ユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】は220か国を超える国で事業展開する貨物輸送会社
ユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】はフェデックス【FDX】や【DHL】と並んで世界220か国で事業展開する小口貨物輸送会社です。従業員数は45万人にもなります。
また、毎年100億ドル単位での設備投資をしており、ITを活用した配送の迅速化に最大限の資本投下を行っています。
創業は1907年と古く、100年以上の歴史を持ちます。創業者であるジム・ケイシー氏が徒歩や自転車を用いてメッセンジャーサービスを開始したのが始まりです。
この輸送手段は、時代が下るにつれてバイク、さらに自動車、トラック、最終的には航空機まで発展してきました。なお、航空機での配達は1929年に一度採用していますが、世界大恐慌の影響により一度撤退した経緯があります。その後、1953年に再参入しています。
言うまでもなく、今では航空機は国際貨物輸送に欠かせない手段になっています。
ブラウンに黄色がUPSのカラーです。
ちなみにアラスカを除いた全米に輸送網が完成したのは1975年と比較的最近です。これは、日本もそうですが輸送業に関する規制があって、地域ごとに貨物輸送会社があったからです。一社による網羅的な配達というのが難しい時代だったのです。
様々な規制を乗り越え、今のように全米はおろか世界をカバーする体制を作り上げました。規制との戦いという点は日本の同業者であるヤマト運輸や佐川急便なども似たところがありますね。
その後、1999年にNYSEへの上場を果たしています。そういう意味では、古い産業ではありますが、上場は最近です。
ユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】のチャートと配当
- 2006年11月 株価79ドル 配当0.38ドル
- 2016年11月 株価119ドル 配当0.78ドル
- 2020年 5月 株価96ドル 配当1.01ドル
株価は2014年以降ほとんど横ばい傾向です。リーマンショック時に50ドル割れをすることがありましたが、わりと堅調な推移をしています。2016年初頭のチャイナショック時に87ドルまで下がりました。今回のコロナショックでも同じぐらいまで下げましたね。
配当はおよそ2.5倍です。1999年から2000年にかけて0.30ドルから0.17ドルへ減配していますが、これは上場の特別配当だったからです。それ以降減配はしていません。連続増配実績は2010年から継続しています。
10年で1割以上の自社株買いをしていますが、株価には反映されていません。
ユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】の基礎データ
- ティッカー:UPS
- 本社:ジョージア州・アトランタ
- 上場:ニューヨーク証券取引所(NYSE)
続いて基礎データを見ていきましょう。
ユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】の売り上げと利益
営業利益率は10%前後で落ち着いています。これは業界の中でも高いほうです。リーディングカンパニーとしての価格決定力は評価されてよいでしょう。売り上げは、見ての通り順調に伸びています。売上成長率はこのところ2,3%で安定した右肩上がりを示してきました。
とくにアジアや欧州での取り扱い量が好調で、このところの原油安も燃料代に直結するため、決算によい影響を及ぼしてきた経緯があります。
最大の顧客の1つであるAmazonが「Amazon One」という独自の航空網を築き、自社配達に切り替えて始めているのは気がかりといえばそうです。しかし、いずれにしても、長期的な世界的なeコマースの流通量増大は追い風になるはずです。
ただし、シクリカルな銘柄なため、直近決算は悪いです。
ユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】の配当性向
株安の影響で配当利回りは上昇傾向です。おおよそ4%の利回りがあります。配当性向は押さえられており、おおむね60%前後です。平常時であれば無理のない業績拡大、増配と評価されてよいでしょう。
ユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】のEPSとBPS
ユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】のEPSはあまり安定しません。景気の影響を受けやすく、利益率が高いわけではないので、自社株買いによる1株価値の上昇が株価成長、増配に不可欠な企業です。
ユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】のキャッシュフロー
キャッシュフローも安定的ではありません。昨今投資CFが増大しているのは気になるところですね。
直近の2020年1~3月期決算では売り上げは5%増と予想以上に健闘したものの、EPSが予想1.23ドルに対して1.15ドルと届きませんでした。
純利益は前年同期比13%減の9億6500万ドルでした。コロナウイルスの影響に伴う物流の低下、損保費用の増大が理由です。
同時に、通期の業績予想を取り下げています。設備投資の削減、自社株買いの停止を明らかにしましたから、当面厳しい展開が続きそうです。これを受けて株価は100ドル割れ、やや値ごろ感のある株価になっています。
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