特別買収目的会社【SPAC】とは
SPACとはSpecial Purpose Acquisition Companyの略で、直訳すると特別買収目的会社となります。買収を目的に設立する会社ですから、SPAC自体では事業を行いません。
SPACの設立者は、自己資本でSPACを設立します。
そのSPACを上場させて、株式を売り出し、投資家から資金を集めます。この時点ではまだペーパーカンパニーで、「空箱」と呼ばれたりもします。その後、買収する企業を探し、買収します。
SPACと買収された企業が合併することで、買収された企業が存続会社となり、上場を維持します。
SPACという言葉をよく聞くようになったのは近年ですが、仕組み自体は1980年代から存在していました。近年のSPACのIPO数と資金調達額の伸びには目を見張るものがあります。
2020年以降に急増しているのは、コロナショックにより従来のIPO計画を見直さざるを得なくなった企業がSPACを利用するケースが多かったからともいわれています。
SPACの上場社数と資金調達額
出典: SPAC Research(2021は10月末現在)
SPACを設立するのは、著名な機関投資家が多いです。資金を集めるにあたり、信頼性を確保するためにネーム・バリューが必要なためです。また、以下のようなSPACが買収に失敗した場合の投資家保護ルールがあります。
- 上場から12~18か月の間に買収を公表して、24ヶ月以内に買収を完了する。
- 上場後は資金の9割近くを信託する
- 買収に言って数以上の株主の同意が必要
- 買収できなかった場合、利息を付けて資金を返還する
SPACのメリット3点
被買収企業は迅速な株式公開ができる
SPACを利用した株式公開は通常のIPOと比べて5~6ヶ月と時間を大幅に短縮することができるので、被買収会社の株式公開を迅速に行うことができます。これはSPAC自身がすでに公開会社であるため、被買収企業については通常の株式上場の際の審査を行う必要がないためです。
通常の株式公開では、株式上場のために一定の条件をクリアしている必要があります。条件に基づいた株式公開の審査があり、これには1~2年の時間がかかります。
投資家は保護されている
前述したとおり、投資家保護ルールがあり、SPACが買収に失敗した場合のリスクが軽減されています。
投資家は未公開企業に部分出資できる
未公開株式に対しては機関投資家や富裕層などの限られた投資家しか投資することが事実上不可能で、個人投資家にはハードルの高い投資商品でした。しかし、SPAC自体は上場企業ですから、多くの投資家がSPACを1株から投資できます。
SPACのデメリット3選
被買収企業の実体がわかりにくいことがある
未公開企業に部分出資できるという長所は短所でもあります。特別買収目的会社(SPAC)自体は上場をしていても、買収する企業は未公開企業なので、投資家から実体が見えにくいでしょう。
この短所の実例が、2020年6月にトラック界のテスラともいわれる「ニコラ・モーター」が特別買収目的会社(SPAC)に買収され、ナスダックに上場した例です。
一時期は93ドルもの株価がつきましたが、2020年9月には、「誇大広告」の話が持ち上がり、株価は16ドルにまで急落しました。SPACへの投資と言えどもリスクはあるという当たり前のことをさらす結果になりました。
未公開企業の買収を短期間に行う必要がある
前述したとおりSPACには「上場から24カ月以内に未公開企業を買収しなければいけない」というルールがあります。
そのため、未公開企業の買収を短期間で完了する必要があります。結果を急ぐあまり、未公開企業を高値で買収することになりかねません。
SPACが増えると「買収できる」企業が減る
SPACは未公開企業を買収することで初めて体をなすともいえますが、買収したくなるような企業がそうそう常にたくさんあるわけでもありません。買収できないSPACは意味がなくなってしまいますね。
SPACをめぐる、日本での動向
現在、日本ではSPACを設立することができません。海外に目を向けると米国だけでなく、英国、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、韓国でSPACの上場が可能です。
日本でも2021年6月、日本国内でもSPAC(特別買収目的会社)上場解禁に向けた検討が、成長戦略会議で行われ、SPAC制度導入に向け検討を進めていく方針を打ち出すとの報道がありました。
2021年10月には、「第1回 SPAC制度の在り方等に関する研究会」が東京証券取引所の主催で開催されています。
いずれにせよ、現在の日本にSPACの下地がないため、仮に解禁されてもルールを作るところからスタートすることになる故、時間はかかりそうだなと思えます。
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