世界のイノベーティブな企業Top 50【2021】
経営コンサルティングファームのボストン・コンサルティング・グループ(以下:BCG)は2005年から毎年イノベーション企業ランキングトップ50を発表しています。
イノベーション、日本語なら技術革新とでも表現すればいいでしょうか。
BCGのレポートによると、新型コロナウィルスによるパンデミック以降、エクセレントカンパニーは、レジリエンス(回復力)を高める手段として、これまで以上に緊急性を持ってイノベーションに取り組むようになってきているとしています。
実際、イノベーションを経営の優先課題の上位3位以内とした企業は75%にのぼりました。一方で、イノベーション戦略とそれに沿った仕組みの構築ができている企業は20%に過ぎないとも報告しています。
Top 50にランクインした企業は世界で屈指のイノベーティブな企業と言えるのでしょう。実際、イノベーションの戦略と仕組みを確立している企業は、そうでない企業に比べ、新製品や新サービス、新しいビジネスモデルの開発投資において約3~4倍のROI(投資利益率)を実現しています。
また、コロナ危機前に調査した2020年のランキング上位50社の2020年のTSR(株主総利回り、キャピタルゲインと配当を合計したもの)は、MSCI Worldインデックスを17%ポイント上回っています。
株式投資の視点においても、知っておいて損はなさそうな結果ですね。
出所: BCG website
このランキングは、世界各国の広い範囲の業種の経営幹部を対象に、イノベーションに優れた企業や自社のイノベーションへの取り組みについて訊ねた調査です。
BCGが初めてこの調査を実施したのは2004年で、15回目の調査となる2020年の調査は約1,600名から回答を得ています。
調査は2020年9月から10月と、2021年1月から3月の2回に分けて実施されました。ランキングの作成にあたっては、企業のパフォーマンスを以下の4つの項目で評価し、スコアの平均を取っています。
- 全回答者からの得票数
- 自社の業界からの得票数
- 異業種からの得票の多様性指数(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)
- 2017年12月31日から2020年12月31日までの3年間のTSR(株主総利回り、自社株買いを含む)
約1600人の回答者というところで、定性的なバイアスもあるでしょう。しかし、そこは異業種からの得票や、TSRで公平性を確保しているということでしょうか。
世界のイノベーティブな企業Top50
では、ランキングを見てみましょう。
Rank | Company | Industry | 本社所在国 | 2020 |
---|---|---|---|---|
1 | Apple | Technology | U.S. | — |
2 | Alphabet | Technology | U.S. | — |
3 | Amazon | Consumer Goods | U.S. | — |
4 | Microsoft | Technology | U.S. | — |
5 | Tesla | Transport & Energy | U.S. | 6 |
6 | Samsung | Technology | South Korea | -1 |
7 | IBM | Technology | U.S. | 1 |
8 | Huawei | Technology | China | -2 |
9 | Sony | Consumer Goods | Japan | — |
10 | Pfizer | Healthcare | U.S. | Return |
11 | Siemens | Technology | Germany | 10 |
12 | LG Electronics | Consumer Goods | South Korea | 6 |
13 | Technology | U.S. | -3 | |
14 | Alibaba | Consumer Goods | China | -7 |
15 | Oracle | Technology | U.S. | 10 |
16 | Dell | Technology | U.S. | 4 |
17 | Cisco Systems | Technology | U.S. | -5 |
18 | Target | Consumer Goods | U.S. | 4 |
19 | HP Inc. | Technology | U.S. | -4 |
20 | Johnson & Johnson | Healthcare | U.S. | 6 |
21 | Toyota | Transport & Energy | Japan | 20 |
22 | Salesforce | Technology | U.S. | 13 |
23 | Walmart | Consumer Goods | U.S. | -10 |
24 | Nike | Consumer Goods | U.S. | -8 |
25 | Lenovo | Technology | Hong Kong SAR | Return |
26 | Tencent | Consumer Goods | China | -12 |
27 | Procter & Gamble | Consumer Goods | U.S. | 12 |
28 | Coca-Cola | Consumer Goods | U.S. | 20 |
29 | Abbott Labs | Healthcare | U.S. | New |
30 | Bosch | Transport & Energy | Germany | 3 |
31 | Xiaomi | Technology | China | -7 |
32 | Ikea | Consumer Goods | Netherlands | Return |
33 | Fast Retailing | Consumer Goods | Japan | Return |
34 | Adidas | Consumer Goods | Germany | Return |
35 | Merck & Co. | Healthcare | U.S. | Return |
36 | Novartis | Healthcare | Switzerland | 11 |
37 | Ebay | Consumer Goods | U.S. | Return |
38 | PepsiCo | Consumer Goods | U.S. | Return |
39 | Hyundai | Transport & Energy | South Korea | Return |
40 | SAP | Technology | Germany | -13 |
41 | Inditex | Consumer Goods | Spain | Return |
42 | Moderna | Healthcare | U.S. | New |
43 | Philips | Healthcare | Netherlands | -20 |
44 | Disney | Media & Telecomms | U.S. | Return |
45 | Mitsubishi | Transport & Energy | Japan | New |
46 | Comcast | Media & Telecomms | U.S. | New |
47 | GE | Transport & Energy | U.S. | Return |
48 | Roche | Healthcare | Switzerland | Return |
49 | AstraZeneca | Healthcare | UK | New |
50 | Bayer | Healthcare | Germany | -12 |
“2020”が”-“なら、前年との変化なし、プラスなら順位が上昇、マイナスなら順位が下落、”Return“は返り咲き、”New”は初登場という意味です。
世界のイノベーティブな企業Top50の順位とシンプルコメント
1位から4位はいわゆるGAFAMのF以外です。Facebookも13位にランクインしていますので、GAFAMはイノベーティブな企業と思われていると理解してよさそうです。
「破壊的イノベーション」が期待できる企業に投資しているとする、【ARKK】でウエイトが高いテスラも順位を上げてベスト5に入っています。
今回のランキングで特徴的なのは、新型コロナウィルスワクチン製造企業が躍進していることです。ファイザーは返り咲いて10位です。モデルナ、アストラゼネカもランクインしています。
時価総額ランキングではなかなかお目にかかれない日本企業も、このランキングには顔を出しています。Executiveたちの投票という、客観だけではないランク付けの性格が反映されていると言ってよいでしょう。
ソニーが9位にランクインしていますね。トヨタ自動車は前年から20位順位を上げています。ファースト・リテイリングは返り咲きました。同様に、韓国企業もいくつかランクインしているのが興味深いです。
41位のインティデックスはファースト・リテイリングのライバル企業です。ブランド名でいうとZARAを傘下に持つ会社と言えばなじみがあると思います。
公表資料にもう一つ興味深い記述があります。
ランクインした企業の多くに見られる特徴は、リーダー層における性別や民族の多様性(diversity)が高い傾向にあることだそうです。
たとえば、マイクロソフト、アリババ、シスコ、フィリップス、ノバルティスなどは高い水準でダイバーシティ&インクルージョンを実現しています。
データの解析から、イノベーションが多様性を高めるのではなく、多様性がイノベーションを促進することが分かっています。イノベーションをおこす準備態勢を整えるドライバーのひとつとして、取り組むべき領域だということです。
多様性は定性的な要素なので、できれば客観的に判断したい投資判断においては考慮が難しい要素です。しかし、ESGに着目する投資家が増えていますので、引き続き企業経営のキーワードの一つになりそうです。
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