世界平和指数(Global Peace Index)とは
Institute for Economics & Peace(以下:IEP)が発行している世界平和指数(Global Peace Index 以下:GPI)をご紹介します。
IEPはオーストラリアのIT企業の創業者であるSteve Killelea氏が2007年に設立した非営利の研究機関です。
GPIは3つのカテゴリーのトータル23の指標を用いて判断します。3つのカテゴリーは以下の通りです。
- Ongoing Domestic & International Conflict(進行中の国内および国際紛争)
- Social safety & security(社会の安全とセキュリティ)
- Militarisation(軍事化)
23の指標のウエイトはそれぞれにつき5段階評価されます。
例えば人口10万人当たりの警察官等の数(Number of Internal Security Officers and Police per 100,000 People)という指標では、以下の図に示した数で5段階評価されます。
出典:Global Peace Index 2023
23の指標はInternal Peace : External Peace = 6 : 4としてウエイトを配分しています。
出典:Global Peace Index 2023
世界平和指数【GPI】2023年版の特徴
2023年のGPIは、国の平和度の平均レベルが9年連続の悪化で、前年比で0.42%悪化しました。
ロシアのウクライナ侵攻が、世界的な平和の悪化の主な要因です。ロシアとウクライナは現在、最も平和ではない10か国にランクされており、ウクライナは2023年のGPIでどの国よりも最大の悪化になりました。
調査対象163カ国を前年比較した結果、84カ国が改善、79カ国が悪化しています。2022年は92カ国の軍事費指標が改善しました。これも、主にウクライナ戦争に関与した国に牽引されて、総軍事費が増加した結果です。
一方で、過去20年間に深刻な紛争を経験したいくつかの国には、平和の最大の改善が見られました。リビア、コートジボワール、アフガニスタンは、平和の5大改善国にランクされました。
世界平和指数【GPI】平和上位10カ国ランキング
ではGPI上位10カ国を確認しましょう。
Rank | Country | 前年 |
---|---|---|
1 | Iceland | 1 |
2 | Denmark | 3 |
3 | Ireland | 2 |
4 | New Zealand | 6 |
5 | Austria | 4 |
6 | Singapore | 10 |
7 | Portugal | 8 |
8 | Slovenia | 4 |
9 | Japan | 9 |
10 | Switzerland | 11 |
トップ10はヨーロッパとアジアパシフィックが占めました。欧州は、一人当たりGDPなど多くの国際的な指標で上位にランキングされることが多いです。GPIの1位はアイスランドです。GPIの算出が開始されてから毎年1位です。
しかし2022年は殺人率とテロの影響指標の変化で、全体的なスコアが4%悪化しました。アイスランド国内でテロ活動が初めて記録された年でした。
一方アメリカ大陸からは1カ国もトップ10入りしていません。
世界平和指数【GPI】平和下位10カ国ランキング
次に下位10カ国です。
Rank | Country | Previous rank |
---|---|---|
154 | Iraq | 157 |
155 | Sudan | 155 |
156 | Somalia | 158 |
157 | Ukraine | 143 |
158 | Russia | 155 |
159 | Democratic Republic of the Congo | 159 |
160 | South Sudan | 160 |
161 | Syria | 161 |
162 | Yemen | 162 |
163 | Afghanistan | 163 |
大きな変化がロシアとウクライナにありました。ロシアのウクライナ侵攻によるものです。ロシアは2008年(GPIの算出開始年)以来、最も平和水準が低いと記述されています。
イスラエルとパレスチナ自治区の記述
2023年版のGPIは2023年6月に発行されています。その中にGPIが悪化した5カ国の一つとしてイスラエルに関する記述があります。2022年末にネタニヤフ氏が首相に復帰したことによる政情不安と、パレスチナ自治区との緊張を理由に挙げています。
残念ながら、GPI2023が発行された後、目に見える形での紛争になってしまいました。
中国の台湾封鎖の経済的影響推定
あってほしくはないことですが、中国の台湾封鎖がもたらす影響にも記述があります。
その初年度のglobal economic outputは控えめに見積もって2.7兆米ドルの減少としています。率にして2.8%の減少になり、リーマンショック時の世界経済危機の2倍の規模を見積もっています。
封鎖の影響は、コンピュータと電子機器の貿易に特に大きいと予測されます。この分野では、中国と台湾が世界貿易を支配しているからです。コンピュータと電子機器は31%、電気機器は23%です。
とりわけ半導体生産に影響が出ることが予想されます。台湾が世界の生産能力の20%を占めているからです。
出典: Global Peace Index 2023
平和を取り巻く状況はマーケットに密接に関係がある地政学リスクを大いに左右します。GPIはその理解の手助けになるでしょう。
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