【HDI】人間開発指数(Human Development Index)とは
国連開発計画(UNDP)が2023年3月に、人間開発指数(Human Development Index)の2023/2024年版を公表しています。
UNDPは1990年から1人あたり国民総所得(GNI)と教育、平均寿命をもとにHDIを算出しています。
尺度は
1) 長生きで健康な生活
2) 教育の程度
3) 生活水準
の3つに大別されます。
1) は出生時の平均余命によって評価します。
2) 教育は25歳以上の成人の学校教育年数と、就学年齢の子供の予想学校教育年数の平均によって測定されます。
3) 生活水準は一人当たりの国民総所得(GNI)で測ります。ドル建ての購買力平価ベースです。
HDIは3つの尺度の平均的な達成度を示すもので3つそれぞれを正規化したインデックスの幾何平均です。
出典:UNDP website
なお、3つの尺度は「人間の発展に伴うもの」であり、不平等、貧困、人間の安全保障といったどちらかと言えばネガティブな要素は加味されていません。
【HDI】人間開発指数(Human Development Index)ランキング
2022年末の各国の指数にもとづく最新レポートのランキングを確認しましょう。ランキングされているのは193ヶ国です。
順位 |
国 |
前回 |
順位 |
Country |
前回 |
1 |
スイス |
1 |
16 |
ニュージーランド |
14 |
2 |
ノルウェー |
2 |
17 |
UAE |
17 |
3 |
アイスランド |
4 |
18 |
カナダ |
16 |
4 |
香港 |
3 |
19 |
韓国 |
20 |
5 |
デンマーク |
8 |
20 |
ルクセンブルク |
19 |
5 |
スゥエーデン |
5 |
20 |
米国 |
21 |
7 |
ドイツ |
7 |
22 |
オーストリア |
22 |
7 |
アイルランド |
9 |
22 |
スロベニア |
24 |
9 |
シンガポール |
10 |
24 |
日本 |
22 |
10 |
オーストラリア |
5 |
25 |
イスラエル |
26 |
11 |
オランダ |
11 |
25 |
マルタ |
25 |
12 |
ベルギー |
13 |
27 |
スペイン |
28 |
12 |
フィンランド |
11 |
28 |
フランス |
27 |
12 |
リヒテンシュタイン |
14 |
29 |
キプロス |
29 |
15 |
英国 |
17 |
30 |
イタリア |
30 |
出典: UNDP website
1位はスイスです。
世界で何かを比較するとヨーロッパの国が上位に来ることが多いですが、HDIも例外ではありませんでした。私たちの日本は2つランキングを下げて24位になりました。
【HDI】人間開発指数をスイス、米国、日本で比較
1位にランキングされたスイスと、世界の大国である米国、そして日本をHDIの尺度で比較してみます。
HDIは1990年から算出されていますから、1990年と最新の値を比較します。
【HDI】人間開発指数1990年と2022年
日本は教育とGNIが明らかに低いことがわかります。日本が長寿国でなければ、HDIの値はもっと低かったことでしょう。
ちなみにGNIはドル建てで評価されるので、円安はネガティブ寄与します。
直近の結果では米国は日本の1.5倍です。1990年との比較で米国は1.5倍以上になっていますが、日本は30%程度の成長でした。
GNIの差が教育の差を産んでいるのだろうか?とも考えたくなります。というのも、1990年を比較すると、スイスと日本の教育指標に大きな差はなく、結果としてHDIも大きな差はありませんでした。
しかし約30年の間に、スイスと日本には教育状況の明らかな違いがあります。高い教育を受ければ、所得につながるのか?
そんなに単純な話ではないのかもしれませんが、「人間開発指数」ですから、教育の差が開発の差を産むのかもしれません。
「豊かな国」と「貧しい国」の差
最新レポートでは、「豊かな国」と「貧しい国」の格差にも触れています。
OECD加盟38カ国のHDIの水準は新型コロナウィルス流行前の2019年を上回るにもかかわらず、国連が分類する「後発開発途上国」46カ国のうち18カ国はコロナ前の水準を下回るとのことです。
レポートによると、気候変動やデジタル化、格差解消に向けた取り組みの連携不足が二極化を加速させる原因になるとの見解でした。
認識の相違も両者で隔たりがあります。レポート内で例に挙げられているのは、気候変動に関する認識です。
世界中の 69 %の人々が、気候変動緩和に貢献するために収入の一部を犠牲にしても構わないと考えているそうです。一方で、他の人も同じように収入の一部を犠牲にすると信じていると認識しているのは 43%のみだそうです。
ある意味では客観視していますね。例えば経済格差が大きい、つまり開発途上国の人々は自分の日々の生活でいっぱいの人が多いです。その生活を想像すると、そのような結論になるのでしょう。
換言すると、自分は収入の一部を犠牲にして気候変動緩和に貢献してもいいけれど、ほかの人もそう考えているわけではないだろうな、と考える人が多いということです。
この認識のギャップが小さくなれば、気候変動に対する協力体制を作れる可能性があると指摘しています。しかし、経済格差の解決は永遠の課題とも言え、簡単ではないですね。
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