人口減社会の現実と向き合う
日本の人口は2004年にピークを迎えた後、減少に転じています。人口は今のままだと反転することなく減り続けるという予測です。
- 2004年 1億2784万人
- 2030年 1億1522万人
- 2050年 9515万人
- 2100年 4771万人
日本史上、これだけ急激に人口が長期にわたって減少したことはありません。国土交通省が有名な資料を出しているので、引用して紹介したいと思います。
https://www.mlit.go.jp/common/000135837.pdf
人口予測は国連統計などを見てもそうですが、比較的精度が高いです。そういう意味ではかなりの確率で高位推計から低位推計の範囲に収まってくると考えてよいでしょう。この範囲に収まらないケース、それが移民政策導入ということになります。
移民政策を導入しない限り急激な人口減は避けられない。このことは知っておくべき知識だと考えます。
人口減社会の現実の1つ、高齢化率の急激な上昇
このグラフで同時に注目されてよいことがあります。それは高齢化率です。
- 2004年 19.6%
- 2030年 31.8%
- 2050年 39.6%
- 2100年 40.6%
特に、2050年までの高齢化率の進行が目立つところです。それに対して、2100年までのその後の高齢化率はほとんど横ばいです。これは、団塊世代、そしてさらに現在40代後半から50代前半の団塊ジュニア世代の人口が多いことによるものです。
つまり、2050年時点で団塊ジュニア世代は75歳~85歳の枠内に入ってきます。平均寿命は85歳前後と見積もられています。そのため、その後の大きなベビーブーマー世代が無いために、人口ピラミッドも平準化されるということです。
人口ピラミッドが柱状になると、世代別人口が平準化されます。そのため、高齢化率も落ちつきます。具体的には40%前後で推移するということです。
ここで問題になるのは、年金を始めとする現在の社会システムがそれに対応したものではないということです。多くの若年層、壮年層、つまり現役世代が少ない高齢層を支えるという仕組みが基本になっています。高度成長期に設計されたシステムだからです。
しかし、今後はその前提条件が崩れます。そのため、年金で言うならば、4人の現役世代が1名の高齢者を支えていたのが、3人で1人、2人で1人、最終的には1人が1人を支えるという構図になります。
これはそっくりそのまま、現役世代の税負担増、特に社会保障費の負担の増加を意味します。つまり、仮に給与が増えたとしてもそれ以上に増える社会保障費の増加が現役世代の所得、手取りを圧迫するということです。
給与をもらって、その日暮らし、その月暮らしをしているといつまでも豊かになれない、そんな時代が迫っています。そのスパイラルから逃れるためには、貯蓄・運用し、自分なりの収入を得て勤労収入を補うなど、収入の複線化が必要になります。
人口減社会がすでに進展している地方
この図を見ても分かるように、2050年時点で人口増加の地点はほとんどありません。東京都心部、名古屋市中心部のみです。ちなみに、オレンジも減少地域です。すると、首都圏で言うならば埼玉、千葉、神奈川でさえも減少が見込まれていることがわかります。
地方はすでに高齢化が進んでおり、高齢人口自体は横ばいになります。ただし、生産年齢は減り続けますので、高齢化率はさらに進展するでしょう。
私たちの生活を見てもすでに若年人口は相当数大都市に集中してきています。両親が地方、その子ども世代や孫は都市部という家族スタイルが増えています。これは労働人口の地方での枯渇、地方の富の大都市への移転ということが言えます。
人口減社会に対応できない社会インフラ
高度成長に合わせて、道路、橋梁、水道、電気、あるいは雇用のための○○館、つまり箱モノなどを急速に整備してきました。これらの維持管理費が無視できない金額になり始めています。
生活を豊かにするためのものだった社会インフラが、生活を圧迫し始めているのです。社会インフラは作って終わりではなく、毎年維持管理費が発生します。そして、耐久年数を超えたら、大規模な修繕費を投じて更新しなくてはなりません。
今後、高度成長期に構築した社会インフラが一斉に更新期を迎えてきます。2030年までに2倍の金額に達すると予測されています。
予算のことを考えるならば、人口減に合わせて精選という発想が必要であり、廃止するものと更新するものを切り分けなくてはいけません。
しかし、減らすというマイナスの発想には多くの時間と合意形成が必要になります。そのため、決まったときには「時すでに遅し」となっているケースが多々あります。
人口減社会の投資術とは
私たちが生活を営む上で、人口減社会というのは大きな課題であることは間違いありません。しかし、私は過度に悲観する必要は無いと考えています。それは、世界単位で見ればまだまだ人口が増え続けることが予測されるからです。
幸いにして日本はまだ世界第4位の経済大国です。そして、給与も世界水準で見れば低下しつつあるものの上位にあります。一人当たりGDPは20位台です。シンガポールや香港といった都市国家には負けていますが、都市国家を除いたアジアトップレベルの豊かさであるのは事実です。
世界に目を向け、可能性のある国の市場に投資をすること。そのことで現在の富を未来に移転することが可能だと思っています。「たぱぞうの米国株投資」ではそういう考えに基づいて記事を書いています。
もちろん、可能性のないことに期待を抱くのは違います。イノベーションにより日本の地位が保たれ、豊かな暮らしが永続されるというのはそれに類するものでしょう。私たちは現実を冷静に受け止め、適切に対応することです。
そうすれば、未来を恐れることなく、未来を信じて生き抜くことができる。私はそう確信しています。
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意志あるところに道は拓けるということですね。