注目されるレイ・ダリオ氏のオールウェザー投資
レイ・ダリオ氏のオールウェザー投資が再び注目されています。大きな理由の1つは、現在の状況です。すなわち、「株高・債券高・商品高」です。これらの商品は全てペーパーアセットで買えます。
もともと、株式のリスクが非常に大きいため、そのリスクを軽減させるために逆相関にある債券や商品、特に金を入れるというのは妥当性のある主張でした。しかし、今の相場が興味深いのは、ほとんどすべてのアセットが値上がりしているということです。
欧州の経済不安、米国の基礎指標の強さ、米中貿易摩擦の長期化、これらが強弱混在の市況を招いています。そのため、株高だけでなく、本来ディフェンシブな役割を求められる債券、金と言ったところがキャピタルも取れるようになっています。
そういう意味では、若干この債券重視のポートフォリオの強さは時期的なものとして少々割り引いて考える必要があると思います。かつて、これほどまでに債券がもてはやされた時期もあまりないですね。
レイ・ダリオ氏のオールウェザー投資とはどのようなものか
さて、レイ・ダリオ氏のオールウェザー投資をご存じない方もいらっしゃるでしょう。そこで、さわりだけ触れておきます。
まず、レイ・ダリオ氏はメリルリンチを経て、投資ファンドのブリッジウォーターの創業に関係します。米国では、成功したプロの投資家としてよく知られています。そのレイ・ダリオ氏の主張は以下の通りです。
経済は4つの季節に分けられる
レイ・ダリオ氏は経済には4つの季節があるとします。
- 経済成長期
- 経済停滞期
- インフレ期
- デフレ期
経済にはこの4つの季節があり、それぞれ季節に合った商品を組み合わせると良いというのが主張です。どの季節でも資産が増えるアセットというのは無く、それぞれの強みを生かすということです。
なお、この季節は実際の春夏秋冬と違い、巡る順番が決まっているものではありません。
プロのファンドなどと違い、個人投資家でその都度レバレッジを効かせたり、オプションを組み入れたりするのは負担になります。そのため、実際に個人で運用する場合には、適宜入れ替えるというよりも、固定で割合を決めておくということになります。
レイ・ダリオ氏が推奨するアセットアロケーション
以上を踏まえてポートフォリオを組成すると、以下のようになります。
- 株式:30%
- 中期米国債(7〜10年物):15%
- 長期米国債(20〜25年物):40%
- 金:7.5%
- 商品:7.5%
まず、株式が非常に低いことに気が付きます。これは、以下の考えに基づくものです。
- 個人投資家は株式のリスク許容度が低い
- 株式は債券の3倍リスクがある
こういうことです。リーマンショックやチャイナショックを見て分かるように、株式は値動きが激しいものです。上下のブレをリスクと言いますが、この許容度が個人投資家は低いというわけです。
それに対して、債券はベータ値が当然ながら低く、値動きがマイルドです。そのため、債券の割合を多く入れると、個人投資家向けのポートフォリオが出来上がるとしています。
中長期の国債が大きい割合を占めるのは、短期だとリターンの面で物足りないからですね。
守りに強いポートフォリオになる
その結果、以下のような守りに強いポートフォリオになります。過去75年間での損失です。
- S&P500 下落回数18回 最大-43% 平均-11%
- オールシーズンズ 下落回数10回 最大-3.93% 平均-1.63%
最大下落はリーマンショック時です。その時でさえ、-3.93%というのは素晴らしい数字ですね。詳述しませんが、米国長期国債のリターンというのは実は株式と比べても悪くないです。守りつつリターンも欲しい、そういう人にとっては訴求力の高いポートフォリオになっています。
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詳しくはこちらの本をご覧ください。さて、こうしたことを踏まえて、ご質問をご紹介します。
レイ・ダリオ氏のオール・ウェザーポートフォリオはどう思いますか
いつも有益な情報で参考にさせて頂いています。
長期米国債ETFはどのようにお考えでしょうか?
私自身は、現在、種々の理由によりセミリタイヤをしており、米国高配当株ではなく米国インデックス等を成長率以下で売却して現金を得ています(この方法のほうが、税制的に有利と思っています)。「増やすより、減らさない」を基本としています。
当初は、債券:株式 =(年齢%):(1 - 年齢%)を基本としてBNDを保持していましたが、レイ・ダリオのオール・ウェザー(全天候型)ポートフォリオの影響を受け、株式の割合を減らし、債券も残存期間で区別することを学びました。
8月の長期債利回りの減少の前に長期債ETFを買っており、その際に株式価格の低下に反して長期債ETF価格の上昇を目の当たりにして、レイ・ダリオの勧める長期債の力を実感しました。
債券は、総株式価値減少の際の単なる避難場所ではなく、長期債ETFを利用することで債券価値の上昇を積極的に取り入れることを考えるようになりました。
BNDは短期、中期および長期米国債+社債ですし、長期米国債のみのETFはどのようにお考えでしょうか?当方は生米国債は購入する気なく、代わりにETFのEDVやVGLTを考えています。
社債の入ったBLVの方が配当利回りは良いのですが、やはりEDVやVGLTよりベーター値は高く(BNDよりは低いのですが)、社債の安心度は米国債より低いので(BLVの社債はBBBですし)。
また、生活基盤は日本で為替の影響がありますので、資産の一部を日本の個人向け変動10年国債で所有しています(現金や貯金で保有するより安全と考えています(1000万円以上でも日本国がついてますし)。
しかし、銀行のサービスを獲得するには十分以上がありますし(現在総資産の30%程度)、長期米国債ETFの不景気時における価格上昇も考え合わせると、個人向け変動10年国債を減らして、円高の際にドルにしておいて、いずれ長期米国債ETFにしようかと考えています。
不景気前の株価ひと暴騰の際の債券ETF価格の低下はその後の不景気ことを考えると、これから良い買い場が来ると思いますので、御教授願えればと思っています。
お忙しいところ、申し訳ありませんが、blogにてご回答いただければと思っております。また、今後とも有益な情報を発信ください。期待しております。
債券を厚めに入れるというのは、非常に理にかなっています。
セミリタイア後に債券を厚めに入れるというのは非常に理にかなっています。株式というのは、もともとが非常にボラタイルだからです。とはいえ、現役で労働収入が入るうちは、いつでも損失が補填できるので株式を厚めにして問題ないでしょう。
ポートフォリオの入れ替えを少なくとも年1回程度行いつつ、手入れをしていくことを厭わないというならば、妥当性はあるように感じます。
とはいえ、冒頭で述べたように現状はすべてのアセットが上昇しています。この1年でのリターンはややできすぎですが、本来の株式リスクを抑える、ということでしたら妥当性があるという話ですね。
手間がかかると感じるならば、
- 債券7:株式3
- 債券6:株式4
VTIあるいはVOO/IVV、さらにBND/AGGで組むというのもアリかと思います。こちらのほうが管理はより楽です。
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株式の比率という意味においては、ちょっと似た考え方かもしれません。グローバル3倍3分法です。
グローバルにポートフォリオが形成できるのが海外ETFの面白いところです。ただし、当然為替リスクもあるので、そこは私たち日本人投資家の難しいところですね。
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