年金だけでは月々5万円足りない老後問題を考える
年金だけでは老後の生活費が月々5万円足りないということで、数年前に一部で波紋を呼びましたね。ただし、この話題は知らない人は全く知らないのです。事実関係に精通している人もいれば、興味が無くて「偉い人たちが何とかするでしょう」という人もいます。
とかくこの手の話題は、事情に通じている人とそうでない人のギャップが激しいですね。資産運用そのものの情報格差が大きいわけです。そういう意味では、こうして考えるきっかけが与えられるというのは貴重なように思います。
これが話題になったのは、統計から支出の平均が25万なのに対し、社会保険給付つまり年金が20万円しかないということです。あくまで平均ですから、当然ながら一律で5万円足りなくなるというわけではないですね。
退職金を一時金ではなく年金給付にしている人はもっと多いでしょうし、共働きで厚生年金だともっと多いですね。逆に、厚生年金部分が無く、国民保険しかない、あるいは国民年金さえも未納ということになるともっと少ないわけですね。
「なんだ、結局足りなくなるならば、今から払い込むのはやめたい」というのは早計ですね。障害保険や遺族年金保険を含めた年金制度はセーフティネットとして非常によくできています。老齢年金ばかりが注目されますが、そういうものではないですね。
そもそも、国民年金の運用は私たちが払い込んだ金額だけでなく、税金が投入されています。その割合は実におおよそ半分になります。私たちは納税者として税金を納めていますが、回りまわって年金運用にも使われているわけですね。
年金の権利を放棄するということは、納税している分も含めて放棄するということになります。実際には加入は義務化されているので、放棄はできないですけどね。
年金積立金の管理運用の累積額は日本の税収1年分以上の成果
続いて、年金積立金の管理運用の累積額を見てみましょう。
最近あまり話題になりませんが、年金の運用自体は昨今の株高を受けてうまくいっていますね。2000年代には一時期マイナスになることもありましたが、累積が積み上がり、日本の税収1年ぶん以上の利益がつみあがっています。
以前は運用のほとんどを日本国債が占めており、低利回りに苦しんでいました。しかし、外国株や外国債を入れるようにした結果、ある程度のリターンが出てきています。昨今好調な日本株も積立金の増加に寄与しています。
とはいえ、世界の中の1国である日本の比重が依然として異常に大きく、そこは懸念材料ですね。
見ての通り、比率は少なくなったとはいえ日本国内の運用が5割になります。為替リスクなどを考えると難しいのでしょうが、この比率に関しては時宜に応じて見直す必要がありそうです。
安心して預けるだけでもいけない年金
かつて、年金は社会保険庁が管理していました。しかし、この社会保険庁の管理下で「グリーンピア」問題などの諸問題が噴出し、庁自体が廃止になったという経緯があります。グリーンピアは年金の運用金を基に、被保険者のリゾート施設として整備された宿泊施設です。
典型的な箱もの行政でしたね。
歴代厚生大臣の地盤で整備されることが多かったり、赤字体質が改善されなかったり、いろいろな問題がありました。さらに、グリーンピアは社会保険庁や厚生省の天下り先になるという問題もありました。
年金積立金から2000億近く出資して、売却額は50億円に満たないと言います。非常に残念なことでしたね。年金積立金が、私利私欲に使われないように、きちんと年金として使われるように、1人ひとりが意識しておくというのは大事なように思います。
年金積立金はスケールが大きくなると、運用益も莫大になります。人口増加の古き良き時代はそれに群がる人たちがいたということですね。今は受給者が激増して逆回転しています。少子高齢化で主たる投資先である日本市場も厳しいですし、運用積立も同様に簡単ではありません。
年金含めて、安心安全な老後を迎えるために
いずれにしても、少子高齢化というのは分かり切っている未来です。現役世代は今までの世代の価値観とは違う、自分たち世代の価値観で生きていく必要がありますね。その一つが資産運用です。
生活レベルを与えられた条件の範囲に収めて生きていくのか。あるいは、資産運用をして与えられた条件の枠を大きくするのか。それぞれで納得した選択をしていきたいですね。
年金運用先を巡っては、市場が動揺すると叩く流れが恒例になっています。日本人の金融リテラシーは決して高くありません。しかし、その批判によって年金積立金の運用が間違った方向に行くと、私たちの将来にかかわります。
データに裏付けられた健全かつ常識的な運用が、知識不足による感情、感想によって妨げられないよう、しっかりと世論形成を見守りたいですね。
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海外投資は資産運用に欠かせませんね。それは年金積立金の運用でもそうです。
こういう世界ですね。単に成長性があるだけでなく、通貨の価値の変容も含んでいますね。
時間を味方につけたコツコツ投資は誰にでもできるということですね。