平成29年度予算案の概要が出ました。
来年度は一般会計総額で97兆4500億円ということになりました。これは過去最大の規模になります。
これに対して税収は57兆7100億円です。40兆円近く足りませんので、新規国債額を34兆3700億円発行します。新規国債発行額は一応7年連続減少しています。
しかし、国債発行額はすでに1000兆円を超えており、返済をどうするのかという問題が生じ始めています。100年債あるいは永久債という案や、インフレでの希釈化というのがまことしやかに語られるのはそういう背景があるからです。
歳出では最大なのは厚生労働省、つまり社会保障費です。平成29年度も順調に増え、5000億円程度の増加が見込まれています。高齢化社会の進展に伴う歳出の増加はこれからであり、そのため所得を持つ高齢者の医療費自己負担を増やすなどの対策をとったものの、増加分を吸収しきれませんでした。
歳出のうち32兆4700億円が社会保障費ですので、実に税収の半分以上を持っていかれることになります。
そのほか大きい支出は地方交付税交付金です。これも過疎化の進展に伴う経済的な不振から前年度から3000億円近く増えており15兆5700億円にもなります。これも減らすことが大変難しい分野です。
「ムダ」と言われがちな公共事業費はおよそ6兆円です。こうしてみてみると、経済刺激に最も効果のありそうな公共事業費はまだまだ控えめであることがわかります。
しかし、この社会保障、地方交付税交付金、公共事業費だけでも、もう歳入と同額程度の支出になってしまいます。
円グラフで見てみる
平成28年度一般会計予算(平成28年3月29日成立)の概要 : 財務省
昨年、つまり平成28年度の予算です。国会を通って初めて(案)がとれ、予算として機能することになります。28年度分に関して財務省が大変見やすい円グラフを作ってくれています。これを見ると、いくつかのことに気が付きます。
- 社会保障と地方交付税交付金の歳出がおよそ50%もある
- 国債費が25%もある
- 実質的な歳入である税収は57兆円
日本の歳出は、社会保障と地方交付税交付金が非常に大きいです。しかし、これだと国を切り盛りできませんので、国債を発行して凌いでいます。
社会保障費とは、年金・医療・介護福祉
社会保障費とはズバリ、年金・医療・介護福祉に関わる支出です。ただ、すべてを国家予算の歳出で賄っているわけではありません。この社会保障費全体では約120兆円の支出になっています。その内訳は、年金5割、医療3割、介護福祉2割になっています。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/dl/05.pdf
このように、年追うごとに絶賛激増中です。2014年時点では115兆円ですが、2025年には150兆円になると見積もられています。35兆円増加するということです。この増加額はそのまま現在の国家予算の社会保障費である32兆円に近似します。
2025年はそんなに先の未来のようには思えません。2035年、2045年になったらどうなってしまうのでしょうか。
これからも継続して社会保障費の見直しが入ってくることは間違いありません。それは具体的には年金の減少ということになるでしょうし、医療費自己負担の増、という形で私たちの生活に反映されていくことでしょう。
とはいえ劇的な改善と改革はできない
労働人口減にも関わらず、社会保障費や地方交付税交付金を始めとする歳出は増え続けます。このままではいつか立ち行かなくなる可能性があります。
しかし、劇的な改革は日本の小選挙区制度の下ではまず無理と言って良いでしょう。地方の予算を削ったり、鉄道を廃止したり、減らす発想をすれば、地元票が離れていってしまうからです。また、社会保障費を削ることは大票田の高齢者票を手放すことを意味します。地元で人気が無いと、なかなか国会議員として信認が得られません。
そのため、ややもすると国会議員の重大な仕事の1つが、いかに予算を地元に引っ張ってくるかになっており、大局観に立った政治が非常に難しくなっています。
日本の首相は国会議員が中心となって選びます。つまり、投票する国会議員と地域にきちんと予算を振り分けてくれる人かどうかということが、首相選びの重要な要素の1つになります。
歴史は繰り返す。過去に現在を見る。このままいけば、大改革のきっかけになるかもしれない。
近現代の日本において、旧制度を壊して新制度を打ち立てた歴史的転換点が2つあります。1つは明治維新であり、もう1つは太平洋戦争です。
ただ、このいずれもが外圧によって引き起こされています。明治維新はペリー来航に始まる列強諸国の旺盛な植民地支配欲の高まりが当時の支配層である武士の危機感を高め、改革を促しました。
太平洋戦争では多大な犠牲を払い、現在の格差の少ない、平等で民主的な国家の建設を志向するものになりました。賛否はあるものの、結果として旧大日本帝国憲法下では実現が難しかった、自由で平等な社会が現代社会ということになります。
人口減少に伴う急速な高齢化社会は再び大改革を日本に迫る可能性を持っています。大改革の始まりが何になるのか、そしてその主体は何なのか。誰にも予想がつきません。
しかし、何も変わらなければこのまま私たちは本格的な高齢化社会を迎えるときには年金難、医療難、介護難が進展し「ゆでガエル」状態になっている、かもしれません。
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