ウォーレン・バフェット氏がIBM株を1/3売り抜けました。
長期投資家にとってカリスマとも言えるウォーレン・バフェット氏ですが、2017年に入ってから、IBM株のかなりの部分を売り抜けていたことが判明しました。正確にはバフェット氏の会社であるバークシャーハサウェイ社の持ち分ですね。
バフェット氏はウェルズファーゴ、アップル、コカ・コーラ、IBM、アメックスの順に100億ドル、つまり1兆円以上の保有額を持っていました。今回の売却で、8100万株からおよそ5000万株へとポジションを落としました。
この結果、バフェット氏のIBMへの投資額は100億ドルを割り、ポートフォリオ上はアメックスよりもポジションが軽くなっています。売却した理由は以下の通りです。
- 期待したほど経営手腕を発揮していないため、以前ほどIBMを評価していない。
- ハイテクセクターには巨大かつ強力なライバルがいる
- 株価が180ドル以上の時に相当量を売った
以前はハイテクセクターへの投資はしなかったバフェット氏です。しかし、今回売却したIBMを皮切りに、いまではアップルを大きく買い越すまでに変容しています。
アップルやマイクロソフト、グーグルはIBMにとって巨大かつ強力なライバルの1つであることは間違いありません。
IBM株は近年では120ドル台になることもありました。その時にもバフェット氏は買い進めていました。そのため、180ドルよりも上で売ったということはスケールメリットがモノを言い、それなりの利が乗って売り抜けたということになります。
のこりの5000万株をどうするのかが注目に値するところですが、以前のような確固たる自信というのはすでに持っていないことを明言しています。極端に株価が下がらない限り、今後はポジション維持か縮小に向かうものと思われます。
バフェット氏がIBMを買い始めたのは2011年です。超長期で保有するアメックスやコカ・コーラに比べるとはるかに短い期間で売却判断をしたことになります。
現在大きくポジションを取っているアップルがどうなるかは分かりません。しかし、ハイテクセクターに関しては以前のような超長期のポジションは取りにくい、つまり変化が激しい業界ということは確実に言えます。今後に注視したいと思います。
IBMはと言えば、利回りが4%に乗る、150ドル割れ局面があれば投資妙味が出るかもしれませんね。私は買いませんが。。。
カリスマ投資家の判断に依存した売買は難しい
バフェット氏が優れた投資家であることは間違いのないところです。ただし、私たちが投資をするにあたって、そのまま真似して同じように成功を収めることができるかというと難しい面があります。
理由があります。
- 正確な売買時期が分からないため、タイムラグがある
- 自分で確信を持って買ったわけではないので投資方針がぶれる
以下、もう少し掘り下げて触れたいと思います。
正確な売買時期が分からないため、タイムラグがある
今回は「IBM株が180ドルを上回った時期に相当量(1/3)売った」ということでした。
バフェット氏がIBM株を買ったのは2011年の3月からです。2011年の11月に100億ドル以上買ったことを公表するわけですが、実に2四半期ものタイムラグがありました。
通常は大口は米国証券取引委員会による情報公開義務があるのですが、特例の免除措置を受けてじわじわと買い進めていたわけです。免除措置というのは後出しジャンケンのようなもので、やはり持てる者は情報と権力があるわけです。
その後、バフェット氏が大量保有をしたことが分かると、多くの提灯がつきます。実に200ドルを超える株価を記録します。
しかし、思ったような業績の回復が見られないことから再びジワジワと下落をします。その間も、個人投資家を含む市場関係者の心理的な下支えとして「バフェット氏の主力銘柄である」という事実が効いていました。
今回は2016年11月以降のNYダウを始めとする各米国株指数の上昇を受け、遅れて物色されました。そのため、180ドルを上回る局面がありました。
2月下旬から3月上旬にかけてがそうです。すべてここで売りぬけたわけではないでしょうが、見事と言って良いでしょう。
当然ながら、多くの個人投資家はこれら売買の事実を数か月後に知ります。こういう情報というのは「後から知ってよかった」ということはまずありません。「その時に知っていれば」と思うことが殆どです。
結果として提灯を付けていた個人投資家はひどく狼狽するわけです。カリスマ投資家の売買は参考にはなります。特にバフェット氏のような長期投資家は手口の変化が比較的少ないので真似しやすいです。しかし、正確な売買時期は分かりませんので、今回のような「売り抜け」がしばしばあります。
日本株はさらにエグい売り抜けが仕手株を中心にしょっちゅうありますから、まさに「生き馬の目を抜く」世界と言って良いでしょう。
言うまでもなく、バフェット氏は慈善事業で株式投資をしているわけではありません。自分もしくはバークシャーハサウェイの利益が最大化するために行動しています。売買情報、手口の開示は法律上の義務であり、時には自分と自社の利益を大きくするためのものでしかないと思っておくべきでしょう。
これは、バフェット氏のようなカリスマ投資家に限らず、参考にするブロガーの記事にも言えます。私は以前、長期投資に適した米国株を買うにあたって、こういう記事を書きました。
この方法が優れているのは、誰か一人に依拠することが無いということです。投資の先達の意見に耳を傾けることは大切ですが、多くの意見に耳を傾け、分散投資をしていくということが基本です。
これこそが誰でもできる、先の見えない今を生き抜く投資術であると確信しています。
自分で確信を持って買ったわけではないので投資方針がぶれる
もし、「バフェット氏がIBMを買っているから」という理由だけで買っているならば、バフェット氏が売った瞬間に買い持ちする理由が無くなります。自分で確信を持って買ったわけではないからです。
「誰それが買っているから買おう」というのはとかく投資方針がぶれやすく、あまりよろしくありません。臨機応変は大事ですが、急いては事を仕損じるのも事実だということです。
最大多数投資法でもそうですが、最終的には自分で判断するわけです。
少なくとも事業内容・ROE・PER・各種キャッシュフロー・一株利益・一株配当・配当性向ぐらいを見て、自分で判断したほうが良いでしょう。これらは財務諸表に精通していなくても読めます。
もちろん、開示されている情報は限りがありますし、それが判断の全てではないです。ただ、人の言うことを鵜呑みにして買うという悪癖から距離を置くことができるようになります。
投資の世界とは100の小さな勝ちを積み重ねても、1の大きな負けで退場を迫られる世界です。私たちは謙虚に他者から学び、分散でリスク管理をしていくというのが大切です。バフェット氏は傾斜投資をしていますが、基本は分散投資です。
困難な時代を生き抜く投資術とはそういうことです。
関連記事です。
投資本は自分の投資眼を高めてくれます。ただし、和書で名著は少ないです。
2016年に読んで良かった投資本です。内容は普遍的であり、古くなるものではありません。
四の五の言わず、ロボアドバイザーでETFというのも一つの手でしょう。