厚生労働省の「高齢社会に関する意識調査」では、70歳以上まで働きたいという人が過半数
厚生労働省の「高齢社会に関する意識調査」というアンケート調査が公表されています。ここに興味深い調査結果がありますので紹介します。何歳まで働く希望を持っているか、という質問に対する答えです。
一番多いのは、「働けるうちはいつまでも」働きたいと考える人です。実に31パーセントも占めます。これに加えて、70歳ぐらいまで働きたいと考える人は実に半数以上を占めるということが読み取れます。
昨今よく聞くアーリーリタイヤやセミリタイヤ希望者はこの調査からすると非常なマイノリティであるということになります。そもそも選択肢に40歳まで、50歳まで、という回答項目が無かったことも理由の1つでしょう。
労働人口減が叫ばれる日本にあって、70歳以上まで働きたい人が続出のこの結果は大変に貴重なものと言えそうです。ただし、抽出する母集団によってかなり差が出ることが予想されます。
また、誰かに使われる仕事か、誰かを使う仕事か、つまり自分の裁量でできる仕事かどうかで変わってきそうです。例えば、医師や弁護士といった士業や社長などは、誰かを使う立場なので、長くやっている方が多いですね。
なぜ高齢になっても働きたいのか
世帯年収ごとの高齢まで働きたい理由です。全世帯で共通して経済的な理由が第一を占めます。背景には年金のみに頼る収入という構図が不安、というのがあります。これは本格的な高齢化社会を迎えつつある世相を反映しています。収入の多様化についてブログを書きましたが、収入はそれほど切実です。
年収が高い人は経済的理由だけでなく、生きがいや社会参加が大きな動機になっています。反対に、世帯年収が低くなると、生きがいを仕事に見つける人は減っています。仕事へのモチベーションが収入と相関することを裏付けています。
それぞれ回答者の仕事観、勤労経験が大きく左右しているものと思われます。
高齢化社会、介護観の違いを特に男性は知っておいたほうがいい
同じ調査で望む介護の姿が男女別で示されています。自宅で介護を受けたいという割合はあまり変わりません。しかし、自分の介護を家族にしてほしい人の割合が男性と女性ではかなり違います。男性に比べると女性では少なくなっています。これは、家事負担を始めとする家の仕事の大変さを実感しているからではないでしょうか。
有料老人ホームなどの施設での介護を望む人は男女とも25%前後という数字は少なく感じます。介護はその程度にもよりますが、家族全員を巻き込み、場合によっては大変な負担になるからです。
介護は、経験した人とそうでない人で回答が全く変わってきます。経験したことのない人は介護する生活の具体的想像がつかないからです。ちなみに私は介護を経験しました。その経験から、家族に自分の介護をしてもらうのは負担が大きすぎると感じます。そのため、私は施設での介護を希望する層です。
同じ家族に関わる仕事でも子育ては未来と向き合います。昨日より今日、今日より明日という世界観だからです。子どものできることがどんどん増える喜びに寄り添うので、誰もがやりがいを感じることでしょう。
これに対し、介護は過去と向き合う仕事です。明日よりも今日、今日より昨日のほうができることが多いことも珍しくありません。また、終わりが見えない、あるいは見えにくいことも子育てと違うところです。この終わりの見えない精神的重さは筆舌に尽くしがたく、在宅介護は本当に大変だと思います。
うがった見方をすると、厚労省の希望があるような気もする
厚労省は社会保障を担う省です。肥大化する社会保障費を抑えるため、なるべく年金支給を遅らせたいという意図があるのではないでしょうか。長く働きたい、つまり就労希望年数が長いほうが年金支給を遅らせる理由になります。
また、在宅介護と施設介護では社会保障費の負担額が違います。自宅介護のほうが行政的には安く済みます。
こういう厚労省の現実的希望も反映されている気がしなくもないですが、よくできた意識調査で興味深く読めます。自分も含めて家族の将来を思い描いておかないと、その時になって慌ててしまいます。
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