これからの投資の思考法
元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた「これからの投資の思考法」という柴山和久氏の著書の紹介です。老後に備えて無理なく資産を形成する方法について書かれています。
柴山和久氏は東京大学法学部を卒業後、財務省で10年間勤務、その間ハーバードロースクールにて留学をしています。財務省を退職してからは、パリ郊外の経営大学院・INSEAD(インシアード)へ留学し、マッキンゼーに就職します。それからマッキンゼーを退職、起業という方ですね。今はウェルスナビのCEOとして知られています。
金融を行政・業界の両面から知り尽くした、まさにプロですね。しかし、本書は非常に簡単にわかりやすく投資について書かれています。私はおよそ1時間で読めましたが、データと文章がわかりやすいからですね。
5つの失敗から学んだ投資の鉄則
最初に典型的な投資の失敗が紹介されています。どれも駆け出しの個人投資家さんにあてはまりそうなことが書かれています。柴山氏の体験談に基づいたものということですね。
有名な企業ならば大丈夫だろう、きれいな応接室あるいはカウンターで契約するから大丈夫だろうという投資のワナは今も健在です。株や商品そのものの妥当性を見抜く目を持っていればよいのですが、その目を養うのが難しいということですね。
今はネットである程度情報が収集できるようになりました。そのため、私が投資を始めた20年前に比べると極端に変な商品を買ってしまう危険性は減っています。しかし、それでもまだまだ難しい面はありますね。
投資の鉄則とは何か
本書では投資の鉄則について書かれています。投資の鉄則とは以下の通りです。
- 長期
- 積立
- 分散
この3つです。ただ、日本ではまだまだ投資が根付いておらず、この簡単な原理原則が浸透しているとは言い難いですね。なぜでしょうか。
それは、ホームカントリーバイアス、つまり「日本国内の身近な知っている企業、指数に投資する」という心理が働き、TOPIXや日経平均などに投資をするのが一般的だからです。その結果、一部のプロ級の腕前の人を除いてほとんどの人が結果を残しにくいということになっています。
投資というのはリスクを取ってリターンを得るシンプルな活動ですが、右肩上がりに成長しないと単なるゼロサムゲームになってしまいます。そういう意味では、停滞し続けたTOPIXや日経平均というのは、私たち日本人にとって投資を一段と難しくした指数ということになりますね。
柴山氏は「日本の資産運用はガラパゴス化している」と表現しています。米国などの諸外国がGDPや株式指数を伸ばしたのに対し、あまりに厳しい国内30年の結果ということですね。
私が米国株、とくに米国株指数を投資の柱に据えることをおススメするのも全く同じ動機です。投資は、成長が見込まれる国に行うのが基本であり、そのほうがはるかに効率的に資産形成できます。
人間の脳は資産運用に向いていない
本書の中で面白い主張だと感じたところがあります。それは、「人間の脳は資産運用に向いていない」ということですね。これは確かにそうかもしれません。だから、ドルコスト平均法が一定の支持を受けるのでしょう。
ドルコスト平均法は、最初に買う商品を決めてしまえば、あとは殆ど自動で定額買い付けをしていきます。そういう意味では、私たち人間の意思が売買のタイミングに介入することは殆どありません。
人はだれしも、安いところで買って高いところで売りたいものです。しかし、暴落中に株を買い、反発したところで売るというのは難しいことですね。
昨今は米国市場を始めとする世界各国の株式市場の上下動が激しくなっています。うまい人はこのうねりを上手に取りますが、ほとんどの人は相場のうねりに巻き込まれ、うまくやろうとして失敗するのではないでしょうか。
かくいう私もうまくやろうとして、ちょこちょこ目先の利益を積み重ね、ドカンとやられたことがあります。ボラタイルな相場に乗り、利益を2・3%を積み重ねても底割れしてしまえば吹き飛びます。いわゆるコツコツドカンですね。
2000年代に比べると2010年代ははるかに相場が簡単なので、今はそういう実感はないかもしれません。しかし、誰もがうまく乗れるような簡単なことであれば、みんなやっているということです。街中億万長者だらけでもおかしくありませんが、現実はそうなっていないですからね。
お金の不安から解放されれば人は自由になれる。本書に記してあったこの言葉、名言だと思いました。資産運用を通して人生の自由を勝ち取りたいですね。
資産運用の基礎が学べる本です。

元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法
- 作者: 柴山和久
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/11/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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