【NGG】ナショナルグリッドの基本情報
ナショナルグリッド【NGG】はイギリスの会社です。主に送電とガス事業を行っています。少々マニアックな企業なのですが、安定した利回りを示す高配当が特徴的で、米国のサザン【SO】などと同じく、投資家にはそこそこに名の知れた公益企業です。
イギリスとアメリカの2か国で事業展開をしている
ちなみに、ナショナルグリッド【NGG】はイギリスの電力自由化(1980年代)に伴って生まれた会社です。その時に独占的だった公共電力会社は分割され、送電1社、発電2社になっています。送電1社がナショナルグリッドです。ガスの配給も手掛けています。
送電、ガス配給という組み合わせのインフラ企業ですね。イギリス国内ではイングランド、ウェールズ、スコットランドで電力供給をしています。また、これらに北アイルランドを加えた英国全土でガス供給を行っています。公共事業持ち株会社です。
分社後、現地企業を買収してアメリカ北東部でもガス配給、電力配給、発電を行っています。イギリスでは発電はしていないのですが、海外であるアメリカでは行っています。日本のガス会社、電力会社からは考えられない業務形態ですね。
NGGの現在の配当利回り・1株配当額・配当性向
高配当株として人気がありますので、最初に特に配当面に触れておきます。
基本的には増配傾向ですが、連続増配というわけではありません。英国株ADRということで、為替の影響を受けています。増配率は小さめ、配当性向は高めというということで、保有には注意が必要です。
しかし、かつての日本の電力株を想起させる安定配当は魅力ではあります。直近の配当は5.8%と高配当です。ADRですので、源泉徴収課税が発生しないのも人気の1つになっています。
- 2005年株価55ドル 夏期配当1.512ドル
- 2016年株価65ドル 夏期配当2.187ドル
- 2017年株価64ドル 夏期配当7.8ドル(特別配当)
- 2018年株価54ドル 夏期配当2.06ドル
株価は横ばいです。夏期の配当が大きいのですが、特別配当を除くとほとんど増えていません。あくまでインカムを狙う銘柄になっています。
配当は今のところ安定的にきました。ちなみにこの会社は1年に2回の配当です。米国株のように四半期ごとの配当ではありません。また、夏の配当のほうが大きく、冬はその半分ぐらいです。英国株は年2回の半期配当という企業が多いですね。
送電主体の会社というのがなかなか珍しいところです。このような安定の公益会社でもリーマン時には高値から半値になっています。過去と比較して配当の伸びはまずまずというところですが、もともとが高配当なのでうまみはそれなりにあります。
【NGG】ナショナルグリッドの権利落ち日と受取日
このナショナルグリッド【NGG】ですが、権利落ち日と受取日が2か月ほどずれています。
権利落ち日 | 配当支払い日 | |
---|---|---|
夏期 | 5月20日~末 | 8月10日前後 |
冬期 | 11月20日~末 | 1月10日前後 |
おおむねこのようなカレンダーで毎年動いています。
特に夏の配当は金額も大きいので、私もかつてホルダーだった時にはそれなりにインパクトがありました。
過去の例を見ても、夏期が2ドル前後、冬期が1ドル前後の配当で推移していますね。年間で3ドル前後ということになります。 単純な話ですが、仮に1000万円投資していれば、夏に20万円、冬に10万円出る計算になります。
なかなかインパクトのあるインカムになるため、配当の最大化を図るホルダーには安定して人気があります。
【NGG】ナショナルグリッドは長期保有に値するか
かつてはそれなりに割安感もありましたが、今はさほどの割安感は無いですね。事業形態も送電中心ということで、比較的参入しやすい業態になっています。発電に関してはある程度の地域性はありますが、電力自由化でかつてのような規制産業ではありません。
それでも人口増加地域における公益企業は下値不安が少なく、それなりに手堅い推移をします。
長期保有という視点で見ると、細かな利益確定となる配当目当ての投資家には今も一定の支持がありますね。ただし、この10年のリターンはS&P500などの米国株インデックスにそれなりに劣後しています。公益の特性を考えると、これからも上回る可能性は低いでしょう。
反面、経済危機時には公益は強いことが多いです。しかし、NGGの場合はリーマンショック時には大きく下げました。また、近年キャッシュフローが芳しくありません。配当に関わりますから、このことは頭の片隅においておいて良いですね。
続いて、株価チャートや売り上げと利益などを見てみましょう。
【NGG】ナショナルグリッドの株価チャート
最初に【NGG】ナショナルグリッドの株価チャートを見てみましょう
あえて2005年からのおよそ15年のチャートを出してみました。見て分かるように、ほとんど株価成長はしていませんね。キャピタルを期待するのは業績面からみてもやや厳しい印象です。
下向きのチャートを描いており、上値は90ドル、下値は40ドルというところです。現在は株高感はないものの、割安でもない、そういう位置にあります。ちなみに、チャート下限の40ドルというのはファンダメンタルズを見ても妥当性があると考えます。
ただ、株式市場全体が強気ですから、普通ならそこまで下がるのはなかなか難しそうですね。
【NGG】ナショナルグリッドのBPSとEPS
続いて、NGGの一株当たりの資本(BPS)と利益(EPS)です。EPSは年ごとの多少の上下はあるものの、ほぼ横ばい傾向と言ってよいでしょう。2017年が突出しているのは、事業売却益です。特別配当もそれを反映したものになっています。
電力、公益というのはおおむねこういう推移になりがちです。よく言えば業績は安定的、悪くいうと成長性に課題があるということです。
【NGG】ナショナルグリッドの売り上げと利益
見事な横ばいとなっています。事業の発展性の乏しさが分かります。ただ、一方で営業利益率はほとんど20%を超え続けており、営業利益も安定的です。これは同業他社と比べても優秀ですね。
2017年の落ち込みは事業売却に伴う減少で、これに関しては心配はいりません。ん。成長するわけではありませんが、その経営の安定感は悪くなく、これが今までの高配当を支えてきました。
【NGG】ナショナルグリッドのキャッシュフロー
NGGナショナルグリッドのキャッシュフローです。電力・水道・ガス事業というのはインフラへの設備投資が巨額で、ある意味では装置産業と言える業種です。このNGGのキャッシュフローを見ても営業CFに対しての投資CFの大きさが目立ちます。
このキャッシュフローの減少は懸念材料で、将来に渡る持続可能な配当を出すためには業績の回復が必要です。しばらくこのCFの動向には気を配ったほうが良いでしょう。
NGGナショナルグリッド保有のメリット・デメリット
最後にナショナルグリッド【NGG】保有のメリットデメリットをまとめとして掲載しておきます。
メリットとしては、やはりこの高配当にありますね。しかも、英国株なので、外国源泉徴収課税の10%が引かれないのが大きいです。
私が保有していたのも比較的業績が安定しており、配当が魅力だったからですね。しかし、事業売却あたりから雲行きが怪しくなり、株価の頭打ち感が強くなってきました。
デメリットとしては、売り上げとキャッシュフローの停滞です。売り上げは公益株なので、ナショナルグリッドに限った話ではありませんけどね。
米国企業の場合、基本的にこれらの数字が右肩上がりの企業が多いため、目移りするのも事実です。私の場合は買った時期が良く、キャピタルとインカムで十分利が乗っていたため、いったん仕切り直しをしたというのが真相ですね。
2019年の決算に引き続いて注目したいところです。
NGGを売ったタイミングとその理由
NGGを打ったタイミングと理由について記しておきます。
- ハードアセットで代替以上のインカムが得られる計算がついた
- 停滞する売り上げ、株価動向を見据えた
こういうことになります。本来はNGGに限らず、永久保有として決めた銘柄を積み立て投資というのが望ましいのですが、2011年から2014年のころのように何でも上がるという相場じゃなくなってきましたね。
そういう中にあって、安定したインカムというのは魅力でした。しかし、ハードアセットで代替以上のインカムが得られる計算が付いたために売却しました。事業売却前のピークの株価を見ると、遅きに失した感があります。
持ち株の中では、割とイレギュラーな事象が起きる銘柄でしたね。
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公益株はここでいうオールドエコノミーに該当します。これらをバランスよく配置したのが、VTIやS&P500ということになります。中庸ということです。