世界の電気自動車販売台数ランキングから見えること
今は世界の自動車販売の主流はガソリン車やディーゼル車そしてハイブリッド車です。世界の保有台数はおよそ12億台ですが、ガソリン車で7割、ディーゼル車で2割のシェアを持ちます。
ただし、このシェアは流動的です。今後は間違いなくハイブリッド車、最終的には電気自動車のシェアが伸びるからです。
世界的なエコ意識の高まりや、中国や東南アジアの大都市を始めとする大気汚染問題が政策的にも電気自動車の需要を後押しするからです。そして、電気自動車の技術的な向上も見逃せません。
この電気自動車の販売増加は自動車業界の再編のきっかけとなります。技術的な連続性がガソリン車やハイブリッド車より薄く、新規参入が比較的しやすいからです。
例えばガソリンエンジンは部品点数も多く、技術的な積み重ねも必要です。しかし、電気で動くモーターや電池は外注が可能で、部品点数も少ないです。世界の自動車販売台数で重要な地位を占める中国は、電気自動車への需要の切り替わり時機をとらえて、世界に通用する自動車メーカーを育てようとしています。
三洋電気の白物部門を吸収したハイアールや、今やIBMのパソコン部門を吸収し、世界的パソコンメーカーに成長したレノボに続くような企業を自動車業界で育てようとしているのです。これは日本にとっても無関係ではありません。
日本は自動車産業が非常に強く、系列会社を含めるとかなりの経済的貢献と雇用の創出をしています。ブランド力と技術力があるので、すぐにその地位を侵食されるようなことはないでしょうが、ある意味では将来の日本経済の浮沈を握るのが自動車産業と言えなくもありません。
そういう意味で、自動車産業界の革命とも言える電気自動車販売シェアに注目が集まります。
電気自動車の世界販売台数ランキング2015年
- Tesla Model S(米国)- 51,390台
- Nissan Leaf(日本)- 43,870台
- Mitsubishi Outlander PHEV(日本)- 43,259台
- BYD Qin(中国)- 31,898台
- BMW i3(ドイツ)- 24,083台
- Kandi K11 Panda EV(中国)-20,390台
- Renault Zoe(フランス)-18,846台
- BYD Tang(中国)-18,375台
- Chevrolet Volt(米国)-17,508台
- Volkswagen Golf GTE(ドイツ)-17,282台
- BAIC E-Series EV(中国)-16,488台
- Zotye Z100 / Cloud EV(中国)-15,467台
- Volkswagen e-Golf(ドイツ)-15,356台
- Audi A3 e-Tron(ドイツ)-11,962台
- Roewe 550 PHEV(中国)10,711台
- JAC i EV(中国)-10,420台
- Ford Fusion Energi(米国)-9,894台
- Ford C-Max Energi(米国)-9,643台
- Kandi K10 EV(中国)-7,665台
- Kia Soul EV(韓国)-7,510台
世界でのEV・PHEV 販売台数データ[2015年 年間ランキング]|兵庫三菱自動車販売グループ
元データはEVsalesという海外の電気自動車専門サイトですが、兵庫三菱自動車販売グループさんが分かりやすくまとめてくださっていますので、それを引用します。
1位のテスラ・モデルSはテスラモーターズのクルマです。テスラモーターズはアメリカの著名起業家であるイーロン・マスク氏が率いる会社です。米国市場に上場するテスラ株は、思惑を含めて上下動が激しいです。
2位は日産リーフです。日産はこのリーフが世界的に支持をされており、実験的な側面もありましたが成功を収めています。EV界においては、既存の自動車メーカーとして大きな地位を先行して占めつつあります。2016年の販売ではもう少し順位を落としそうです。
3位は三菱アウトランダーです。ヨーロッパで特に人気があります。この車はプラグインで充電するだけではなく、ガソリンで電気を起こし、モーターを動かすという仕組みを持っています。日産は不祥事を起こした三菱を傘下に納めたことで、目指す方向性が一層明確になりました。
4,6,8位は中国メーカーです。殆ど中国国内のみで売れています。にもかかわらず、世界の販売台数でもこのように上位に入ってきています。これには理由があります。
なぜ中国の自動車メーカーがこれほどまでに伸びてきているのか
日本の自動車販売台数が2016年に500万台を割れたのに対し、中国は年間でおよそ2800万台売れています。日本の5倍です。中国の販売台数2800万台というのは、世界一の数字です。
それでもまだ、1人当たりの保有台数は先進諸国に比べて少ないです。10人いれば、アメリカでは8台、日本では6台、中国では1台の普及です。国土の広さや公共交通機関の発達を考えれば伸び率は大きいと言って良いでしょう。年間3000万台が見えてきています。
そういう意味では中国のモータリゼーションは継続的であり、自動車各社は中国でのシェアを握ろうとしのぎを削っています。また、今は中国国内でのみ強みを発揮している中国メーカーですが、その存在感は増してきています。
自動車業界に限らず中国市場の大きさは製造業においては無視できない数字であることが多く、政治的にも強気な発言が目立つのはこういう背景があります。
自動車業界の競争はこれからも激化が続く。気になるトヨタの動き。
日本を代表する自動車メーカーであるトヨタはまだEVに本格参入していません。トヨタはEVは近距離用と位置付けています。トヨタの電気自動車の答えは、プリウスPHVです。これは日本国内では2月に発売予定となっており、注目されています。
おそらくかなり販売に力を入れてくるはずです。すでに、2016年12月の時点でヨーロッパでの電気自動車売上ランキングでは日産リーフに次ぐ5位にランクインしています。
プリウスPHVはPHEVのクルマです。プラグインで充電もしつつ、ガソリンで電気を起こして走ります。三菱アウトランダーと仕組みは同じです。今後も目が離せない過渡期の自動車業界です。
関連記事です。三菱自動車はこのあと日産の傘下に入りました。
自動車より家電業界はより激しいです。参入障壁が比較的低いからです。
イノベーションが欠かせないのはどの業界も同じです。