家電メーカー、終わりの始まりじゃないことを願う
日本の家電といえば1970年から勢いを増し、1990年代には殆ど世界を席巻する勢いでした。GEやウエスチングハウスといった世界をリードしたアメリカ家電メーカーを弱体化させたのが日本企業とも言えるでしょう。
しかし、以前のアメリカと同じようなことが今の日本に起き始めています。
三洋電機は兄弟会社のパナソニックと中国のハイアールに吸収されました。エネループという電池が強みでした。OEM中心でしたがデジカメも強かったんですよね。シャープはホンハイに買収されました。プラズマクラスターなど個性的なヒット商品がありましたが・・・。
関西系ばかりではなく、東芝も不正会計に揺れました。東芝は重電メーカーという位置づけで比較的ワイドモートかと思いましたが、残念です。
ソニーは自社でソニーピクチャーやミュージックというコンテンツを抱え込んだので、著作権がらみで自由な商品開発がしにくくなりました。音楽(MP3)や動画の対応が明らかに遅れました。今も社内の利害調整が難しそうです。しかも、ピクチャー、つまり映画事業はたびたび減損を余儀なくされています。
以前の日本家電の信用性の高さ
以前の日本家電は値段の割に壊れにくいイメージでした。
「20年前の木目調のエアコンが未だに使える!」
「うちの冷蔵庫は15年目!」
という話がけっこうあったように思うんですよね。修理屋さんに聞くと、昔の家電はプラチナなどの貴金属をふんだんに使っていて、今より高価なぶん寿命も長かったそうです。消費電力も大きかったそうですが。
また、修理があっても町のサービスセンターがすぐに取りにきてくれて直してくれる、そんなきめ細かい良さがあった気がします。そしてそれが信用力につながっていたました。いわば家電が高級家具のような存在でした。
時代は下り、いつの間にやら「○○タイマー」とか不名誉な、何年か経つと壊れちゃうイメージを揶揄する言葉が生まれました。
価格競争と間違った高付加価値
ハイアールが中国国内だけでなく海外でもこんなに伸びるとは思わなかった、という話を聞きます。今や世界的家電メーカーです。ハイアールは三洋電機の洗濯機、冷蔵庫といった白物家電部門を買収し、エジソン以来のGEの家電部門も買収しました。勢いありますね。価格競争に圧倒的な強みがあります。
日本家電はかつてのアメリカ家電がそうだったように価格競争に巻き込まれたことと、家電の使い捨て化に翻弄されています。
そのため高付加価値に走るわけですが、一部を除いて「いらない機能」「覚えられない機能」が増え、日本国内だけで通用するガラパゴス化が起きました。その結果、やたらボタンが多かったり、起動するのに時間がかかったり、ライトユーザーからすると敷居の高い商品が増えました。
家電ではないですが携帯電話も一気に無個性のスマホに席巻されてしまいました。日本だけで通用する、ヘビーユーザ向けの高付加価値のあったガラケーが一気に無くなりました。
スマホは完全にコモディテイ化しています。特にアンドロイドスマホはどこでも同じようなものです。パソコンと同じ道をたどりつつあります。もう日本企業が得られるメリットは限りなく薄いです。
※写真は日本家電の勝ち組と言われるパナソニックのページから。なんだかんだ、パナソニックは壊れないし、性能もしっかりしている気がします。相性でしょうか。
再び海外に学ぶしかない
オランダのフィリップスは利益率が世界でトップクラスです。徹底したマーケティングで顧客の心をつかみ、以前より本格的に日本市場にも食い込んできています。
イギリスのダイソンは完全に高所得層に的を絞って高付加価値路線に邁進しています。その斬新なアイデアとデザインは家電の枠を超えています。
フランスのティファールは調理器具に強みを持ち、専門性とそのイメージでブランド価値を高めています。オシャレなデザインも他社と一線を画します。
韓国のLGやサムスン、中国のハイアールは世界中で価格競争を仕掛け、かつての日本メーカーのように総合家電、多角化を目指しています。日本の家電量販店でも展開される製品の種類は確実に増え続けています。
アメリカ企業は分社化し小回りの利いたニッチな強みのある企業に生まれ変わることが頻繁に起きています。そうでない場合は同業や関連業の企業を吸収合併しシェアの獲得で強みを発揮します。
20年、30年後も生き残る企業になるためのラストチャンスが今なのかもしれません。これからの日本の浮沈を握るともいえる日本家電メーカーの今後を応援したいです。
安売り競争は家電のコモディティ化に乗るだけなので、もう勝てないです。
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アマゾンやアップルの製品は本当にイノベーティブな商品を出してきています。