッカー | 経費率 | 5年 | 10年 | コメント |
---|---|---|---|---|
VGLT | 0.05% | 14201 | 23280 | 米長期国債 |
BLV | 0.07% | 13351 | 21665 | 米長期債 |
BIV | 0.07% | 11973 | 16080 | 米中期債 |
VGIT | 0.05% | 11817 | 14498 | 米中期国債 |
BNDX | 0.08% | 11797 | 世界債券 | |
BND | 0.035% | 11784 | 14577 | トータル債券 |
BSV | 0.07% | 11148 | 12347 | 米短期債 |
VGSH | 0.05% | 10915 | 11437 | 米短期国債 |
債券の場合は、単純にリターンで語られるものではなく、安定感が大事になります。そういう意味では、リスクの大きい長期債のリターンが大きいのは当たり前といえばそうですし、短期債のリターンが小さいのは底堅さの裏返しとも言えます。
長期債と高配当ETFであるVYMが近似したリターンなのは興味深いところです。債券の場合は、昨今の債券高で非常にリターンが良く出ています。
関連記事です
高配当ETFとして人気のあるHDVとVYMの違いについてです。
長期保有に適した投資信託を選ぶにはどうすればよいのか、という記事です。
1557は流動性が高く、最も人気のあるS&P500連動ETFとなっています。