ウォルマート・ストアーズ【WMT】の銘柄分析。店舗型小売の王様
ウォルマートの歴史は1945年にアーカンソー州でサム・ウォルトン氏がベン・フランクリン雑貨店を始めたことにさかのぼります。サム・ウォルトン氏はミズーリ大学経営学部を卒業、その後軍隊に入り、第二次大戦に従軍します。
※ウォルマートのサイトから
その後、ディスカウント形式のウォルマートを1962年に同じアーカンソーのロジャーズに開店させます。これが大成功します。個人商店中心だった小売りが、大規模店舗、大規模仕入れによるディスカウントストアによって駆逐される嚆矢になったと言えます。
今でいう、地域独占に着目したドミナント戦略、モータリゼーションに上手く乗った郊外型の大規模店舗戦略が奏功します。機を見るに敏で、同時代の小売業者が市内中枢への出店を目指したのに対し、郊外で十分な駐車場を確保した出店方法は広く支持されました。
日本で言うならば、ダイエーとイオンの戦略の違いに近いでしょう。つまり、駅前出店か、郊外バイパス出店かということです。日本の場合はモータリゼーションがアメリカより遅かったので、結果が見えるまでに時代はもう少し下ります。
1972年にはNYSEに上場を果たします。そして1990年には全米最大の小売チェーンになります。1991年のメキシコシティを皮切りに海外初進出を果たします。
その1年後に創業者であるサム・ウォルトンは逝去しますが、優秀な子どもたちによって事業はますます発展します。今では世界一の富豪とされる一族となり、総資産は21兆円とも言われます。
ウォルマート【WMT】の株価とチャート
- 2006年12月 株価17ドル 配当0.1675ドル
- 2016年8月 株価72ドル 配当0.5ドル
- 2018年4月 株価86ドル 配当0.52ドル
- 2019年8月 株価119ドル 配当0.53ドル
小売業という競争激しい業界にあって、すばらしい成長を示してきたと言って良いでしょう。
日本のスーパー、イオンやヨーカドーもそうですが、専門店とネット販売に押されています。ただ、ウォルマートの強みは圧倒的な規模での仕入れ価格の価格決定力をもつことです。
そのため、これからは今までのように成長一辺倒ということは無いでしょうが、急激な業績の悪化ということも可能性としては低いと言えます。Amazonを始めとするネット小売りの脅威が言われつつも、業績と株価はよく踏ん張っています。
ウォルマート【WMT】の基礎データ
- ティッカー:WMT
- 本社:アーカンソー
- 上場:ニューヨーク証券取引所(NYSE)
確実に言えることは、小売というのは常に激しい競争とイノベーションにさらされる業界だということです。参入障壁が比較的低いとも言えます。以下の基礎データを見ても、ウォルマートは成長企業から成熟企業に移行したことを窺わせます。
ウォルマート【WMT】の売り上げと利益
店舗型小売りですので、多分に漏れず営業利益率は低いです。それでもかつては6%近辺でしたが、右肩下がりを続けており直近ではギリギリ4%というところです。ネット通販との価格競争が激しいことを窺わせます。
そういう中にあって、売り上げは健闘しています。まだまだ右肩上がりになっています。ただし、営業利益率の漸減に伴い、営業利益そのものもこの10年で最低です。インドのフリップカートの買収などにみられるように、海外進出は熱心です。とはいえ、営業利益の8割は米国内です。内訳には1割弱のサムズクラブも含みます。
ちなみにフリップカートは、インドで急成長しています。フリップカートの大株主の1つがソフトバンクで、30%近くの株式を所有しています。電子商取引の強みを熟知しており、店舗型だけでなく逆に乗り込んでいこうという経営姿勢です。
日本の大手スーパーもそうですが、ウォルマートは食料・飲料の販売に強みをもちます。これを生かしたECサービスへのさらなる取り組みが注目されますが、こちらは年率15%~20%の売り上げ成長率を誇っており、高齢化の進展とともにますます需要は伸びそうです。特に直近では40%もの伸長を示しています。現段階での食料・飲料の販売は全体の56%を占めています。
また、店舗においても食品やヘルスケアの好調が目立ちます。通期での上方修正は、従来のネット通販に押され気味という見方を覆すもので、逆にネットに打って出る構図になっています。
伝統的な強みを生かした、新しい分野の開拓に余念がありません。
ウォルマート【WMT】の配当と配当性向
配当は10年でおよそ2倍になっています。その分、配当性向も2倍になっています。増配スピードはこの5年で減速しているのがグラフだと一目でわかりますね。
ウォルマート【WMT】のBPSとEPS
1株利益、EPSは2015年の5.05ドルをピークに漸減傾向にあります。特に最近の1年では過去最低の3.3ドルまで低下しており、ネットビジネスに圧されているという現状が反映されたものになっています。この3年の傾向はやや気がかりですね。
ウォルマート・ストアーズ【WMT】のキャッシュフロー
フリーキャッシュフローは割と潤沢です。この豊富なキャッシュフローを生かして買収戦略を練っています。
自社株買いに熱心な企業の1つです。この10年で2割以上減らしており、評価されてよい経営姿勢でしょう。ただし、厳しい経営環境を反映してROEは下がり続けています。
直近の循環物色の流れで株価は久しぶりにオーバーバリュー気味です。この流れはPGや一時期のMMMなどと同じですね。一方、業績は極めて堅調、地味ですからどこかで調整が入ってもおかしくない水準ではあります。しかし、業績は良いので、底堅い展開は続くのでしょう。
サポートラインとしては100ドル前後が意識されますね。一応の目安となりそうです。ただし、この最近はこういったことを無視して上昇を続けています。
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