外国税額控除は米国株投資に必須
米国株投資における外国税額控除とは、米国内で源泉徴収された税金を控除してもらう制度です。米国での税金は、株式売買益にはかかりません。売買に伴う譲渡益税は、日本国内の2割ということです。
しかし、配当金・分配金は米国内で10%の源泉徴収課税がかかったあとに、さらに日本でおよそ20%引かれます。
外国税額控除とは、この米国内での10%源泉徴収課税を控除してもらうということです。ただ、この10%という数字は、いつでも10%きっちり貰えるという意味ではありません。10%を上限として控除をするという意味です。
日米間の租税条約により、二重課税をしないという取り決めをしています。それに基づいて、米国で支払った税金分を請求するのが確定申告ということになります。米国株投資においては、損だしと並んで重要な知識です。
さて、今回は外国税額控除についてご質問をいただきました。ここでご紹介したいと思います。
外国税額控除は所得税額によって変わる?
自分も最近米国ETFを購入しあと2年位で退職して配当金で生活しようと思ってるんですが、どこかのブログで収入がなければ外国税額控除で10%取り返せないと書いてあった気がします。
確か控除限度額の
①所得税額×③国外所得総額÷②所得総額
が計算できないからだった気がします。自分はブログもやってないし、何の収入もなくなるのでこれが本当ならかなり痛手なのですが、本当でしょうか?教えて下さればありがたいです。
外国税額控除は10%フルに返ってくるわけではない
ご質問ありがとうございます。さて、前述のとおり外国税額控除は、10%まで還付される可能性があるという話です。そのため、10%フルに返ってくるわけではありません。
それはおっしゃる通り、所得税からの控除という形になるからです。つまり、下記の控除限度額を超えて控除されることがないのです。
所得税額×国外所得総額/所得総額=「所得税の控除限度額」
「所得税の控除限度額」と外国所得税額の少ないほうが優先され、これに復興特別所得税の控除限度額が乗った額が控除税額になります。もっとも、復興特別所得税の控除限度額は金額が小さいです。
控除しきれない分は、地方税、つまり住民税のほうから控除されることになります。住民税からも控除しきれないと、3年繰越ができます。しかし、長期で高額の配当をもらうと繰越しても意味がない、取り切れないということもありえます。
道府県民税=所得税の控除限度額×12%
市町村民税=所得税の控除限度額×18%
という計算式になります。
長くなりましたが、所得税額が小さいと質問者様が懸念されるとおりの結果になると予想されます。ただ、他の控除の関係など様々ありますので、これを期に念のため最寄りの税務署や税理士さんに確認されることをおすすめします。
ちなみに、配当控除は外国株の場合に使えません。付け加えますと、住宅ローン減税も所得税からの控除です。そのため、外国税額控除と住宅ローン控除で所得税分を取り合い、思ったほどの控除が受けられない可能性もあります。
外国税額控除の還付をあてにしない投資術とは
外国源泉徴収課税のない銘柄を狙うのも手でしょう。例えば、英国株、豪国株は外国源泉徴収課税がありません。例外的にフィリップモリスなどもわずかな額の徴収になっています。米国連続増配株に比べると増配ペースはやや劣りますが、配当金が高いものが多いですね。
ちなみにベルギーのアンハイザーブッシュインベブ【BUD】は32.87%源泉徴収課税があります。アイルランド籍になった、コンサルのアクセンチュアは20%です。このように源泉徴収課税率は国によって異なります。
また、配当を出さない株式、例えばバークシャーハサウェイ【BRK】やアルファベット、アマゾン【AMZN]】などを狙っていくという手もあるでしょう。売買益に関しては、源泉徴収課税が無いからです。配当をせずに再投資していく企業というのは、外国税額控除を考えるとこれも妙味があります。
ちなみに、楽天VTIやeMaxis Slim米国株式などは最初から外国源泉徴収課税分を放棄しています。投資信託の場合は国内の20%分が課税されていませんので、その繰り延べでのメリットである程度相殺されるような形になっています。
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損だしの効果は大きいです。円安をうまく使うと損だしもしやすいです。投資と節税は資産運用の両輪と言ってよいですね。
安くなったとはいえ、米国株はまだまだ手数料が日本株に比べると割高です。
英国連邦株のように、外国源泉徴収課税が無くなると米国株もさらに人気化するのでしょうね。確定申告に慣れないと、なかなかの手間と感じることでしょう。