この20年で劇的に変容した世界経済と日本
預金封鎖という説が出てきたり、日本国債や日本円が暴落するという意見があったり、私たちには不安な要素が盛りだくさんです。過度な心配は不要、というのは最初に断っておきたいところです。
しかし、よりよい暮らしを実現するために、従前の価値観とは違う、今の価値観で将来に備える必要はあります。それが投資に対する価値観の変容ですね。
日本経済が右肩上がりではないのは、すでに切実に感じられるところです。日本が長らくデフレだったのに対し、ドルは年率1~2%のインフレでした。為替レートはこの20年でボックスですから、同様に円の価値も国際的には下がっているわけですね。
その円が弱くなった結果の、コロナ以前ここ数年来の外国人旅行者の増加であり、一面では国際競争力の維持であると言えるでしょう。
コロナで冷え込む前のインバウンド景気は記憶に新しいところです。観光が脚光を浴びているのは、何も日本の観光資源の魅力が世界に認められたという、良い面だけの話ではありません。通貨競争力の面で日本が割安に感じられるようになったからという側面がありますね。
世界は広く、割安で素晴らしい観光資源を持つ国が多々あります。日本だけが持つ文化の奥ゆかしさ、観光資源の良さももちろんあります。しかし、一番の理由は世界から見て相対的に日本が経済的に弱くなり、物価が安い、来やすくなったということです。
なぜ世界中でインド旅行やタイ旅行がいつの時代ももてはやされるのか。なぜ、ヨーロッパ旅行が一部の限られた人にしかウケないのか。その国の持つ良さだけでなく、価格という経済力が勘案されていることは間違いありません。
さて、長くなりましたがご質問を紹介します。
日本円と日本国債はどうなるのか
いつも楽しく拝見させて頂き有難うございます。
お忙しい中大変恐縮ですが、たぱぞうさんによろしければご見解を頂ければと思い質問させて頂きました。ずばり「日本円(日本国債)」についてです。
長期的には円安というたぱぞうさんのご見解は私も全く同意見です。しかしながら私は更に悲観的(悲劇的)なのではないかと最近感じはじめています。
日本は超高齢社会であることより、ある程度以上の高インフレ(超円安)は政治的にも社会的にも持たないと思われます。一方でもはや日本の財政状況を考えるとソフトランディングは不可能であるとも感じます。
そうであるならば70年前と同様、『預金封鎖・新円切り替え』という名の元に『財産課税』が行われるのではないか?という点です。「マイナンバー・国外財産調書・出国税」などどれを見てもその布石なのでは?と思うのは私が心配性なだけでしょうか?たぱぞうさんのご見解を伺えれば幸いです。
財政破綻、預金封鎖への対策をどう考えるか
不確実性の高い話題になりますが、見解を記しておきます。
まず、自国通貨が信頼できる国というのは世界においてはそう多くないということです。例えば私が駐在していた開発途上国では、現地通貨のインフレが激しく、毎年のように価値が下落していました。
例えて言うと、去年500円で食べられていたラーメンが、今年は700円、翌年は800円、このようにジワジワと値上がりするのです。結局、10年で定食のような庶民の食事が倍以上値上がりをしました。
高成長の国でしたので、現地の人たちの給与も右肩上がりでした。一方、私たち外国人への給与はドルで支払われるのが普通でした。ホテル、レストランなどもドル払いが歓迎されました。
もちろん、国の指導で現地通貨払いは奨励されるものの、その価値が数年後には下がっていることが明確でしたので、現地の人も含めてドルが歓迎されていました。特に100ドルを超えるような支払では高額紙幣が喜ばれました。
この国に限らず、自国通貨よりもドルが信頼され、流通している国は多くあります。紙幣や硬貨は結局は商品引換券にしかすぎません。その価値を裏付けてくれる中央銀行と国家の経営が怪しくなれば、国の通貨の信頼も失墜してしまうのです。それが、極端なインフレということになります。
これらの経験から、個人的には自国通貨のみを財産とするのは日本に限らず違和感があります。ましてや日本の場合は国債が大量に積み上がり、金利負担を抑えるためにも低金利の継続は必須です。株式市場もこの20年で最高値を更新できていません。
まさに地域と対象の分散投資が求められていると言って良いでしょう。
日本円で給与を得ているならば投資を米ドルなどの分散アセットにする
もし、日本円で給与を得ているならば、退職金も含めてかなりの円ポジションを持つことになります。私の感覚からすると、これはとても偏った投資バランスになります。
例えば株式は米ドルで持つ、しかも何らかの現金以外のアセットで持つ。こういうバランスを考えて投資をしたいと思い実行しています。米国株は、成長国であり、法整備がされていることから投資妙味があります。それは100年以上成長を続けてきているNYダウ30種やS&P500、ナスダックを見ても明らかです。
また、不動産は価値が上がることはエリアとしては稀ですが、低金利での借入は円の希釈に対する備えになります。借金が、インフレになれば希釈化されるからです。
いずれにしても、不確実性が高く、喫緊の課題というわけではありませんが、投資の方向性に反映させていくのは大事なことと思います。
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海外投資はもはや完全に定着した感がありますね。
セクターETFをどのように活用していくのかということです。
経済成長だけでなく、公正かつ価値の上昇するマーケットであることが投資先としては大事です。