世界の政治イベントに要注目
2016年、大きく株式市場に影響したのは1月から2月のチャイナショックと、6月下旬のイギリスのEU離脱を問う投票、それから11月の米国大統領選挙でした。チャイナショックは経済的要因で、6月のブレグジットと11月の米国大統領選挙は政治的要因でした。
言うまでもなく、政治と経済は密接に関係します。そのため、2017年の投資環境を俯瞰するにあたって、世界、特に欧米の政治イベントに注目するのは意味あることです。特に近年のヨーロッパ経済の落ち着かなさ、テロ問題からくる右派の台頭、トランプ大統領の政策は、株式市場に大きな影響を与える可能性があります。
さしあたって1月20日にトランプ大統領の就任式があります。そのあとの大きな政治イベントを整理してみたいと思います。
3月・イギリスのEU離脱手続きはどうなるか
イギリス・メイ首相の公約では、3月までにリスボン条約50条に基づき、EUに離脱の意思を表明となっています。実行されると、加盟国と話し合い、それぞれの国との関係について合意をしていきます。
この交渉は難航が予想されます。交渉過程ではイギリスの通貨であるポンドはもちろん、ユーロもかなりの影響を受けると思われます。
※画像はイギリス首相官邸ウェブサイトから。メイ首相。
英国株の浮き沈みもかなりみられることでしょう。トランプ大統領就任以降、英国株はパッとしませんが、さらなる下落もおかしくありません。特にEU離脱の要因の1つである移民問題が注目されます。イギリスが移民制限をかけるならば、EUはイギリス金融のEUでの活動にも制限をかける意思を示していることは知っておきたいです。
交渉の内容次第では、もしかすると昨年の国民投票以上のインパクトがあるかもしれません。
5月・フランス大統領選挙、右派政党・国民戦線はどうなるか
2017年5月7日にフランス大統領選の決選投票があります。見どころは国民戦線党首であるマリーヌ・ル・ペン氏の動向です。右派政党である国民戦線を立ち上げた人物である、ジャン=マリー・ル・ペン氏の3女です。一族で国民戦線に関わっています。
※マリーヌ・ル・ペン氏。画像は仏・国民戦線ウェブサイトから。
国民戦線は反EUと反移民を鮮明にしてきた右派政党です。何かと過激であった父のジャン=マリー・ル・ペン氏に比べるとマイルドな立場になっています。それでも、自国通貨フランス・フランの復活や移民の制限、関税強化など、基本路線ははっきりしています。
対抗馬としては、現在野党の共和党など中道右派に支持されるフランソワ・フィヨン氏がいます。フィヨン氏は今のところ大統領に最も近いとされ、国民的支持を得ています。公務員削減や国家財政の支出削減などの経済改革を柱とする政策は、フランスの伝統的価値観から大きく外れるものではありません。
※最有力候補、フランソワ・フィヨン氏。画像はCNNから。
与党である社会党のオランド大統領は2012年に就任しました。しかし、度重なるテロとなかなか進まなかった経済対策、高い失業率が不人気の原因となりました。そのため、早々に退任の意向を示しています。
社会党自体も与党としてその批判の矢面に立たされており、大統領選は今のところマリーヌ・ル・ペン氏かフランソワ・フィヨン氏を軸に争われそうです。今はフィヨン氏有利です。
しかし、社会不安が高まればフィヨン氏有利という見方も変わるでしょう。
9月・ドイツ連邦議会選挙、メルケル首相4選なるか
8月から10月の間にドイツ連邦議会選挙があります。いまのところ9月になりそうです。ここでの注目は政党ドイツのための選択肢(AfD)です。党首はフラウケ・ペドリー氏とイェルク・モイテン氏という2者体制になっています。
右派政党であるAfDは2013年のギリシア危機の時に結党され、EU離脱や移民反対の立場をとっています。その主張はユーロ廃止、自国通貨の発行、反イスラム、移民反対とヨーロッパの右派政党に共通する主張をしています。
※画像は日本首相官邸ウェブサイトから。10番の重み。
ただ、ドイツはメルケル首相の所属するキリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟が未だに強く、30%以上の支持を得ています。対するドイツのための選択肢(AfD)は伸びてはいるものの10%程度の支持です。
このままだとメルケル首相が4選の可能性が高いです。とはいえ、ドイツ国内の不満は他国同様に少なくないため、やはり動向が注目されます。
10月・中国共産党大会は盤石だが
一応触れておきますが、習近平国家主席と李克強首相の再任は間違いのないところで、二期目の体制となります。習近平氏は2013年から第7代国家主席に就いてきましたが、その方向性が強化されるということです。
中国の政権がどうなるかというよりも、トランプ大統領との関係性という意味において注目されます。
世界の注目政治イベントのまとめ
ヨーロッパ経済は高い失業率や銀行の経営不安、移民問題などがあって安定していません。まさか、といわれたイギリスのEU離脱や度重なるテロはその表れです。また、格差問題は世界中で大きな課題になっています。
見通しが外れた政治イベントは特に大きく株式市場に影響を与えてきました。ブレグジット、トランプ大統領当選という見込み違いは記憶に新しいところです。2017年も政治イベントが目白押しとなっています。今後も世界情勢から目が離せません。
今は株高ですが、買場は必ず来るものです。各国の政治イベントに気を配りつつ、投資活動を行う年になりそうです。2016年は「まさか」が多かったですが、2017年は「またか」になるのか。ポピュリズムの台頭は継続されるのか。見どころ満載です。
関連記事です。もはや移民問題は選挙と切っては切れない関係です。
ブレグジットで株式市場はどのように動いたのか。今読んでみてもなかなか興味深い値動きです。大きな政治イベント前にはおさらいしておきたいです。
トランプ氏のざっくりとした経済政策です。