ジョンソンエンドジョンソン【JNJ】のベビーパウダー騒動に関して
ジョンソンエンドジョンソンのベビーパウダーにアスベストが混入していたということで、騒動になっています。アスベストは遅効性ではあるもののの毒性が極めて高く、悪性中皮腫という特殊ながんを引き起こすことで知られています。
ベビーパウダーにはタルク(滑石)という鉱石が含まれています。子どものころにアスファルトや壁にチョークのようなもので絵を描いたことは無いでしょうか。あれは蝋石と呼ばれますが、粘性鉱物として非常に似たものです。鉱石ですが純度の高いものは爪で傷つけられるほど柔らかいという性質があります。
このタルクの鉱脈とアスベスト鉱脈が近いことがしばしばあり、そのため混入することがあります。また、かつては粗悪なタルクが多くありました。粗悪というのは不純物が多いものです。しかし、最近ではタルクの品質管理が行き届いており、不純物の混入はほとんどないとされてきました。
しかし、報道ではジョンソンエンドジョンソンは1970年代からアスベスト混入の可能性を知りつつ、ベビーパウダーを販売していたとされています。
そもそもベビーパウダーはタルクとデンプンが主原料です。タルクは粉体にするには相性のいい鉱石で、これによりすべすべ感を出します。デンプンは皮膚表面において、過剰な湿気、汗などを吸収してサラサラ感を出します。
肌につけるものに鉱石というと違和感があるかもしれません。しかし、ファンデーションなどを始めとするメイク用品にも幅広く使われているものです。ベビーパウダーに限ったことではないということですね。
このベビーパウダーは特に赤ちゃんのあせもに良いとされ、ジョンソンエンドジョンソンに限らず一般医薬品を取り扱う各社から販売されています。日本ではシッカロールの和光堂も有名です。成分は殆ど同じです。
実はこの混入は今に始まったことではなく、1987年に日本でも騒動になりました。現在の独立行政法人 産業医学総合研究所の調査によって、ベビーパウダーを扱う11社19製品のうち5社5製品に関してアスベストの混入が認められたという事件です。
その後、実際に2000年代後半にはベビーパウダーの使用によって悪性中皮腫を発症した、滑りをよくする粉体として使っていた時計の技師や、医療手袋の再利用のために使用した看護師に労災認定が下りています。この時にどこのメーカーのものを使っていたかは分かりませんので、念のため付言しておきます。
また、1987年以後は日本においてはこのタルクの管理について厚生省、今の厚生労働省から通達が出ており、それ以後各社ではアスベストが混入しないようにロットごとの厳しい管理がされています。
米国において管理監督はアメリカ食品医薬品局(FDA)が行っていますが、検査の結果、やはりここでもタルクにアスベストは混入していないという見解を示していました。
とはいえ、米国ではこのタルクにアスベスト混入を疑う訴訟は各地で起きており、陪審員裁判による勝敗もまちまちです。2016年、2017年とミズーリ州とカリフォルニア州で訴訟が起きており、引き続いて米国全土でおよそ1.1万件にも及ぶ訴訟案件があります。
米国においては特にロイターがこの騒動を深く扱っており、今後の行方が注目されるところです。つまり、昨日今日の突然の話題ではないということです。
また、ジョンソンエンドジョンソンは製造元ではありますが、もともとのタルクの調達は別メーカーです。もし、これが本当にアスベスト混入ということになれば、タルクを含む製品を出している一般医薬品メーカーや化粧品メーカーに問題が波及する可能性があります。
ロイターもジョンソンエンドジョンソンも社運を賭けた裁判になる可能性がある
ロイターは言うまでもなく世界的に信頼の高い国際ニュース通信社であり、根拠のない報道をするとは思えません。逆に訴訟リスクもあるため、それなりの裏付けと自信があっての今回の報道でしょう。
対するジョンソンエンドジョンソンは品質管理に定評があります。1982年にタイレノールという頭痛薬に何者かがシアン化合物を入れ、7名の死者を出した事件がありました。その時は従業員を総動員をし、1億ドルをかけて回収しました。製造過程で起きたことではない、何者かによる悪意ある混入事件でしたが、この時の安全対策で非常に評価を上げたという社歴があります。
いずれにせよ、今の時点で結論付けるにはやや早急で、十分なエビデンスと両社の主張を吟味して判断していく必要があるということですね。同時にアメリカ食品医薬品局(FDA)の再検査と公式見解が待たれるところでもあります。
株価は地合いもあって大きく下げ方向で反応している
ロイターの報道を受け、ジョンソンエンドジョンソンは10%を超える下げ幅を記録しました。この日500ドル下げたNYダウですが、ジョンソンエンドジョンソンの影響だけで100ドルほど下げています。
数年来の係争案件にしては、1日でここまで反応するのは意外性があります。やはり地合いが悲観に傾いていることを象徴していますね。個別株リスクを顕在化させたとも言えます。
安心安全、何より人命が関わりますので今後の展開に注目したいところです。
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